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Vol46「鬼木鹿島始動」

  • 2025.02.08

    Vol46「鬼木鹿島始動」

絶康調

いよいよ今年のJリーグが開幕する。引退したてでドタバタ動いていたものだから「もう始まっちゃうのか」って感じ。最近はなかのFCでの活動に時間を割いていて、午前中にスポンサーの挨拶回り、午後は小学校低学年、夕方以降は高学年やジュニアユースを見ている。今まで選手だったからあまり気にしていなかったけど、開幕前のキャンプ中は、どうしても情報量が少なくなるね。

鹿島アントラーズは新加入の選手がどうフィットするのかも気になるし、それ以上に鬼木さん(前川崎フロンターレ鬼木達監督)が指揮を執ることのインパクトが大きい。オレの鹿島時代はなかなかフロンターレに勝てなかったから、苦手な監督だった。2017年、鹿島が最終節で逆転優勝を許してからフロンターレの時代が始まった。あそこで時代を渡してしまい、以降に勝てなくなっていった。当時、優勝はもちろん狙っていたけれど、それ以上にフロンターレに勝ちたいという思いは選手みんなが持っていたはず。その鬼木さんが鹿島の監督だなんてびっくりだ。プロのキャリアを鹿島でスタートした人だから、オレから見るとフロンターレの鬼木さんのイメージが強くても、鹿島フロントは「鬼木が帰ってきた」になるんだろうし、実際そういう雰囲気だった。試合後、ジーコとかと話している姿には違和感もなくて、確かに「鹿島の人だな」とも思っていたところもある。風間さん(風間八宏元監督)のフロンターレはうまいけど勝ち切れない印象があって、そこに鬼木さんが勝負の厳しさを加えて黄金時代を迎えた。今年の鹿島がどういうサッカーをするのか楽しみで仕方がない。ベガルタ仙台時代にオレがいい選手だと思っていたテテ(DFキム・テヒョン)も加入した。当時から鹿島の人に「仙台にいい選手いる?」って聞かれるたびにテテの名前を挙げ、「若くてムラはあるけれど、とにかく真面目でスピードと高さを兼ね備えている左利き。あんな選手なかなかいないよ」と勧めていた。そのテテが鹿島でどこまでやれるかも見ものだ。

今年は強化部も浩二さん(元日本代表DF中田浩二)になり、トップチームのコーチにソガさん(元日本代表GK曽ケ端準)とヤナさん(元日本代表FW柳沢敦)が入った。OBが多数コーチになっている、オレが知る鹿島な感じになってきた。ブラジル人監督とOBのコーチ陣、それが常だったから。そして、優勝を狙えるメンバーがそろっているけれども、最初からそううまくいくとは思っていない。序盤のつまずきはある意味で鹿島のお家芸だしね。ニュースでいつも「優勝優勝」って聞くと、そんなに急がなくていいのになと思う。残念ながら今の鹿島は常勝軍団ではない。昔のことは忘れて最初からあまり優勝って言ってプレッシャーをかけちゃうと、余裕がなくなるのではないかと勝手に心配している。しっかり自分たちのスタイルをつくってほしい。オレだってタイトルを取れない時期もあった。いいチームができてきて初めて「そろそろ優勝じゃない?」ってプレッシャーをかけてほしいね。選手たちだって正直なところ今の段階で確信できてないかもしれない。鹿島は今回、毎年恒例となっている水戸との練習試合を1-1で引き分けた。過去の練習試合で水戸に負けた記憶があまりない。J1とJ2の差がなくなってきている証拠なのかもしれない。ただ単にオレが悪い記憶をすぐ忘れる便利な性格なだけかもしれないけどさ。とにかく、鬼木さんのサッカーが浸透するまで時間かかるかもしれないし、今はいろいろな組み合わせを試している段階だろうから、最後にいい順位にいれたらいいと思う。とはいえ、湘南ベルマーレとの開幕戦は勝って自信を持って戦えるようになってほしい。取り組んでいるサッカーの成熟度に自信を持つためには、公式戦で勝つことが一番だ。

逆に、J1復帰を目指すベガルタ仙台は開幕戦からぶっ飛ばしていかないといけない。鹿島はもともと自力がある。でもベガルタには盤石といえる土台がまだない。だから負けると不安になってしまうし、自信を取り戻すのが大変な作業になってしまう。オレのベガルタ2年目を見ていた人たちなら分かってくれるだろう。歯車がかみ合わなくなった時に踏ん張れず、チーム全体が自信を失ってずるずる落ちていってしまった。今年はみんなゴリさん(ベガルタ仙台森山佳郎監督)だから大丈夫だと思っている。ところが、良くも悪くも環境に慣れてしまうのが人というもの。良い方向に慣れてくれればゴリさんブーストがさらにかかるからいいんだけど、ゴリさんの情熱に悪い意味で慣れてしまい、「はいはい」って流しちゃうような人が出てこないとも限らない。そこをキャプテンの友太(ベガルタ仙台MF郷家友太)たちがどう引き締めるのか。友太にはできると思っているし、やらないといけない立ち位置だからね。友太は最後まで頑張っていろいろなものを勝ち取ってくれると信じている。ベガルタの開幕戦で、梁さん(ベガルタ仙台梁勇基クラブコーディネーター)とともに解説を務めることになった。よく解説しているタムさん(元ベガルタ仙台DF田村直也)からレクチャーも受けた。その上で今回はフラットな目線で話したいし、あえて厳しくいこうと考えている。なんだかんだいって、試合が始まったら「すげー」って言っちゃったり、得点に大喜びしちゃったりする未来もちらつくけどね。

余談になるが、先日鹿島のスポンサーパーティーにお邪魔した。鹿島はJリーグで一番スポンサーパーティーが盛大なんじゃないかな。クラブがスポンサーを大切にする姿勢、「ファミリーですよ」という感じがすごいし、空間全体が鹿島愛に包まれていて、みんなの鹿島が勝つためにという思いが伝わってくる。いったんスポンサーになったら、いい意味で抜け出すのが大変だと思う。ベガルタも春男さん(庄子春男GM)やゴリさんが来ていろいろと変わってきているから、現場の変化に共鳴してクラブ全体がいい方向進んでいけばうれしい。

  • 遠藤 康Yasushi Endo
  • Yasushi Endo

    1988年4月7日生まれ。
    仙台市出身。
    なかのFC(仙台市)から塩釜FC(宮城県塩釜市)を経て2007年鹿島アントラーズに加入。左足のキック精度が高く、卓越したボールキープ力も光る攻撃的MFで、10年以降は主力として3度のJリーグカップ制覇や、16年のJ1リーグと天皇杯優勝などに貢献した。J1通算304試合出場46得点。
    2022年、15年プレーした鹿島を離れ、生まれ故郷のベガルタ仙台へ完全移籍した。
    U-15、U-16、U-18の各年代で代表経験があり、15〜17年は日本代表候補に選出された。

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