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8月29日に発表された北中米ワールドカップ・アジア最終予選を戦う日本代表に、FC町田ゼルビアから雄太(中山)、晃生(谷)、そしてヘンリー(望月ヘンリー海輝)の3名が選出されました。雄太と晃生は、これまでも日の丸を背負ってきた選手なので特に驚きはなかったですが、ヘンリーの選出はマジでびっくりしました。以前から、僕に限らずチームメイトの誰もが、ヘンリーのポテンシャルを踏まえて、いずれは日の丸を背負う選手になると予想していましたが正直、こんなに早く選ばれるとは思ってもみなかった、というのが正直な気持ちです。
ただ、僕が初めて日本代表に選ばれた時のことを思っても、誰もが最初はそういうところからのスタートだったのかもしれないし、選ばれたことで彼のポテンシャルがより開花することは考えられます。森保一監督も「今後ますます伸びるだろうなという期待を持って招集した」的な話をされていましたが、まさにその通りだと思います。だからこそ、このチャンスをヘンリー自身がしっかりと自分の財産にして欲しいし、それをゼルビアに還元して欲しいと思っています!
今年、国士舘大学からゼルビアに加入したヘンリーのことは、正直、チームメイトになって初めて名前を知りました。僕も今年からゼルビアに加入したのである意味同期ですが、第一印象はシャイで大人しい選手という印象で、正直、シーズンが始まったばかりの頃は同じピッチに立っていても頼りなく感じることも多かったです。殊更、メンタリティのところはそう感じていました。おそらくそれは彼の優しい性格も影響しているように思いますが、自己主張もほぼしない、ピッチに立ってもほとんど声が聞こえてこないことも多く、そのこともよく指摘しました。半年ほど前の発源力96で、SC相模原との練習試合でセットプレーから失点し、僕がゼルビアに加入して初めて声を荒げて仲間を叱咤したという話を書いたことがあります。公開での練習試合だったので観にこられていた方はお気づきだったと思いますが、実は、それもヘンリーのことでした。その時も後日、二人で話をしましたし、以降も事あるごとに彼には僕の考えを伝えてきました。
「俺のいうことが全部正しいとは思っていない。最後はヘンリーが自分で感覚を掴んで行くことが一番大事だから、違うと思うなら俺の言葉も聞き流してくれたらいい。でも少しでもなるほどなと感じたり、いいなと思ったことは素直に吸収してくれたら嬉しい」
内容的には、プレーよりもマインドとかプレー中に口を開く大切さ、プロとしての心構え的なことがほとんどでしたが、彼にメンタリティ的な部分が備われば、今の何倍もの早さで成長速度を上げられるだろうと思っていたからこそでした。
実際、彼のプレーを見ても分かる通り、ポテンシャルは半端ないです。特に守備面ではチームメイトながら頼もしすぎて、同じピッチに立っていても常に驚かされています。最近でいえば7月に国立で戦った横浜F・マリノス戦もその1つで、特に加藤蓮選手との1対1のシーンは印象に残っています。最初は、加藤選手にフェイントで抜かれ、一瞬にして置き去りにされて自陣深いところまで仕掛けられてしまったんです。ヘンリーも少し足を滑らせていたこともありセンターバックとしては「これはまずい」と思っていました。でも、その状況からヘンリーがビューンと追いついてきた時は…しかも全く慌てる様子もなく追いついて体を当て、加藤選手を吹っ飛ばしゴールキックにした時は、マジで驚きました。彼の場合、身長が192センチもあってストロークで稼げる分、見た目としては、のっそ、のっそと足を踏み出しながらゆ〜っくり走っているように映ることが多い気がしますが、実はめちゃめちゃ速いです。それもあって加藤選手との1対1の場面でも、三歩くらい遅れをとったところからのスタートだったのに追いつけたんだと思います。
その一方で攻撃に関しては、これだけ試合に出場して、クロスボールを上げる回数が増えているのにアシストが1に終わっていることからも正直、まだまだ伸び代はあると思います。最近は逆サイドからのボールにペナルティエリア内までヘンリーが入って行って頭で合わせるようなシーンも増えてきましたが、今のところゴール数も0のままです。もちろんサイドバックなので得点を増やすのは簡単ではないと思いますが、黒田剛監督がよく「お前がマックスのジャンプをした時に到達できる高さは、お前にしか到達できない場所だ。そこに辿り着けるのなら、そのチャンスを枠に飛ばすことを意識しろ」とおっしゃっているように、彼のヘディングが枠に飛ぶようになればそれはゼルビアにとってもより大きな武器になるんじゃないかと思います。
ということを総合しても、やはり森保さんの言葉にもある通り、今回はヘンリーのポテンシャルを期待された選出なんじゃないかと思っています。もちろん、日本代表という場所が、選手を育成する場ではなく、その時々でトップパフォーマンスをしている選手の集まりであることは理解しています。ですが、先のパリ五輪でもU-23日本代表がベスト8で終わり、いよいよ日本も若い世代からの底上げが大事だと言われるようになった今、日本代表としても将来を見据えて選手を伸ばしていくことも必要だと考えられたのかも知れません。今回、ヘンリー以外にU-23日本代表としてパリ五輪を戦った川崎フロンターレの高井幸大選手や柏レイソルの細谷真大選手を含め、27名の選手が選出されていることを踏まえても、そう思います。そして、すごく素直な心を持つヘンリーだからこそ、そういう舞台でトップレベルの選手たちに伝えられること、感じることによって、一気にそれを吸収して、より成長速度を早める可能性も大いにあると信じています。本人は選出が発表された日のランチで「お昼ご飯が喉を通らない」的なことを言っていたので、メンタリティのところは変わらず心配していますが(笑)、きっと雄太や晃生にも助けられ、なんとかするでしょう!
最後に、今回Jクラブでは最多となる3人もの選手がゼルビアから日本代表に選出されましたが、このことを一番喜んでいるのはきっとゼルビアの歴史に関わり、応援してきてくれた方たちじゃないかと思っています。こういった喜ばしく、誇らしいニュースをこの先もたくさん届けるためにも、僕たちは、日本代表選手を含め、デューク(ミッチェル)やオ・セフンら5人の代表選手を抜きで戦うルヴァンカップ準々決勝・アルビレックス新潟戦でしっかりと結果を残しベスト4進出を決めたいと思います!
昌子 源Gen Shoji
1992年12月11日生まれ。
兵庫県出身。
11年に米子北高校から鹿島アントラーズに加入。14年には自身初のJ1リーグフル出場を実現するなど主軸選手に成長を遂げ、16年のJ1リーグや天皇杯優勝、18年のAFCチャンピオンズリーグ制覇などに貢献した。
18年12月にトゥールーズFCに完全移籍。すぐさまレギュラーに定着するも2シーズン目はケガに苦しみ長期の戦線離脱に。その状況を踏まえてJリーグへの復帰を決断し、20年から3シーズンはガンバ大阪で、23年は鹿島アントラーズでプレー。24年はFC町田ゼルビアに完全移籍となった。
14年に日本代表に初選出。2018FIFAワールドカップ ロシア出場。