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いつもなら週末の試合前に発源力を書き終えていることがほとんどですが、今回はJ1リーグ・第32節・サンフレッチェ広島戦を終えて、パソコンに向かっています。と言っても、すでに30分近く、時間が経ちましたが試合を思い返すほど、悔しさが勝り全然、書き進められません。ただ、この悔しさとしっかり向き合うためにも今の気持ちを言葉に残そうと思います。
悔しい。情けない。
試合を振り返る上で、真っ先に浮かんだのはこの2つの感情でした。リーグ終盤、勝ち点で並ぶ広島との天王山。当然、難しい試合になるのはわかっていたし、アウェイ戦だと考えても、この試合をものにするには相当のパワーが必要だと覚悟して試合に入りました。後半戦に入って7連勝を含む9戦負けなし、という驚異的な強さを示している広島の勢いを考えても『自分たちのサッカーをする』以上の力が必要だとも思っていました。その状況を誰もが感じていたからこそ、試合前はすごく気持ちが入っていたし、チーム全体にやってやるぞという空気が満ちていました。
にもかかわらず、キックオフからわずか3分という時間に失点したこと。さらに23分にも僕の対応の甘さから追加点を許してしまったことで、試合をより難しい展開にしてしまいました。
試合全体のことを話す前に、まずはその自分が大きくチームに迷惑をかけてしまった、23分の失点シーンを振り返ろうと思います。
あの失点は広島のリスタートで始まったシーンでした。味方選手にファウルが起きた後、すぐに立ち上がったトルガイ・アルスラン選手にクイックで始められ、右に展開されました。相手選手も4人、ペナルティエリア内に入ってきている状況はありましたが、ゼルビアとしても、やや体制の遅れはありながら人数的には揃っていたことを考えれば、僕のところで対応していれば防げたシーンだったと思います。守備というのは元々リアクションの状況で行われるのでいろんな読みのもとで対応することになりますが、結果的にニアへの速いボールに反応した広島の加藤陸次樹選手の動きに反応しきれず、ゴールを許してしまいました。
もちろん、リスタートの後、ポジションに戻りながら加藤選手が自分の背後から入ってきていることは目線でも、間接視野としても捉えていましたが、左に展開されたタイミングでほんの一瞬、左サイドの幸多郎(林)と広島・中野就斗選手の1対1の方に目線を切ってしまったところでニアに走り込まれたという感じです。当然、守備時にはマークする相手ばかりを見ているわけではなく、首を振って戦況を捉えながらプレーするのがセオリーですが、ステップの踏み替えをした瞬間の完璧なタイミングで合わされてしまいました。自分としては股を取られたことを含めて「これを反応できないか」という悔しさと、反撃に出なければいけないチームの勢いを削いでしまった申し訳なさでいっぱいです。以降の時間帯、2点のリードを奪った広島に硬く守られてしまったことからも試合全体の流れを重くしてしまった失点だったと受け止めています。
その試合序盤の流れを含め、広島には終始、試合巧者に立たれた印象もあります。23分の失点シーンに繋がったクイックリスタートも然り、チーム全体が時間帯や試合状況に応じて何をすべきか、どうすれば僕らが嫌がるのかという部分でも、上回られました。ミドルゾーンでのスローイン1つとっても、うちはボールを失うことが多かったのに対し、広島は確実に自分たちのボールにして繋げていましたし、こうした大一番で出るミス、ボールロストの数の差も明らかでした。そういった細部が試合の流れを動かすものになっていくと考えても、完全に広島に試合をコントロールされたと認めざるを得ません。試合後の公式記録を見ても、決めるべき選手がしっかりとゴールに繋げ、後ろはしっかりゴール前に鍵をかけて無失点での乗り切った広島と、2センターバックが1回ずつマークを外し、決定的なチャンスをものにできなかったゼルビアという構図は明らかでした。
この結果を受け僕たちは、3位に順位を落としました。このコラムを書きながらも悔しさが込み上げてきて、眠れない夜を過ごしていますが、この感情と向き合うのは今日だけにしようと思っています。ネガティブな感情を引きずっていいことなど1つもないし、何より、僕たちは優勝のチャンスを逃したわけでもありません。試合はまだ6試合残っていて、18ポイント取れるチャンスがあります。もちろん、僕たちの上位を走る広島も、ヴィッセル神戸もすごく強いチームで、彼らとの直接対決はもうないことからも、彼らを上回るのは他力も必要になる難しいチャレンジですが、だからこそ自分たちにしっかりと目を向けて、目の前の試合で勝ち点3を積み上げることだけに集中し、それを6試合続けるだけだと思っています。
個人的にも、広島戦は反省すべきところも多かったとはいえ、J1リーグで最少失点の守備を築いてきたゼルビアの一員として、チームを支えてきたという自負も失っていません。難しい局面でこそ、キャプテンとして先頭に立たなければいけないという自覚もあります。その姿を、次節・川崎フロンターレ戦で証明したいし、この難しい局面を一緒になって戦ってくれているファン・サポーターの皆さんに、体を張ってチームを救う守備を見せたい。そして、ホームの地で、無失点で勝ち切るゼルビアの姿を届けたいと思います。
昌子 源Gen Shoji
1992年12月11日生まれ。
兵庫県出身。
11年に米子北高校から鹿島アントラーズに加入。14年には自身初のJ1リーグフル出場を実現するなど主軸選手に成長を遂げ、16年のJ1リーグや天皇杯優勝、18年のAFCチャンピオンズリーグ制覇などに貢献した。
18年12月にトゥールーズFCに完全移籍。すぐさまレギュラーに定着するも2シーズン目はケガに苦しみ長期の戦線離脱に。その状況を踏まえてJリーグへの復帰を決断し、20年から3シーズンはガンバ大阪で、23年は鹿島アントラーズでプレー。24年はFC町田ゼルビアに完全移籍となった。
14年に日本代表に初選出。2018FIFAワールドカップ ロシア出場。