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Vol32「指導者の成長」

  • 2024.07.25

    Vol32「指導者の成長」

絶康調

©VEGALTA SENDAI

7月21日に「ベガルタ仙台2024ファン感謝の集い」がユアスタ仙台であって、ファンのみんなと交流した。暑い中、多くのサポーターが集まってくれてうれしかった。カズキ(ベガルタ仙台MF長澤和輝)と林くん(ベガルタ仙台GK林彰洋)とのトークショーでゴリさん(ベガルタ仙台森山佳郎監督)をいじりつつ、いかにリスペクトしているかを話したような気がする。サイン会では多くのサポーターに「早く戻ってきてください」「ピッチで頑張ってください」と激励してもらった。期待に応えたいね。

今回はジュニア世代の指導について話そう。ゴーシくん(元ベガルタ仙台FW大久保剛志)がYUKIフットボールを立ち上げたのと似たタイミングでなかのFCの運営を引き継いだから、「一緒に宮城県のサッカー界を盛り上げていけたらいいね」とよく話していた。アカデミーはサッカーに対しての考えやアイデンティティーを落とし込む場所だと思う。考え方は千差万別だからいろいろなクラブがあっていい。そこで子どもたちのためになる場所を提供するとなると、周囲の協力も必要になってくる。ゴーシくんとジュニア世代の試合を観ていると、「もっとサッカーを楽しくやろうよ」という話になる。勝ちたい気持ちはもちろん分かる。ただ、そればかりになるとね。喜ぶのはもちろん子どもたちなのかもしれないけれど、どこかで大人の「勝ちたい」が強くなってしまっているんじゃないかと思う。本来だったらサッカーの楽しみってさ、ゴールを決めることと、ドリブルして1人抜くとか、1人でボールを奪うとことかだよね。その試合を勝つためにという意識が高くなり過ぎて、「ボール蹴れ」とか、「ミスしないようにパスしろ」という声しか聞こえてこなくなるのがオレは残念でさ。「それで子どもたちは成長するの?」という部分でゴーシくんと意見は合致した。負けてもいいけど成長するって何だろう。やっぱり、逃げないでボールをつなぐとか、キープするとか、ドリブルして1人剥がすとか、そういうとこなんじゃないかな。楽しくボールを蹴って、それに自然と結果がついてきたらいいね、くらいの感覚でいきたいな。

ゴーシくんのクラブとなかのFCは結構な頻度で練習試合をしている。同じぐらいのレベルだからいい関係性ではあると思う。根底の考え方は一緒だけど、目指そうとしているサッカーはちょっと違う感じなのも、楽しいね。ジュニアのクラブを運営している選手という立場同士だから、似た悩みを結構持っている。若い時は自分のサッカーだけに集中できたところから、人を雇って運営するようになり、当然そっちの方も見なきゃいけない。「好きでやっていることでも、いろいろなストレスがくるよね」と共感する。そして、そのストレスの中身はだいたい一緒だから面白い。これから先、お互いどういう立ち位置でサッカーに関わっているか分からないけど、お互いのチームがどうなっていくのかはすごく楽しみ。もしかしたらバチバチで言い合ってやり合っているかもしれないし。一緒にいろいろなことをやっていきたいと思っている。今は自分のプレーが最優先だから具体的な話は進んでないけど、選抜チームを作って海外遠征に行こうとか、いろいろアイデアは浮かぶ。可能性は無限大だ。

オレが1番近くで見てきた中で、最初にJリーガーになったのがゴーシくんだった。Jリーガーを見たんじゃなくて、近くの人がJリーガーになったのを見たのがゴーシくん。子どもは地元でプロになった人を一番最初に見るわけじゃん。「あれぐらいやれたらプロになれるんだ」と目指せる基準をもっともっと上げていかないとね。育成って難しいんだよね。多分ある程度は負けないチームは作れると思う。でも結局、負けないようにしていると子どもたちの成長につながりにくいというジレンマもある。オレは外から見てるから「楽しませた方がいい」って思っているけど、その現場に立ったら「それだけじゃ足りない」となるかもしれない。だから現場に立たないようにしている。この感覚をなくしたくないというのがある。いや、それ以前にやることがあるからなんだけどさ。将来的に指導者はやらないと思うよ。なかのFCの指導者たちは、オレに好き勝手言われてきついだろうね。でもオレはそういう存在こそ大切だと思う。パッと見に来た時「え、何これつまんなくね?」っていう第三者的な感覚は必要だよ。いつも見ていたら、「こいつは今日も頑張ってる」と何となく満足してしまうところに、別の視点で「もっとできるんじゃないか」と意見ができるのは、ちょっと離れた人。だからオレは思ったことは言う。やっぱり指導者も成長する場を作らなきゃいけないなって。指導者が成長を止めちゃったら、子どもたちに成長しろと言う資格がなくなる。指導者がもっともっと上を目指すようにしてかないと、子どもたちに何を言っても多分伝わらない。だから、オレは指導者たちを成長させるためにも「もっとこうしていこう」と言える存在でいないといけない。そのためには当然、自分自身の成長も必要だ。だから、オレもさまざまなサッカーを見なきゃいけないし、いろいろな人とサッカーをしてきたこの経験や感覚を忘れないようにしつつ、さらにアップデートしなきゃいけないと常々意識している。

  • 遠藤 康Yasushi Endo
  • Yasushi Endo

    1988年4月7日生まれ。
    仙台市出身。
    なかのFC(仙台市)から塩釜FC(宮城県塩釜市)を経て2007年鹿島アントラーズに加入。左足のキック精度が高く、卓越したボールキープ力も光る攻撃的MFで、10年以降は主力として3度のJリーグカップ制覇や、16年のJ1リーグと天皇杯優勝などに貢献した。J1通算304試合出場46得点。
    2022年、15年プレーした鹿島を離れ、生まれ故郷のベガルタ仙台へ完全移籍した。
    U-15、U-16、U-18の各年代で代表経験があり、15〜17年は日本代表候補に選出された。

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