COLUMN

REIBOLA TOP > コラム > Vol38「名を残す」

Vol38「名を残す」

  • 2024.10.17

    Vol38「名を残す」

絶康調

先週、チームのみんなでバーベキューをやった。スタッフ、フロント、強化部、監督も含めて50~60人かな。クライマックスに向けて同じ思いでやらないと勝てないから、一体感を高めようってことでね。ゴリさん(ベガルタ仙台森山佳郎監督)に「スタッフを含めてやろう」と提案したら「いいね、やろう」ってあっさり乗ってきてくれた。選手だけなら去年もやったし、いつもやっている。ゴリさんたちなら一緒にやった方がチームにとっていいんじゃないかなと、ふと思ったんだよね。通常、選手はみんな監督とは大なり小なり距離を置くものなんだけど、ゴリさんは気にせず絡んでくれているからね。監督となると変に仲良くなりすぎるのも、離れすぎても良くないと思う。スタッフもフレンドリーだしさ。普通はやらないと思う。変に近すぎて仲良くなりすぎるのも違うしなと思うのに、なぜだろう、今はいいかなって。スタッフ陣が選手の年齢とか気にすることなく、いいところも悪いところもその場でちゃんと言ってくれるからかな。安心感や信頼感がある。選手は選手で遠慮している人もいるから、親密になってもっと仲良くなってもいいんじゃないかなと感じたんだよね。

これまでそういう提案をしたことは1回もなかったから初めて。「やろっか」って言ったらみんなが乗ってきた。これがどういう化学反応を生みだすのか楽しみでもある。さすがに強化部もいたから、いつもは働かない選手も火を付けたり肉を焼いたり、かいがいしく働く違った面が見えて面白かった。みんなでバーベキューが実現したのはゴリさんの力が大きい。単身で仙台に来ていて「休みは何もしてないからいいよ」って言う。でも、分析やら準備やらで絶対に忙しいはず。そんな中でベガルタのためを思って時間をつくってくれた。ああいう明るいキャラだから調子いい感じで「いいよいいよ、やろう」って言ってくれる。レギュラーシーズンも残り4試合で、とんでもないプレッシャーにさらされているはずなのに優しいよね。だから、このバーベキューがいい意味でゴリさんのリフレッシュにもなったらいいな。締めのあいさつで春男さん(ベガルタ仙台庄子春男GM)が「ここから先の試合はもちろん大事なんだけど、うまくいかなければ数字のことや難しい状態だとメディアに書かれることもある。仮に横浜FCに負けて『ダメだ』となれば、一気にそういう空気感にもっていかれる。だからそういうのは気にしないでいこう。やるべきことをしっかりやった方が勝てるんだ」と話していた。川崎フロンターレの強化を担ってきた経験のある春男さんにしか言えない言葉だなと思った。優勝しているからね。

ここからの4試合、本当に勝ちたいと思ったチーム、自分たちを信じ切れるチームが勝てる。戦術はもちろん大事だけど、いかに自分たちを信じて戦えるかだ。全部勝てばJ1昇格プレーオフにいける状況は変わっていない。これだけ差が縮まってきた中でも、いかに自分たちにベクトルを向けることができるか、外野の声に耳をふさぐことができるか。耳をふさいでも、結局いろいろな声は入ってくるし気にしちゃう。選手だって人だもん。でも、一番信じるのは何なのか。自分やここまで戦ってきた仲間だよね。絶対に苦しい試合になる。それは間違いない。ちょっとのことで自信をなくすのか。しびれを切らして、今までやってこなかったことをやってしまうのは良くない。事故っぽい失点もあるだろう。仙台なら追い付く力もあるんだから、例え負けていても残りの時間でいつもの試合ができれば、どこが相手だろうが戦える。それができれば一番楽しい順位にいるよなって思う。

モト(ベガルタ仙台FW中島元彦)とか友太(ベガルタ仙台MF郷家友太)、林くん(ベガルタ仙台GK林彰洋)とか、これまでチームを引っ張ってきた選手たちが、自分たちの名前を仙台に残すには、優勝とか昇格とか何かしらタイトルを取るしかない。ベガルタの歴史に名前を残してほしい。今回はそのチャンスだよね。「惜しい」で終わっちゃったら、悔しいけど何も残らない。そこは、いち選手としての野望だよね。チームの勝利はもちろんだけど、サッカー選手として名前を残したいじゃん。今回はJ1昇格という結果を残さないとね。リャンさん(元ベガルタ仙台MF梁勇基)や財前さん(元ベガルタ仙台MF財前宣之)は仙台で語り継がれている。いい選手だったからだけじゃない。J2優勝してベガルタをJ1に昇格させたから。そういう選手が歴史に名を残す。そのためには残りの試合で結果を出さないと。こういうメンタリティーは、鹿島時代にジーコから教わったこと。

ジーコはいつも口酸っぱくして言っていた。若いころは「何を言っているんだろうな」という程度にしか響いていなかったけど、今はよく分かる。鹿島を離れて仙台に来て、「鹿島の遠藤だ」って声を掛けられる。何で俺の名前を知ってるのかといえば、鹿島でタイトル獲得にそれなりに貢献していたからだと思う。地元仙台出身ではあるけれど、海外で華々しい活躍したわけでもない。ジーコの言うことは誰でも言えるようなことだった。「チームのために犠牲を払い、仲間を尊重し、チームを勝たせる選手になれ」。でも世界に名を残した人だから重みが違った。クラブW杯とかの会場で、ジーコはいろいろな人に声を掛けられていた。鹿島アントラーズを世界のみんなが知っているのはジーコのおかげもある。負けた試合でもジーコが顔を真っ赤にして、一番怒り悔しがっていた。家族と思っている選手たちみんなの成功を願っていた。いまの仙台はチャンス。そういう経験をみんなにしてほしい。優勝が一番いいのは当然として、J1昇格だって立派な一つのタイトル。みんなが待ち望んでいるタイトルだ。

  • 遠藤 康Yasushi Endo
  • Yasushi Endo

    1988年4月7日生まれ。
    仙台市出身。
    なかのFC(仙台市)から塩釜FC(宮城県塩釜市)を経て2007年鹿島アントラーズに加入。左足のキック精度が高く、卓越したボールキープ力も光る攻撃的MFで、10年以降は主力として3度のJリーグカップ制覇や、16年のJ1リーグと天皇杯優勝などに貢献した。J1通算304試合出場46得点。
    2022年、15年プレーした鹿島を離れ、生まれ故郷のベガルタ仙台へ完全移籍した。
    U-15、U-16、U-18の各年代で代表経験があり、15〜17年は日本代表候補に選出された。

  • アカウント登録

  • 新規会員登録の際は「プライバシーポリシー」を必ずお読みいただき、ご同意の上本登録へお進みください。

ガンバ大阪・半田陸が戦列復帰へ。
「強化した肉体とプレーがどんなふうにリンクするのか、すごく楽しみ」