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約2週間の日程で行われた沖縄キャンプを終えて、町田に戻ってきました。思えば、FC町田ゼルビアにとってJ1リーグでの初めての戦いとなった昨年は、始動から開幕を迎えるまでのこの時期、割とメンバーを固定しながら、戦術を浸透させることに重きを置いてチームづくりが進みました。ですが、今年はどちらかというと新加入選手を含めていろんな組み合わせ、ポジションを試しながらここまでのチームづくりが行われてきました。特に沖縄キャンプで戦った練習試合では実戦を通してお互いのプレー、特徴を知ることはもちろん、チームとしての基準を浸透させるための組み合わせが多かった気がします。
これは黒田剛監督以下、コーチングスタッフにも繰り返し言われてきた通り「AFCチャンピオンズリーグ(ACL)にも参戦する今シーズンは、間違いなく選手層の厚みが必要」というのが理由の1つだと思います。また、ここ2年、夏場に失速してしまった反省を踏まえた『様々な組み合わせ』でもあったと受け止めています。
もちろん、チームとして選手層の厚みを求めるのはゼルビアに限らず、簡単ではありません。一口に「下からの突き上げ」と言っても、若い選手がそう簡単に台頭できる世界ではないし、まして、シーズン序盤はある程度、メンバーを固定して戦うことも多い中で若い選手がチャンスを掴むのはそう簡単ではないと思います。実際、開幕前の現時点で、ゼルビアにそういう勢いのある若手というか、ラッキーボーイ的にチームを活性化してくれそうな若い選手の台頭が見られるのかと言えば、正直、まだまだだと思います。
ただ、彼らは間違いなく僕が若かった20歳前後の頃よりポテンシャルはあります。それぞれに「今年は、俺がやってやる!」という強い覚悟で臨んでいることも伝わってきています。彼らの向き合い方次第で、この先、チームを勢いづける存在になっていける可能性も十分あります。だからこそ、ここから開幕までの時間を通して、また開幕してからも、トライを続けて欲しいし、僕ら年齢が上の選手もそういう選手の姿に刺激を受けながらキャリアを積み重ねたことの意味を、プレーで示し続けなければいけないと思っています。それによってシーズンが進むほど、チーム力が膨らんでいくという構図が出来上がれば理想です。
さて、沖縄キャンプを終えて『2025キャプテン総選挙』が開催されました。昨年と同様、監督からは「苦しい時でもこの人なら信頼できる。ゼルビアがさらなる衝撃を与えるために、ドッシリとしていてブレない『リーダー』を真剣に選んで欲しい」と伝えられた上での選挙でした。結果、僕がキャプテンに、北斗くん(下田)と雄太(中山)が副キャプテンに選ばれました。まずは、今シーズンを共に戦っていく仲間に信頼を寄せてもらえたことを光栄に思います。僕自身にとっては、昨年に続く『キャプテン』だったことから、ある意味、昨年の自分に対する答え合わせのように受けとめたところもありました。
もっとも、昨年と同じ姿を示せばいいとは思っていません。昨年以上に難しい戦いが予想される中で、チームの目標を実現するには僕自身も心身両面でいろんなことを上積みしていかなければいけないし、全員がその決意を持って臨まないと、昨年以上の結果は得られないとも思います。次から次へと試合がやってくる状況下、国内戦以上の中・長距離移動を強いられながらの戦いは、想像以上に過酷を極めます。これまでのように直近の試合で出た反省や課題をトレーニングで見直すための時間もないまま次の試合に臨むことも出てきます。チームとして結果が出ていれば『連戦』が勢いになることもありますが、逆の場合は、チームがどんどん深みにハマっていくことも考えられます。といったことを想像しても連戦を戦いながらチーム力を維持、向上させていくのは簡単ではなく、まして、ACLの戦いを初めて経験するゼルビアだけに、厳しい状況に立たされることもあるだろうと覚悟しています。
じゃあ、そういった苦しい状況に置かれたときにチームはどうすれば、ズルズルと落ちていかずに乗り越えていけるのか? そこにはいくつかの要因があると思っています。
1つは、チームとして立ち返れる確固たる『戦術』があるか。実際、昨年の戦いを振り返っても「自分たちはこれをすれば結果を出せる」という芯を備えたチームは、厳しい戦いの中でも必ず勝ち点を積み上げていた印象がありました。僕らが上位を争えたのもそれが理由の1つだと自負しています。だからこそ、まずは先にも書いた通り、選手層の厚みと、誰が出ても戦術を徹底できるチーム力が不可欠になると思っています。
また、苦しいときにしがみつける『人』がいるか、も大事な要因だと考えています。これは「この選手が輝けばチームは息を吹き返す」というようなプレーで牽引できるチームのエース、大黒柱という意味でもそうだし、苦しいときにしがみつける精神的支柱、という意味でも、です。
特に後者は僕が描くキャプテン、リーダー像ともイコールです。僕の中では鹿島アントラーズ時代の小笠原満男さんや日本代表の長谷部誠さんがまさにそういった存在でした。彼らは、10人、20人にしがみつかれようと一切、揺らがなかったし、それどころか、しがみついてきた全員をショベルカーのごとく根こそぎ引っ張り上げてくれるようなリーダーシップを備えていました。そしてその事実は、決まって苦境から這い上がろうとするチームの背中を強く押していました。
僕自身、まだまだその域には到達できていませんが、ゼルビアのキャプテンを預かる以上、その責任をしっかり受け止めながら、彼らに近づいていきたいと思っています。と同時に、ファン・サポーターの皆さんを含めたゼルビアに関わる全ての人たちが「源なら任せて大丈夫」「昌子が紛れもなく俺たちのリーダーだ」と言ってもらえる信頼を掴むために、ピッチ内外で自分のプレー、言動に責任を持って、シーズンを戦っていこうと思っています。
あっという間に2月に入り、いよいよ来週には開幕を迎えます。この先は、よりチームの強みである『守備』に磨きをかけつつ、いろんなトライ&エラーを繰り返しながら、チームとしての約束事、戦術という幹をより太くしていける時間にしたいと思っています。開幕戦はホームでのサンフレッチェ広島戦です。2月16日、町田GIONスタジアムで会いましょう。
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昌子 源Gen Shoji
1992年12月11日生まれ。
兵庫県出身。
11年に米子北高校から鹿島アントラーズに加入。14年には自身初のJ1リーグフル出場を実現するなど主軸選手に成長を遂げ、16年のJ1リーグや天皇杯優勝、18年のAFCチャンピオンズリーグ制覇などに貢献した。
18年12月にトゥールーズFCに完全移籍。すぐさまレギュラーに定着するも2シーズン目はケガに苦しみ長期の戦線離脱に。その状況を踏まえてJリーグへの復帰を決断し、20年から3シーズンはガンバ大阪で、23年は鹿島アントラーズでプレー。24年はFC町田ゼルビアに完全移籍となった。
14年に日本代表に初選出。2018FIFAワールドカップ ロシア出場。