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Vol.51 奈良クラブ メソッド部門ダイレクター兼ユースチーム監督/ダリオ・ロドリゲス

  • 2023.02.15

    Vol.51 奈良クラブ メソッド部門ダイレクター兼ユースチーム監督/ダリオ・ロドリゲス

指導者リレーコラム

昨季奈良県史上初のJ3昇格を果たした奈良クラブ。その奈良クラブのメソッド部門ダイレクター兼ユースチーム監督がスペイン人のダリオ・ロドリゲスさんだ。年齢は29歳と若さあふれるフレッシュな雰囲気を感じる。日本に来て5年目となるが、日本で顕著にみられる「礼儀」や「規律」といった日本の文化に驚き、一方で日本には「柔軟性」が欠如しているとの提言も送る。奈良クラブを将来日本のお手本となるようなクラブに成長させるため―。指導者としての思いや考えに迫った。

―アメージングアカデミー山梨の小川健一さんからご紹介いただきました。スペインから日本に来た経緯などを教えていただいても良いでしょうか。

ロドリゲス スペインのバルセロナにあるサッカーサービス社というところで働いており、そこから奈良クラブに派遣されている形です。サッカーサービス社で採用されているのがエコノメソッドで、日本でもご存知の方がいると思います。その会社で働いていたところ、25歳の時に日本からのオファーを頂いたので1年目は大阪エコノメソッドスクールで、指導者をやらせて頂くことになりました。

―日本からオファーをもらった時の心境はどんなものでしたか?

ロドリゲス びっくりでした。少し不安もありましたが、日本に住み始める前に、クリニックキャンプという形で2.3週間子どもたちにサッカーを教える機会があり、日本を知ることができました。それから日本に来たので安心できました。初めて来た時は、日本とスペインはまったく違うので、衝撃を受けたことを覚えています。

―衝撃とは、どんなところに?

ロドリゲス 他人に対するリスペクト、敬意のところはすごく違いを感じましたし、人としてのあり方に衝撃を受けました。それと、電車などいろいろな事が整っていて何をするにしても環境が良いです。カオスな状況が少ないというか、街並みがきれいでゴミも落ちていない。コンビニでゴミを捨てられる。などとても驚きました。

―ロドリゲスさんは、幼少期はどんな環境で育ったのでしょうか。

ロドリゲス バルセロナで生まれました。両親はスペイン南部の地方出身です。両親が20歳の頃にバルセロナに働きに出ていたので、それからはバルセロナにずっと住んでいます。バルセロナの中心部から15分くらいでしょうか。

―ロドリゲスさんがサッカーを始めたきっかけは、やはり地域のクラブの存在が大きかったですか。

ロドリゲス サッカーを始めたのは5歳の時です。両親がサッカー好きで気づいたらボールが足元に転がっている環境でした。特に父がRマドリード好きで、テレビはサッカーばかり。バルセロナ出身と言いながら、マドリーファンなんです(笑い)。僕は実際にトップ下としてプレーすることが多かったです。あまり守備は好きじゃなくて攻撃ばかりしていました。

―マドリー一家なのですね。ロドリゲスさんは何歳まで現役としてプレーされていましたか?

ロドリゲス 選手としては20歳までです。膝の前十字靭帯を2度連続で切ってしまって、2年くらいリハビリに時間をかけてしまいました。プレーヤーとしては終わってしまいましたが、教えることは14歳頃から意識していました。なので選手生活を終えた後は、6.7歳の子どもを教えるアシスタントコーチを始めました。子どもの頃から教えるのが好きだったので、当時所属していたチームのアカデミーで、アシスタントコーチとして受け入れてもらいました。

―かなり若いと思うのですが、スペインではよくあることですか?

ロドリゲス 14歳で始めたのは、すごく早いほうです。日本と比べたらスペインには若い指導者はたくさんいます。16歳あたりから始める人も周りには多い。

―日本でサッカーの指導をしてみて、感じた違いはどんなことでしょうか。

ロドリゲス 子どもたちに違いが見られたのは規律の部分だと思います。「○○しよう」とか「○○はしないで」って指導者が求めることはありますが、日本人はそれを100%受け入れて従う子が多い。そういったところの一定のやりやすさはあります。ただ、スペインでは指導者が言った事を100%のみ込み従うわけではなく、意見を言ってくることも当然あります。自分の考えをしっかり持っている、とも言えるかもしれませんね。

―日本に足りないと率直に感じたことは。

ロドリゲス 柔軟さだと思います。日本人は同じプレーを何度もしがちです。規則を守り、規律もしっかり整っているけど、サッカーは流動的なものだから、そこから外れてプレーしないといけないことのほうが多い。サッカーって同じシチュエーションは絶対巡ってこないんです。毎回シチュエーションが変わるので、その一つ一つに対応するには柔軟さが重要になってきます。戦術を教えること、いろいろな状況の中で正しいプレーの判断を教えることによって、選手の成長が見られるはずです。

―机上では完璧なゲーム運びができていても、実際にピッチではめまぐるしい変化に対応しないといけないということですね。ロドリゲスさんは日本に来て小中学生から高校生まで、いろんな年代を見ています。意識することはありますか。

