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Vol39「残り4試合」

  • 2024.10.31

    Vol39「残り4試合」

絶康調

©VEGALTA SENDAI

最終盤にきて2連勝。これは大きい。19日の横浜FC戦は多くのサポーターが応援に来てくれた。すごく期待されている中でのホーム戦勝利(3-0)だったので、みんなすごく自信がついたと思う。レンジ(ベガルタ仙台MF松井蓮之)が出場停止。代わりに出場したアオイ(ベガルタ仙台MF工藤蒼)が、得意とする守備はもちろん、攻撃でも得点するなど活躍してくれた。アオイは100%の力で練習していたことを試合で出しただけで、やったことのないプレーをしたわけじゃない。いつものプレーをしてくれた上で、勝利を確定づける3点目のゴールを決めた。頑張っている選手のところには、不思議とボールがくる。どこかで1点でもやられていたら分からない、結構危ない試合で、スコアほど楽勝でもなかった。アオイは課題を克服しながらもいいパフォーマンスを見せてくれた。今季の最初の方は試合に出ていたけれど、途中から全く試合に絡めなくなっても、腐らずずっと練習していた。かなりの大一番で、そして何カ月ぶりかのスタメン。そうなっても、しっかりと力を発揮できたのは日ごろの努力のたまものだろう。プロに限らず、サッカーをしている小中高生も含めて、試合に出られていない人たちのお手本となるプレーだったと思うね。

アオイの課題は明白で、前を向けなかったり、縦パスを入れられなかったり、ゲームを作れないことだった。だから、全体練習後も黙々と前を向く練習に取り組んでいた。それにずっと付き合っていたコーチ陣もうれしかったと思う。実際のところ、いざ試合になると、どこに相手がいるか分からない状態でのターンは難しい。アオイはせっかく前を見ても横とか後ろにパスしていた。刈り取られる怖さがあったのか、相手にボールを蹴らされていた。センスも経験も必要だし、アオイにはずっと「前に出せよ」と話していた。アオイにはその弱点を補ってあまりある守備と運動量があったから序盤は試合に出ていた。ところが、チームが徐々にボールを持てるようになったら、前に入らなくて攻撃が停滞していた。アオイ自身も感じていただろうし、分かっているからこそ、練習から失敗し続けても取り組んでいた。ただ、ゴールを決めて足をつってしまい、そのまま退場になったから「それはダサいよ」ってイジっておいた。まだ手放しでは褒めないよ。あの試合に勝ったから、なんとか戦えるラインにいられていると思うから。

みんな迷いもないし、いい意味でいつもと変わっていない。浮かれていないし、コーチ陣も危機感を持ってやっている。負けたら終わりの立場にいるから、その緊迫感がうまく伝わっている。そんな雰囲気で27日の愛媛戦を迎えた。そんなにうまくはいかないだろうとミーティングから話していた。それでも前半、うまくいっていないなりにゼロで抑えていて、苦しいときにセットプレーで点を取れるっていうのは、勝てるチームこそができること。前半終了間際にCKで先制点をアシストした大夢が、先日マッサージを受けているときに「前半で変えられると思っていました」と話していた。今ならレンジがいる。アオイも活躍していいパフォーマンスができていた。そういうポジション争いが一番チームを活気づけるというか、出ている選手もウカウカしていられないから、この順位にいられるのかなって思う。たいていのチームはこの時期にメンバーを固めるんだけど、ゴリさん(ベガルタ仙台森山佳郎監督)の「いいときにいい選手を使う」という方針があるから、競争が続いている。出続けている友太(ベガルタ仙台MF郷家友太)やモト(ベガルタ仙台FW中島元彦)は練習からも手を抜かないし高いパフォーマンスを発揮し続けているから誰も文句を言わない。そういうやっかみの声ってありがちなんだけど、今のチームには全然ない。チームを引っ張っていける選手になってるし、成長していると思う。

友太は去年2桁得点したしハードワークはしていたけれど、何か物足りなかった。今季、文句なしの大黒柱になっているのは、いい監督との巡り会いが一つのきっかけになったんじゃないかな。選手にとってその出会いは重要。運の要素も入ってくる部分ではある。J2なら、なおさらだよ。ちなみに友太は真面目だから俺が何か言うと「はいっ!」「はいっ!」って応える。青森山田だなーって感じ。高校時代から知っているから余計になんだろうけどね。練習からちゃんとやってるし頭もいいから、あとは自分で考えてやるのが一番いいと思う。もちろん自分のプレーが第一。その上で今季はチームのことを考えるようになったことで視野が広がり、成長につながっていると思う。今ベガルタにいるのはとても頼もしいこと。オレは今年キャプテンらしいことをピッチの上では発揮できていないけど、代わりに友太がキャプテンシーを発揮してくれている。だから心配せず見ていられる。若い選手が出てくるとチームの未来は明るい。若手の活躍は希望であり未来でありチームの基盤になるところだからね。絶対的な存在として相手チームに怖がられる、嫌がられる存在になれば、もっともっと上に行ける。そのためには残り試合を勝つことが一番。緊迫した試合で勝たせられる選手こそが評価される。残り2試合。まだ2連勝しただけで、J1昇格を成し遂げた訳じゃない。プレーオフも含めた4試合で4連勝できるよう、引き締めて向かっていきたい。

  • 遠藤 康Yasushi Endo
  • Yasushi Endo

    1988年4月7日生まれ。
    仙台市出身。
    なかのFC(仙台市)から塩釜FC(宮城県塩釜市)を経て2007年鹿島アントラーズに加入。左足のキック精度が高く、卓越したボールキープ力も光る攻撃的MFで、10年以降は主力として3度のJリーグカップ制覇や、16年のJ1リーグと天皇杯優勝などに貢献した。J1通算304試合出場46得点。
    2022年、15年プレーした鹿島を離れ、生まれ故郷のベガルタ仙台へ完全移籍した。
    U-15、U-16、U-18の各年代で代表経験があり、15〜17年は日本代表候補に選出された。

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