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Vol.9 フランスカップ準決勝

  • 2023.04.11

    Vol.9 フランスカップ準決勝

太田徹のフランス珍道中

フランスでは3月のFIFAウイークを終えると「Sprint final」と呼ばれるシーズン終盤に入ります。上位チームは、ヨーロッパのカップ戦出場を目指して勝ち点を落とせない試合が続き、下位チームは勝ち点1でも拾ってなんとかして残留をしたい、というどのクラブと対戦するにも厳しい時期です。

先週の水曜日にフランスカップの準決勝リヨン戦がありました。今年4強に残ったのは、リヨン、昌子源選手が所属していたトゥールーズ、2部リーグのアヌシー、そしてナントです。日本ではあまり馴染みのないフランスリーグの中でもさらに地味なチームが集まった感じですが、リーグ戦でヨーロッパのカップ戦への出場の望みがなくなったクラブは、国内のカップ戦経由でヨーロッパリーグへの出場権を獲得出来ます。

僕らの対戦相手はリヨン。チャンピオンズリーグ・ヨーロッパリーグ出場の常連で、以前はリーグ7連覇を果たしたフランスの名門クラブ。ここ数年はトップ3にも入れず、昨年ヨーロッパのカップ戦への出場権を失い、さらには今年リーグ9位と大不振。国内でも相当な批判があり、このフランスカップを何としてでも優勝してヨーロッパリーグ出場権を獲得する、という状況でした。
僕らとしては4強の中でも一番強いリヨンとやるという反面、ホームでやれるという大きなアドバンテージがありました。というのも、ナントはフランスの中でも熱狂的なサポーターが有名で、スタジアムの雰囲気は最高です!なのでスタッフや選手間でも、先に一番強いリヨンとホームでやれた方がいいんじゃない?みたいな雰囲気になっていました。

試合は1-0で勝利し、決勝進出を決めることが出来ました!この試合、監督は「この言葉は使いたくないけど、これは戦争だ」と選手のモチベーションを上げ、スタメンもチームでフィジカルが強い選手をほぼ全員スタメンにし、テクニックで上回るリヨンを90分通じてほぼ抑え込めた試合でした。ナントの監督は以前PSGでも監督をしていたコンブアレ監督で、フランスリーグでも歴代2位の試合指揮数。なので、今回のような大切な試合でのアプローチや、相手の長所や弱点を瞬時に見極めてそこを付いていくというのは本当に勉強になります。特にカップ戦というのは、リーグ戦とは異なったアプローチで、普段からメンタルを強調している監督がこれでもか。というくらいにメンタル面を強調しています笑

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これは口にして説明したり、文章にすると伝えづらいのですが、フランスのカップ戦というのは独特な雰囲気があります。これは歴史が作り上げてきたものなのかな、とも思うのですが、カップ戦の醍醐味の1つと言えば、アマチュアクラブ対プロクラブの試合だと思います。フランスでは、対戦するチームのカテゴリーの差が2部リーグ以上の差がある場合は自動的に下位クラブのホームゲームになるシステムです。なので、リーグアンのクラブはほぼアマチュアクラブのホームでフランスカップ初戦を迎えることになります。
いつもテレビで見ている選手がやってくる、ということで街中がお祭りのようになり、その選手たちと試合をするクラブの選手・スタッフは地方新聞で多くのインタビューを受けて、ジャイアントキリングを起こそうものなら、地方紙の一面になったりします。試合運営もリーグアンのような形ではなく、街やクラブが総出で行っているので、サッカーの原点を思い出すような手作り感が出ています。
勝ち上がっていくと、決勝が近づくと会場となるフランス代表のホームスタジアム、スタッド・ドゥ・フランスで試合が出来ることへの憧れ・夢のようなことを語り出す選手やサポーターが出てきます。というのも、スタッド・ドゥ・フランスは98年フランスワールドカップでフランス代表が初優勝した歴史的なスタジアム。その上、ここでプレー出来るのはフランス代表になるか、フランスカップの決勝のみ。このような全く異なる要素が同じ大会内に存在しているというのが、カップ戦を特別な雰囲気を醸し出す理由なのかもしれません。

今回はクラブの広報が作成しているリヨン戦のハイライトのリンクを貼っておきます。
時間がある方は、是非見てみてください!次回はフランスサッカー連盟のコーチングライセンスについて書きたいと思います!
https://www.youtube.com/watch?v=tTtG9ZvltoE

  • 太田 徹Toru Ota
  • Toru Ota

    1981年07月11日生まれ。
    東京都出身。
    武南高校から獨協大学へ進学。東京リゾート&スポーツ専門学校アスレティックトレーナー学科を経て、リヨン第一大学フィジカルトレーニング学部に進む。
    2011-2016オリンピックリヨン女子トップチーム フィジカルコーチ、2016-2018パリ・サンジェルマン女子トップチームアシスタントコーチ、2019-2020トゥールーズFC 昌子源通訳兼トップチームフィジカルコーチ、2021から現在は、FCナントトップチームアシスタントコーチを務めている。
    2022フランスカップ優勝や、 2011,2012,2016UEFA女子チャンピオンズリーグ優勝など実績と経験を兼ね揃え、現在も活躍中である。

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