©VEGALTA SENDAI
ベガルタ仙台は29日のレノファ山口戦で4試合ぶりに勝った。内容どうこうより、絶対に勝ち点3が必要な試合だった。今回だけじゃなく毎回必要で、逃して逃してというのが続いてからの勝利だった。すごく大きいし、苦しいときにゴール決めたモト(ベガルタ仙台MF中島元彦)がすごい。今のベガルタで最も得点のにおいがするよね。モトがベガルタに来て3年、うまいのはみんなが知っていたけど、何よりもメンタルが図太くなったと思う。以前はプレーにムラがあった。昨季までは、溜まっているフラストレーションがそのままプレーに出て荒っぽくなっていたけれど、今季はいいシーズンを送っている。モトは点を取るのはもちろんのこと、チャンスメークなどでも貢献度がかなり高い。それプラス得点にもつながっている。日ごろの取り組み方が味方にしっかり伝わって、周りもモトのプレーを見てくれるようになったんじゃないかな。ベガルタに来た1年目の終わり、セレッソに帰るのかなという話をしたことがある。オレはモトのキャリアを考えたとき、もう一回セレッソで勝負したほうがいいんじゃないか、チャンスが少なくても争ったほうがいいんじゃないかと思っていた。でも、モトは「仙台に残ります」って。レンタルのまま3年いるっていうのはすごい。仙台のこと好き過ぎでしょ。
レンタルだから書きにくかった。保有権はセレッソにあるから、俺がわーわー言うのもなと遠慮していた。だから、これまではサラッとしか書いてなかった。でもさ、あの活躍を見ていて触れないのは不自然だよね。最初の印象は、やんちゃで人の懐に飛び込むのが上手で空気読むのも上手だなって見たまんまだよね。タメ口で話しても許される感じなのは、根底に相手に対してのリスペクトがあるから。そして、人なつっこさはかわいいものがある。一緒にプレーしてみると、技術的にはもちろん飛び抜けていたけど、それ以上に同年代との経験の差があるなって思った。試合の流れや空気を読むのがすごく上手。一緒にやっていてよく目が合うし、感覚のところで話しやすい。そして、どんなときでもひるむことなくボールを受けるよね。それはすごいところ。自分に自信があるからこそできるプレーだし、みんなも見習うべきところだと思う。どこかにターニングポイントがあるというより、やっと結果で報われてきた。これまでは目に見える数字を、あいつ自身があまり気にしていなかったんじゃないかな。
「前節、悔しい引き分けだったので今節は絶対に勝つしかなかった。苦しい試合だったが勝てて良かった。(決勝ゴールについて)ニアでいいボールが来たので届くか分からなかったんですけど、ゴールに入れと思って合わせました。入って良かったですね。試合のたびに戦術スタッフがいろんなコーナーを作ってくれている。それがうまくはまってゴールができたので、チームのゴールだと思っている。(環境へのアジャストは)熱いのは相手も一緒なので。うちのサポーターの方が熱かった。その応援がゴールに結びついたので良かったです。ここまで僕たちのサッカーを見に来てくれてるのは、時間もお金も使っていること。そういう人たちのためにも、絶対に勝ち点3を取りたかったので、良かったです。(次節に向けて)目の前の試合に全力で臨むことで個人個人の成長につながるので、目の前の試合の勝ち点3を考えておけばいいと思います」
山口戦後のモトのフラッシュインタビューだ。周囲に気を配っていてモト自身のメンタル的な成長を裏付けているよね。メンタル的に大人になることが一番成長の糧になっていると思う。やんちゃなままだと、そのイメージ通りで終わっちゃう選手は案外多い。やんちゃなタイプは大好きなんだけどね。そういう選手が精神的に大人になって落ち着いたコメントができるようになったときは、プレーにも反映されている。いい意味で落ち着きが出ているというか。2年前のモトだったら、おそらく「どや! 見たか!」ってニュアンスの受け答えだったと思う。それも悪くないしモトらしいんだけどね。モトが成長してきて、自分を理解しながらチームの中心にいる。素晴らしいことだ。
3戦勝てなくて、もどかしい感じが続いての勝利。下からの突き上げもすごいプレッシャーになっている中で勝てたのは、チームとしての成長もある。荒れたピッチでロングボールの応酬、相手の土俵に乗っかってしまった。苦しい中でもセットプレーで勝てるというのは簡単にマネできるものではない。毎試合いいパフォーマンスができるかといったら、それは難しい。ああやって苦しい時間帯を乗り越えて、セットプレーの一発で勝つのは、鹿島でよくあったなと思うような勝ち方だった。今季はセットプレーでの得点率が高い。それはスタッフと選手がかみ合っている証拠だ。流れの中で得点するのは簡単じゃない。セットプレーでポロッと点を取ったり、相手のセットプレーを防ぐのは大きい。当然、セットプレーも事故での失点はある。けれど、「事故で仕方がなかった」で済ますのか、試合前日の練習で失点シーンを振り返ってやられない空気づくりができるか。マークの仕方とか見直す部分はいろいろあるけれど、全員でやられない空気感をつくれるかどうかが、すごく大事だと思う。去年は自信を失っていたのが響いていた。外から見ていても分かるときは、ピッチでプレーしている人たちはもっとそれを感じている。その中で失点しないのは難しい。練習をいつも以上に気を張ってやっていても、難しいときはある。今はフチさん(ベガルタ仙台片渕浩一郎ヘッドコーチ)のデザインに対して、お互いの信頼感がある。次のブラウブリッツ秋田戦はセットプレーがキーになるから、まずは失点をなくして勝ちたい。毎回勝てばプレーオフ圏内にいられるんだから、前進あるのみだ。
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遠藤 康Yasushi Endo
1988年4月7日生まれ。
仙台市出身。
なかのFC(仙台市)から塩釜FC(宮城県塩釜市)を経て2007年鹿島アントラーズに加入。左足のキック精度が高く、卓越したボールキープ力も光る攻撃的MFで、10年以降は主力として3度のJリーグカップ制覇や、16年のJ1リーグと天皇杯優勝などに貢献した。J1通算304試合出場46得点。
2022年、15年プレーした鹿島を離れ、生まれ故郷のベガルタ仙台へ完全移籍した。
U-15、U-16、U-18の各年代で代表経験があり、15〜17年は日本代表候補に選出された。