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重ねてきた悔しさと自信を胸に、いざパリへ。

ガンバ大阪・半田陸がパリ五輪メンバーに選出。 <br>重ねてきた悔しさと自信を胸に、いざパリへ。

  • 2024.07.05

    ガンバ大阪・半田陸がパリ五輪メンバーに選出。
    重ねてきた悔しさと自信を胸に、いざパリへ。

J.LEAGUE PRESS

高村美砂●取材・文 text by Takamura Misa
photo by @GAMBA OSAKA

 パリ・オリンピック2024(以下、パリ五輪)を戦うU-23日本代表メンバー18名が発表された7月3日。ガンバ大阪の半田陸は同会見のライブ配信を自宅で見ていた。
「ちょっとドキドキしながら、大岩剛監督が名前を読み上げていくのを聞いていました。ディフェンダーなので選ばれるなら早めに呼ばれるだろうと思っていたし、実際、4番目だったので、ドキドキする時間が短くてよかったです。すごく嬉しかったし、ホッとしたし、体の中からふーっと力が抜ける感じもしました」

 隣には「どんな時も僕の心を元気にしてくれる人」だという奥様の姿も。その泣き顔を見ながら自然と湧き上がってくる感情もあったと振り返る。

「目標は金メダル。そのための力になれるようなプレーをしたいと思います。サイドバックとしての主な仕事は相手選手との1対1の部分。そこは僕も一番自信を持っているからこそ、しっかりプレーで表現したい。チームのビルドアップに関わりながらゴール前に入っていく姿も見せられればと思います。本大会では、僕を応援してくれていたファン・サポーターの皆さん、僕のキャリアに関わってくれたコーチやスタッフの方たち、小さい頃から僕のサッカーをずっと応援してくれていた両親はもちろん、昨年、ケガで苦しんでいた時期も含めて、常に僕に寄り添って支えてくれた奥さんにしっかりと活躍する姿を見せたいです」

メンバー発表が近づくにつれて意識した『五輪』。

 2024シーズンが始まった時は、そこまで『五輪』を強く意識していたわけではなかったという。

「先のことを考えすぎて、目の前の練習や試合、一つ一つのプレーをおろそかにしてしまったら、どんな目標にも辿り着けない。常々、そう思っていたので今シーズンが始まってからも特に五輪を意識することはなかったです。それよりも、ガンバでの昨シーズンは、チームも残留争いに巻き込まれてしまったし、僕自身も夏にケガをしてしまって思うような1年にならなかったからこそ、しっかりチームに貢献しなければいけないという思いの方が強かった」

 だが4月に入り、AFC U-23アジアカップ カタール2024(以下、アジア杯)を戦ったり、6月のアメリカ遠征メンバーに選ばれてU-23アメリカ代表戦にフル出場する中で、少しずつ芽生えてきた感情もあったそうだ。

「当然ながら、五輪が近づくにつれて、代表活動でも『五輪』というワードが出てくるようになったし、発表まで1週間を切ったあたりから自然と『週末のリーグ戦(第21節・FC町田ゼルビア戦)が終わったら発表だな』みたいに考えることは増えました。選ばれたらいいなという気持ちもその頃から膨らんでいった気もする。これは単純に、4月のアジア杯が不完全燃焼に終わったからかも。実際、カタールから帰国してからは、試合に出たい、プレーしたいって欲がすごく強くなったし、その先に五輪もうっすら描きながら、ピッチでの結果をより自分に求めるようになりました」

 『不完全燃焼』という言葉が言い表しているようにアジア杯では、大会直前に胃腸炎を患ったことや、カタールにわたってすぐの練習中に右太ももを痛めた影響もあって悔しい時間を過ごした。U-23日本代表が戦った6試合のうち、出場したのはわずか2試合。グループリーグ第3戦・韓国戦には先発出場したものの、決勝トーナメントに入ってからピッチに立ったのは、準々決勝・カタール戦での途中出場のみ。準決勝・イラク戦も、優勝を決めた決勝のウズベキスタン戦も、チームやライバルの躍動をベンチから見守った。

「カタールに行ってすぐにケガをしてしまったのも自分の責任だし、韓国戦もコンディションをうまく作れていなかったせいか、全然いいプレーができなかった。それに対して、右サイドバックで出場していたセキ(関根大輝/柏レイソル)はすごくいいプレーをしていたので。それを思うと、決勝トーナメントに入ってからほとんどチャンスをもらえなかったのは当然だし、自分の力のなさだと受け止めています。でも一方で、このチームでここまで大会を通して試合に絡めなかったのは初めての経験だったので。チームの優勝は嬉しく思いながらも、すごく悔しかったというのも正直な気持ちです。それをどう自分の肥やしにするか、みたいなことは考えながら帰国しました」

