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スタジアムに漂う雰囲気は、必ず僕たちの力になる。ルヴァンカップ・プライムラウンド準々決勝のアルビレックス新潟戦は改めてそんな思いを強くした試合でした。ホーム&アウェイで決着がつく一戦において、僕たちはアウェイでの第1戦を0-5で敗れました。
サッカーにおいて、前半を終わって0-5というスコアがどれだけ重いものであるかは説明するまでもないと思います。正直、僕たち選手も、監督、スタッフもかなりのショックを受けていたし、それはスタジアムに足を運んでくださった方も、テレビで観ていた方も、同じだったと思います。もちろん、週末にはホームでの第2戦が控えていたことからも、翌日には気持ちは切り替えていたし、目の前の試合に対して最大の力を注いで、最善の準備をすることにみんなが気持ちを向けていました。それでもチームにはどことなく重たい空気が漂っていたのも正直なところです。普通に考えて、0-5の状況で迎えるホーム戦は、ガラガラの町田GIONスタジアムで戦うことになるだろうな、とも覚悟していました。
ですが、蓋を開けてみれば、6,726名の方がスタジアムに足を運んでくれました。当然、アウェイサポーターもいらっしゃいましたが、6,000人前後は町田を応援するためにご来場いただいた方たちだったんじゃないかと思います。ルヴァンカップは、年間シートの対象外の試合で、通年チケットは適用されません。ましてやリーグ戦のように、ホームゲーム後にメンバー外になった選手と子供たちがピッチでサッカーをするといったイベントも行われませんでした。つまり、この試合を観るためには新たにチケットを購入してもらわなければいけなかったにもかかわらず、それだけの人たちがGスタに足を運んでくださいました。その事実に対して、僕たちが奮い立たないはずはなかったし、2-0で勝利という結果も間違いなく、あの日スタジアムに漂っていた雰囲気に後押しされたものだと感じました。
そのことへの感謝を、あの場に集まってくれた皆さんに直接…メディアなどを通さずに伝えたいと思い、試合後には広報の方にお願いして拡声器を借り、チームを代表して自分の口から皆さんの前で話をさせていただきました。
その中身を簡単にお伝えすると、目指していた3つのタイトルのうち2つを失ってしまったことへの申し訳ない思い、先に書いたような状況があったにも関わらずホームでの第2戦にこれだけの人が足を運んでくださったことへの感謝。そして、目指せるタイトルがJリーグだけになってしまった今、僕たちは最後までタイトルを目指すという決意表明でした。これからより厳しさを極める終盤戦に向けて、僕たちは何があっても『タイトル』に向けてチャレンジを続ける、みんなでそこを目指して戦っていこうという思いを、サポーターの皆さんに向けても、チームメイトに向けても自分の言葉で伝えさせてもらったつもりです。
というのもここから先は間違いなく、僕らピッチに立つ選手、チームスタッフ、クラブスタッフだけではなく、サポーターの皆さんを含めた全員での戦いが求められます。特に冒頭に書いた通り、スタジアムに漂う雰囲気は僕たちの大きな力になります。もちろん、どの試合も全ての力を注いで準備し、死力を尽くして戦っていることに嘘はないですが、より拮抗した試合が予想される終盤戦は、スタジアムに漂う雰囲気がプラスアルファの力として試合を左右することも大いに考えられます。
事実、僕自身も、これまで所属してきたクラブで、あるいは日本代表として「スタジアムの雰囲気に勝たせてもらった」という試合をいくつか経験してきました。正念場とされる大一番で応援の心強さを感じたことも一度や2度ではありません。それを思い返しても、J1リーグ1年目のゼルビアがこの先、J1リーグの優勝争いを戦い抜くには、チームが勝利を目指すことはもちろん、チームクラブ、サポーターが一体となって、そうしたスタジアムの雰囲気を作り上げていくことも大事になるんじゃないか、と思っています。
そのために、冒頭に書いた新潟戦のように、ゼルビアへの想い、熱をスタジアムで爆発させてもらいたいという思いもあるし、単純に「ゼルビアの試合を観に行きたい!」と思ってもらえる人数が増えればいいなとも思います。
正直、今シーズンのホームゲームの入場者数を見ると、5月以降はほぼ首位で戦っているにも関わらず、ガンバ大阪との開幕戦以上の数字を数えたことはありません。もちろん、直近のホームゲーム、国立で戦った8月31日のJ1リーグ第29節・浦和レッズ戦に48,887人の方が足を運んでくださったように、国立でのホームゲームには常に40,000人前後の方たちにご来場いただいていますが、浦和戦然り『他力』の人数であることは否めないと思います。それはGスタの試合にも言えることで、対戦カードによって入場者数の増減が見られるのも事実です。
これについては、Gスタへのアクセスやキャパシティの影響もあるはずだし、首都圏にはいろんなJクラブがある中でJ1新参者のゼルビアがファンを獲得する難しさもあるとは思います。それを踏まえても、今後、ゼルビアがファンを増やしていくには、チームが勝ち続けることはもちろん、クラブ努力も不可欠になっていくとも思います。
ただ、そのことには真摯に受け止めながらも、やっぱり僕は、この先より厳しい試合が待ち受ける終盤戦において、たくさんのゼルビアファンに埋め尽くされた満員のGスタで戦いたい。ゼルビアサポーターで溢れかえったゴール裏に力をもらいたい。キャパは少なくても柏レイソルのホーム、三協フロンテア柏スタジアムやサガン鳥栖のホーム、駅前不動産スタジアムのように迫力と熱気の詰まったホームで皆さんと一緒にタイトルに向かいたいです。
だからこそ、ぜひ皆さんには、新潟との第2戦で漂わせてくれた熱を、ぜひ友達や家族、近所の方にも伝播してもらい、一緒にその熱を大きくしていくチャレンジに力を貸していただきたいです。残りの試合におけるその積み上げは必ずゼルビアのタイトルや未来に繋がっていくと信じています。
最後に、先日のアビスパ福岡戦で負傷交代し、皆さんにご心配をおかけしましたが、順調に回復しています! ただ、前歯が上下2本折れ、歯が唇に刺さってパックリ割れてしまいました…。ともあれ、勝ってよかったです!
昌子 源Gen Shoji
1992年12月11日生まれ。
兵庫県出身。
11年に米子北高校から鹿島アントラーズに加入。14年には自身初のJ1リーグフル出場を実現するなど主軸選手に成長を遂げ、16年のJ1リーグや天皇杯優勝、18年のAFCチャンピオンズリーグ制覇などに貢献した。
18年12月にトゥールーズFCに完全移籍。すぐさまレギュラーに定着するも2シーズン目はケガに苦しみ長期の戦線離脱に。その状況を踏まえてJリーグへの復帰を決断し、20年から3シーズンはガンバ大阪で、23年は鹿島アントラーズでプレー。24年はFC町田ゼルビアに完全移籍となった。
14年に日本代表に初選出。2018FIFAワールドカップ ロシア出場。