©VEGALTA SENDAI
オフ明けから練習に合流した。ずっとコンディションが整わず、ようやく戦うことができる。全然試合にも出てないし、ずっともやもやした感じのままリハビリしていた。そろそろ試合だというところでケガをしての繰り返しで、チームの力になれていない。それでも、言わなきゃいけないと思ったことは言うし、緩くなっていると感じたときは引き締めるとか、オレができることをやっていた。ただ、チーム状態が悪いと感じるときはそうそうなかった。ところが、ここ2試合は内容も良くないし結果も出ていない。そのタイミングでの合流。次に離脱したら、完全にシーズンを棒に振ってしまう。体の状態と相談しながらというもどかしさはあるものの、1試合でも多く戦うために、メリハリを付けつつ、自分のクオリティーをアピールしていきたい。
いわきFC戦ですごくいい勝ち方をして、メンバーを変えて挑んだ群馬戦は引き分けた。11人では勝てないのがサッカーだし、底上げを図る上でもあの試合に出た選手に奮起してほしかったんだけど、残念な結果になった。翌週の練習のときにみんなで話した。友太(ベガルタ仙台MF郷家友太)が「頑張ろうよ、出せるもの全部を出して頑張っていこう」とハッパを掛けた。ところが、続く藤枝戦も2-3で敗れてしまった。2-3とはいえ、相手がトーンダウンしただけで、うちらは何もできていない。今までなかったような失点の仕方だったし、できていたことがほとんどできなかった。それが2試合も続いている。かといって、練習の雰囲気が悪いというのはない。去年の勝てなかった時期は、練習からあからさまに空気が良くなかった。今は悪くないし、ちゃんとやれている。意識としてはみんな高いし。なおさら藤枝戦の負けはなんでっていうね。自分たちを苦しめているような戦いぶりだった。みんなプレーオフ圏内という変なプレッシャーを感じてきているんじゃないかなと思っている。ひりひりするような何かを懸けた争いを経験していない選手が多いこともある。
そんなタイミングで戻る。練習でしっかりやっている姿を見せ、できる範囲で全力を尽くすしかない。残り数試合でどうこうっていうときは、競っている相手の結果や勝ち点を気にしてしまう。経験上、それは良くないことだと思っている。自分たちに自信がないチームのやること。勝ち続ければ勝ち点が逆転することはない。自分たちは上にいけるチャンスを手にできる立場にいる、と自覚することが大切だ。鹿島時代の2017年は、残り2試合を勝てば優勝だったのに、最後に勝てなくて川崎フロンターレに逆転優勝を許した。そのときのうちらはフロンターレをすごく意識していた。ひっくり返されたのは、勝手にプレッシャーを感じてやりたいことができなかったからだと反省している。力不足もあったかもしれないけれど、できることは多々あったと思っている。ベガルタ仙台の現状と少し似ている。追われる、突き上げられる立場。こういうときこそ、どうすれば自分たちのサッカーができるかと考える方が勝てると思うんだよね。メンバーや戦い方を今さらガラリと変えられるものでもない。変えられるのは、一人一人の意識だ。不安を取り除いて自信を持って取り組めるか。相手がどうこうより、自分たちをどう出せるかという思考にもっていかないと苦しいんだよね。順位の近い相手の勝った負けたを気にしないのもおかしな話かもしれないけれど、惑わされないメンタルを手にし、自分のパフォーマンスを最大限発揮することを考えていればいい。年を取ってサッカー選手はメンタルが一番大事な職業かと思うようになった。技術、体力、頭の良さ、いろいろと必要な要素がある中で、メンタルがぶれないことが最も必要なことだと。満男さん(元日本代表MF小笠原満男)、ソガさん(元日本代表GK曽ヶ端準)はメンタルがすごく強くて、いるだけで勝てる気持ちになり、安心してプレーできる存在だった。
先日も外から試合を見ていて、多くの声援を浴びるベガルタは、J2でも恵まれている環境だと改めて思った。なんとかサポーターが喜べるような試合をしたい。藤枝戦の試合後にブーイングが起きたよね。今季、初めてのような気がする。ふがいない試合に対して起きたブーイングは受け止めないといけない。藤枝戦は負けてもクオリティーの高い試合、やるべき姿を初めて見せられなかったんだと思う。5~6点を失ってもおかしくない内容だった。プレーオフ圏内にいる立場なのに、何をしているんだろう、チャンスなのになんでこんなにバラバラなんだろうって、サポーターも感じ取ったんじゃないかな。あのブーイングを叱咤激励ととらえるしかないよ。次の甲府戦はすごく大事な試合になる。みんなが同じ方向に向かえるような戦い方をして、かつ、勝たないといけない。仙台に来て、こうやって“勝たなきゃいけない”と言うのは初めてかもしれない。ベガルタは常勝軍団でもないし、態勢が整っているわけでもない。鹿島と違ってまだまだこれからのチームだと思っていた。仲間のプレーを硬くしてしまうんじゃないかと、なるべく言わないようにしていた。でも、今は“勝たないといけない”と思えるようなチームになったと感じているから、あえて言う。
勝たないといけない。ここからホーム戦が続く。徳島にひどい負け方をして入った中断期間で立て直し、プレッシャーの中で勝ちを重ねた経験があるんだから。ここからまた上がっていけると信じているから。
遠藤 康Yasushi Endo
1988年4月7日生まれ。
仙台市出身。
なかのFC(仙台市)から塩釜FC(宮城県塩釜市)を経て2007年鹿島アントラーズに加入。左足のキック精度が高く、卓越したボールキープ力も光る攻撃的MFで、10年以降は主力として3度のJリーグカップ制覇や、16年のJ1リーグと天皇杯優勝などに貢献した。J1通算304試合出場46得点。
2022年、15年プレーした鹿島を離れ、生まれ故郷のベガルタ仙台へ完全移籍した。
U-15、U-16、U-18の各年代で代表経験があり、15〜17年は日本代表候補に選出された。