悔しさを募らせながらアジアカップで掴んだ収穫。

 もっとも、ただ悔しさを募らせていたわけではない。大会期間中は試合を観ながら、仲間のプレーにヒントを得て、効果的なプレーを想像することも多かった。

「セキはボールの持ち方がすごく巧い。そこは注目していたし、特に中にボールを受けにいくタイミングや、前線の攻撃に関わっていくタイミングみたいなところも、相手の特徴に応じて、自分の中で色々な状況を想像しながら観ていました。その中で改めて、守備の部分はもっともっと強さを出せるようにしなくちゃいけないと思ったし、攻撃でも絡んでいく回数も増やしていきたいと考えていました」

 思えば、サイドバックを預かる半田は近年、しきりに守備面での課題を口にし、成長を求めてきた。モンテディオ山形時代にセンターバックからサイドバックに転向した際は、ビルドアップやいいポジショニングから積極的に仕掛ける姿が目を惹いた彼が、だ。昨年、ガンバに移籍し、初めてのJ1リーグを戦うにつれ、また昨年3月に初選出された日本代表やU-23日本代表として対外試合を重ねる中で必要だと気づいたという。

「正直、サイドバックに転向した頃はあまり深く考えずに、というか、ただただ求められる仕事を素直にやっている感じでした。山形のチームスタイルや、僕自身の役割的にも、攻撃面をより強く求められていたので、自分も前に、前に、みたいな感覚でプレーすることも多かったです。ただ、J2リーグではそれでなんとかなっていた部分も、J1リーグでは通用しないと感じたので。僕が対峙する相手のウインガーには決まって攻撃のキーマンになるような選手がいることがほとんどだし、途中から出てくる選手も、速かったり、ドリブルが武器だったり、特徴のある選手を送り込まれることも多い。だからこそ、まずは守備で圧倒して、相手の攻撃の芽をしっかりと摘み取った上で攻撃を、という意識がより強くなった気がします」

 事実、ガンバでのこの1年半、彼に理想的なサイドバック像について尋ねると、決まって自身とは違う持ち味を備えた酒井宏樹の名前を挙げていたのを思い出す。酒井のような守備の強度や守備力を備えることで、サイドバックとしてのプレーにより怖さや迫力を増したいと考えていた。

「僕は普段から、いろんな選手のいいところを盗んで、自分の力にしようと思っているので、いろんなタイプのサイドバックのプレーを観ていますが、こと『守備』に関しては酒井選手の強度や、体の入れ方などから学ぶことは多いです。そこから逆算して自分はどういう部分を強化すればいいのか、どの部分を鍛えればより理想的に相手と対峙できるのかを考えることもあります」

半田陸が考える、サイドバックの醍醐味。

 実際、今シーズンのJ1リーグを戦う上でも、そこは意識的に取り組んできた。結果的にアジア杯では、ピッチ上でその成果を確認する機会をあまり得られなかったが、今でもその考えに変わりはなく「本大会までのJ1リーグでも継続的に成長を求めたい」と半田。大会期間中のリハビリ期間を通して、昨年末から悩まされてきた左ふくらはぎの痛みが払拭できたことも追い風にしながら、だ。

「去年の夏に左足の腓骨を骨折して、シーズンの終盤にはピッチに戻れたんですけど、今年に入ってからも左アキレス腱の痛みがなかなか抜けなくて。おそらく、骨折の影響だと思うんですけど走る時とか、左足で踏み込んだ時に踵が沈んじゃうような感じもあったし、ステップも、左足では以前より強く踏み込めないような感覚もあって、ずっとすっきりしなかったんです。もちろん、いろんなトレーニングやセルフケアはしてきたんですけど、シーズン序盤はずっとなんだかな、って状態が続いていました。でも、それがカタールでリハビリをしている間に良くなったというか。トレーナーさんと原因を探りながらトレーニングを続けていくうちに、スッと痛みが消えてくれたんです。そういう意味では、悔しさはありましたが、本来の自分の体を取り戻す上ではいい遠征だったと思えたところもありました。それをしっかりチームでのパフォーマンスに繋げていければ、より結果も見出していけるんじゃないかと思っています」

 その言葉通り、カタールから帰国した半田は、約1日半という強行で先発のピッチに立った5月6日のJ1リーグ第12節・セレッソ大阪に始まって、コンスタントに先発出場を続けながら存在感を示してきた。ガンバがリーグ前半戦で示した『リーグ最少失点』にも間違いなく貢献した一人だ。

「帰国してすぐは時差ボケもありましたけど、すぐに治ったし、カタールではほとんど試合に出られなかった分、体に疲労感は残っていなかったので頑張れました。というか、疲労云々より試合に出られることへの喜びの方が勝っていた感じです。しかも、左足の状態を含めて試合を戦うごとに自分のベストに近い状態に近づいている気もする。チームが5連勝を含む、9試合負けなしの戦いをしている勢いに乗っかって、走れている感覚もすごくあります」