ロドリゲス 若く指導者を始められたこともあって、一番下の年代からトップの選手まで教えることができました。幸運な状況だったからこそたくさんのことを学べたと感謝しています。年代での違いと言えば、練習の目標が変わってくると思います。例えばプロに近いユース年代は選手のパフォーマンスを引き出すこと、チーム力を最大限引き出すこと、勝つことが目標になる。一方で若い子は、サッカーを楽しむことが目標。アプローチはまったく異なってくると感じています。

―ご紹介いただいた小川さんも、幼少期は大きな差がないスペインの選手と日本の選手が、中学年代で差が開いていくとお話されていました。そのことについてはどう感じますか。

ロドリゲス ジュニアの年代はスペインでも日本でも練習方法は大きくは変わりません。個人的なこと技術的なことなど差はあまり出ないと思います。ただ、戦術理解や判断といったところで差があるのかなと感じています。スペインではプレーの中での判断能力を上げる練習をするのが12.13歳から始まりますが、日本はスペインと比べるとそこを取り組むのが遅いのかなと感じます。他の日本チームのトレーニングを見ていても、スペインでは8歳のクラスで行っている練習を日本では14〜15歳のクラスで同じように行われていることがあります。

―奈良クラブではどういったテーマを掲げているのでしょうか。

ロドリゲス 奈良クラブではジュニアから各カテゴリーあって、カテゴリーごとに1年間通して学ばないといけないテーマが決まっていて、月ごとに目標を定めています。15歳と9歳で学ぶことはまったく違う。若ければ若いほど、個人的な技術テーマが多いです。大人になるほどポジション別、グループとして、チームとしてのテーマが増えていく形です。

―先ほど仰っていた年代による目標の違いですね。日本で指導していて難しさを感じることはありますか。

ロドリゲス 私は2つのことを特に意識しながら指導しています。1つはプレーの柔軟性や判断をすごく大事にしています。ユース年代になると今まで学んできたことが無限にある状態の中で、そのポジションで学ぶべきことや集団的なプレーを学んでいきます。その中で新しいことを教えると、新しいことをやりたがって今までのことを忘れてしまう。判断という言葉をよく使いますが、これまでに学んできた事と今学んでいる事の中で柔軟性を持って、その状況にあったベストな判断をすることが大事になってきます。
もう1つは選手のポジティブで自信に満ちたプレーを大事にしています。好きなサッカーをプレーしているのにネガティブに考える選手が多いことは気になります。ミスしたときにナーバスになってしまう子が日本人は多い気がします。ボールを支配して、常に攻撃的で主導権を取りたいスタイルでサッカーをしていると、ネガティブで迷いが見られる姿勢では主導権が取ることができないと感じています。

―そうしたスタイルを掲げるクラブはJリーグでもありますが、たしかに監督はよく「ミスを恐れず勇気を持って前へ運ぶこと」の重要性を説いています。奈良クラブは昨シーズン、奈良県として初のJ3昇格を決めました。ユースからゆくゆくはトップチームを目指す選手も多い中、やはりスタイルも一貫しているのでしょうか。

ロドリゲス スタイルは奈良クラブで一貫しています。チームとしてのアイデンティティを作りたい。もちろん、細かいところはカテゴリーごとに変化はありますが。トップチームであれば週末に勝つこと、パフォーマンスを引き出すことが大事。ユースでは先ほども言ったようにミスを恐れない姿勢を掲げますが、トップチームはより結果が求められる。他のカテゴリーに比べたら、時にリスクをかけないこともあります。

―日本のJリーグを見て、率直にどのように感じますか。

ロドリゲス 個々が才能を持ったレベルの高い選手が多いと思います。そういう選手が多いからこそ、奈良クラブもここから上に行くのは大変なことだと思います。チームの課題として挙げるのであれば、やはり個人の判断やゲームの理解は改善の余地があるのかなと思います。そういったことを解決していくことは、同時に日本サッカーの成長にも必要な事だと思います。もう一つ感じることは日本のファンは、チームが負けても勝っても引き分けでも拍手でサポートしてくれる誠実なファンが多い事です。アウェーの遠い場所でも応援に来てくれますし、そのチームに捧げる時間も多い。素晴らしいなと思います。

―最後にロドリゲスさん自身の指導者としての今後やクラブとしてどんな将来を描いているか教えてください。

ロドリゲス サッカーの指導者として、まずサッカーに関われることに感謝しています。いろんな巡り合わせで今ここにいるけど、幸運だったと思います。どういった形であれ、日々自分が成長することが目標です。その中で高いレベルに辿り着けたらと考えています。奈良クラブに来てから2年目。来年は3年目を迎えますが、間違いなくクラブは成長してきたと思うし、これからも続けていく。あと何年かしたら、奈良クラブが日本の他のチームのお手本となれるようになっていたらいいなと思います。

―貴重なお話をありがとうございます。次の指導者のご紹介をお願い致します。

ロドリゲス 同じ奈良県内の生駒FCの代表兼監督の奥田智さんです。

<プロフィール>
ダリオ・ロドリゲス
1993年5月14日、スペイン・バルセロナ出身。29歳。
5歳の頃にサッカーを始め、トップ下など攻撃的ポジションでプレー。20歳の時に本格的に指導者の道に入った。CE Ospitaletto U-13アシスタントコーチ、CF Can Vidalet 年代別監督・コーチを経て17年より日本へ。エコノメソッドキャンプヘッドコーチやアメージングアカデミー山梨メソッドダイレクター兼監督などを務め、21年から奈良クラブ メソッド部門ダイレクター兼ユースチーム監督就任。

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