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Vol.106 4試合ぶりの白星。

  • 2024.08.20

    Vol.106 4試合ぶりの白星。

発源力

©FCMZ

今シーズン初めて、3試合白星がない状況を受けて、第27節・ジュビロ磐田戦を前にリマインドしたのは、上位争いとかタイトルということは忘れて、もう一度、FC町田ゼルビアのサッカーを取り戻そうということでした。相手の嫌がることを徹底する。球際、強度、トランジションで競り勝つ。最短ルートでゴールに向かう。守備では相手にクロスボールを上げさせない。自陣ゴール前に相手選手侵入させない。言葉にすると、どれもサッカーでは当たり前とされることばかりです。でも、そのことに他チーム以上に徹底してこだわり、取り組んできたから今の自分たちの結果や順位があるはずです。だからこそ、そこをもう一度、みんなで見つめ直して準備をしてきました。その部分で上回れてこそ、ゼルビアのサッカーだという思いもありました。

その過程では、試合前日のシュート練習で監督に雷を落とされたこともありました。
「自分たちが今、点を取れていないのはこういう練習でアラートさが足りないからじゃないのか? 何気なくやっている練習なんてなんの意味も持たないぞ。シュートを外してうわ〜っと悔しがっているけど、それでいいのか? 実際の試合ならシュートを外してもまだインプレーかもしれないのに、それでこぼれ球に食らいつけるのか? その間に、セカンドボールが目の前を通り過ぎていくかもしれないぞ。そういうところを突き詰められるチーム、選手が、点を取って、勝てるんじゃないか?」
正直、そこは最近の試合における課題の1つだと感じていた、決定力不足にもつながる部分です。事実、白星のなかったここ3試合は、圧倒している時間帯にチャンスで仕留めきれない、戦術的に相手を上回りながらも最後の局面でトラップミスが出る、横パスがずれてカウンターを食らう、クロスボールがニアで引っかかる、など自分たちで首を絞めているような状況が続いていました。夏場の暑い戦いにおいては特に、1本のパスを丁寧に、1本のクロスボールを精度高く送り込むことで、体にかかる負担を少しでも軽減したいというのが本音ですが、その『1本』が疎かになってしまい、逆に自分たちを苦しい状況に追いやってしまっているような印象もありました。もちろん、夏の暑さを含め、言い訳を探せばいくらでも挙げられます。前半戦を主力で戦ってきたメンバーが抜けたり、ケガで離脱してしまったりという状況を乗り越えて『チーム』として連携を深め、戦うのは決して簡単ではありません。ただ、それはどのチームにも起きていることで、そういった状況を全部乗り越えた上での結果を求められるからこそ、『リーグ優勝』はすごく難しくもあり、価値があるのだと思います。

結論から言って磐田戦は、ほとんどの時間帯で自分たちの思う通りのプレーができた試合でした。サッカーに完璧はないし、実際にこの日も危ないシーンを数回ほど作られましたが、基本的に攻撃でも守備でも、90分を通して磐田を上回れたと思っています。
その口火を切ってくれたのが、新加入の雄太(中山)でした。僕はこれまでチームメイトのゴールに一喜一憂することが少なく、鳥肌が立つような経験もほぼありません。なのに、4分に雄太のゴールが決まった瞬間には、久々にブワ〜っと鳥肌が立ちました。考えてみれば2018FIFAロシアワールドカップ・アジア最終予選のオーストラリア戦で、本大会出場を決めた陽介(井手口/ヴィッセル神戸)のスーパーミドル弾以来です。もちろん、チームメイトが決めたゴールはどれも嬉しいし、僕なりに感動もあります。スーパーゴラッソやアディショナルタイムでの劇的なゴールに「すっげー!」となることも当然あります。ですが、今回の雄太のゴールはそれとも一線を画していたというか。ゼルビアに加入して3日で、コンディション的にもきっと難しかった中で、あのゴールを決めるのは誰にでもできることじゃありません。しかも前線の選手ではなく、守備を主戦場としている選手が、少し苦しんでいるチーム状況の中で先発に抜擢されて、いきなり『先制点』で結果を出すのは格好良すぎます! という意味で、鳥肌が立つ、素晴らしいゴールだったし、何よりチームにとってもすごく意味を持つ先制点になったと感じています。

実際、それによってチーム全体がプレッシャーからも解き放たれた感じもありました。また、久しぶりに先発に抜擢されたエリキや一輝(藤本)が加点してくれた姿にも痺れました。それによって前半のうちに3点のリードを奪えたことも、後半を戦う上での気持ち的な余裕にもつながりました。この先、より佳境に入っていくJ1リーグを戦い抜く上で、選手層の厚さは不可欠になります。そう考えても、チャンスをもらった選手が活躍するというルーティンはチームにとって、すごくポジティブな要素でした。

また、守備を預かる一人として4試合ぶりの完封勝利にもホッとしています。ともにセンターバックを組んだ雄太は、合流から間もない状況で、合わせる時間も限られていましたが、元々の彼の能力の高さにも助けられて、また僕も雄太も相手の特徴に合わせてプレーすることが苦手ではないタイプの選手だということもあって、お互いの良さを活かし合いながら落ち着いて試合をコントロールできました。雄太にとっては約5カ月ぶりの公式戦だったそうですが、現日本代表としての凄さを感じるところも多く、めちゃめちゃ心強かったです! 今後、よりお互いを知っていけば、もっといい守備ができるだろうという楽しみも膨らみました。何より、第22節・名古屋グランパス戦以来、約1カ月半ぶりに町田GIONスタジアムで勝利を挙げられたのも嬉しかったです。この一戦には12,306人の方たちが観戦に訪れてくれましたが、夏休みということもあり、たくさんの子どもたちが観にきてくれていました。その中でゼルビアが勝つ姿を見せられて、皆さんが喜んでいる姿を見ることができて幸せな気持ちになりました。

もっとも磐田戦もあくまで38分の1試合にすぎず、まだまだ厳しい戦いは続きます。今、自分たちが首位で戦い続けていることに自信を持っていいと思いますが、一方で、上位争いの難しさを考えればこそ、この先はより磐田戦のように、頭から『タイトル』だとか上位争いということは外して、目の前の1試合をゼルビアらしく戦うことが大事になると思います。………と言いつつ、頭のどこかでは意識せざるを得ないこともあるはずですが、いずれにしても、目の前の試合における結果が、新しい順位表を作り出します。だからこそ、選手、スタッフ、サポーターが一丸となって、まずは次節・アルビレックス新潟戦に全力を注ぐことに集中したいと思います。

  • 昌子 源Gen Shoji
  • Gen Shoji

    1992年12月11日生まれ。
    兵庫県出身。
    11年に米子北高校から鹿島アントラーズに加入。14年には自身初のJ1リーグフル出場を実現するなど主軸選手に成長を遂げ、16年のJ1リーグや天皇杯優勝、18年のAFCチャンピオンズリーグ制覇などに貢献した。
    18年12月にトゥールーズFCに完全移籍。すぐさまレギュラーに定着するも2シーズン目はケガに苦しみ長期の戦線離脱に。その状況を踏まえてJリーグへの復帰を決断し、20年から3シーズンはガンバ大阪で、23年は鹿島アントラーズでプレー。24年はFC町田ゼルビアに完全移籍となった。
    14年に日本代表に初選出。2018FIFAワールドカップ ロシア出場。

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