 そんな言葉を聞いたのは20節・鹿島アントラーズ戦を終えた3日後のこと。結果的に、その週末に戦った、21節・FC町田ゼルビア戦では前半のうちに2枚のイエローカードで退場になるという屈辱も味わったが、ピッチを離れるまでのパフォーマンスを見ての通り、首位チームを相手に攻守に一歩も引かないパフォーマンスは、何度もスタンドを沸かせ、チームを勢いづけた。それは彼が口にしていた守備の楽しさを物語るようなプレーだった。

「1対1の局面でバチバチやりあえるのはサイドバックの醍醐味。最近は1対1になったら『よし、きた』という気持ちになっています。ステップの刻み方とか、駆け引きのところでも昨年以上に局面での勝負を楽しめています」

 そして、その感覚のままにパリの地に向かえることが、今は楽しみで仕方ない。

「強豪国が相手になるほど、サイドバックの守備のところでやられないことが結果を求める上ではマストだし、チームを助けることにもつながる。そこはU-23日本代表での活動を通して監督にも評価してもらっていたし、今回の選出にもつながったところだと思うので、パリでもしっかり表現したいです。また、今回のチーム編成を見ると、本来の右だけではなく左サイドバックを預かる可能性もあるかもしれないので。左右が変われば、ステップの踏み方や視界の捉え方も全く違うだけに、パリまでの時間はそこへの準備ということも頭に入れて過ごしたいと思っています」

目標は金メダル。そのためにすべきこと。

 自身にとって世界大会は、U-17日本代表として出場したU-17ワールドカップ以来、2度目。その際はキャプテンとしてチームを牽引したものの、グループステージの第3戦・セネガル戦で負傷し、ラウンド16・メキシコ戦に出場できないまま敗退したという悔しい記憶も。さらに、雪辱を誓っていたU-20ワールドカップはコロナ禍で中止となり、舞台に立つことすら叶わなかった。だが、味わった悔しさも「今となってはすべて自分が成長し、より高みを目指すための肥やしだった」と半田。当時の経験もパリの地で活かす決意でいる。

「U-17W杯は世界を勝ち抜く難しさを初めて体感した大会。特にメキシコ戦は相手に試合巧者に立たれた感も強かったし、同年代ながらすごく落ち着いて試合を進められた。あらゆる局面の『強度』で上回られたし、初めて世界を戦う怖さを知ったのもこの大会でした。ただ、それを肌身で感じられたからこそ自分に厳しく向き合えるようにもなったし、更なる成長を求められた。自分の体の大きさを踏まえ、世界で勝負していくためにはセンターバックではなくサイドバックの方がいいんじゃないかと考えるようになったのもU-17での経験があったから。それが、のちのポジション転向にも繋がりましたしね。そのことからも、どんな悔しい経験も自分が懸命に向き合ってさえいれば、いつかは必ずプラスに転じられるはずなので。だからこそ、パリでも何も恐れる必要はないし、自分の今の力を思い切ってぶつけてこようと思います」

 目標である『金メダル』の実現に向けて、意識するのは『チーム』としての戦いだ。これは先に書いたアジア杯で感じたことでもある。

「大会前のプレキャンプの時期にどれだけチームとして熟成した状態で大会に入っていけるかは、チームが勢いづく上ですごく大事なこと。また、アジア杯では大会期間中に選手だけのミーティングをしたことも力にしながら、勝ち進むごとにチームが1つになっていく感じもあったので。それが厳しい試合を乗り越えるための原動力になったと考えても、パリでも『チーム』で戦いたいです」

 本大会のグループステージで対戦するのは、パラグアイ、マリ、イスラエルの3つ。今はまだJ1リーグでの戦いに集中しているため対戦相手の細かな情報までは頭に入っていないそうだが、大事なことは明確だと半田はいう。

「アジア杯も初戦の中国戦を数的不利の状況ながらしっかり勝ち切れたことが、チームに流れを生んだように、パリでも『初戦』のパラグアイ戦がすごく大事だと思っています。南米のチームはバチバチ戦ってくるイメージもあるし、試合の勝ち方を知っている国も多いので難しい試合になると思いますけど、そこをどんな内容でもいいからとにかく勝って大会をスタートするのが理想です」

 パリで躍動する自身の姿もイメージできている。

「守備ではどの国の選手にも絶対に負けないようにしたいし、攻撃では、前線の選手が気持ちよくプレーできるような配球をしたいと思っています。アシストやゴールも…まずはチームのために必要なプレーをした上で、できれば明確な数字を残したい。いろんな人が注目している大会だからこそ、どんな相手でも、どんな状況でも戦える姿を見せたいし、『ガンバ大阪』の名に恥じないプレーをしたいと思います」

 ただひたすらに、躍動する自分だけを想像して乗り込むパリの舞台。『サイドバックの半田陸』を世界に知らしめる瞬間が迫っている。

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ガンバ大阪・半田陸が戦列復帰へ。
「強化した肉体とプレーがどんなふうにリンクするのか、すごく楽しみ」