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Vol.119 『今』に向き合う。

  • 2025.03.04

    Vol.119 『今』に向き合う。

発源力

©FCMZ

J1リーグの開幕4試合を戦って2勝2敗。去年の同時期は3勝1分で始まったことと比べれば、決して理想的なスタートとは言えません。試合毎に出てくる新たな課題と向き合い、修正を心掛けながらも、また次の試合では新たな課題が見つかって…という状況でシーズンが進んでいるのも間違いないです。

ただ、僕は一概に『勝てなかった=良くなかった』とは思っていません。昨年以上の成績を目指せばこそ、僕たちは今、新しいシステムや戦い方にチャレンジしている最中だということを踏まえても、です。そう言うと、もしかしたら「去年までの戦い方に戻せば、結果が出るんじゃないか」と思う方もいるかも知れません。でも僕自身は、それだと今はなんとか凌げても、シーズンを通してみれば、昨年の終盤のようになってしまい、最終的には昨年以上の成績を残すことができないんじゃないかと考えています。

思い返せば、昨シーズン、僕たちはいわゆる『スタートダッシュ』に成功しました。他のJ1クラブがFC町田ゼルビアの戦い方に慣れていないことをアドバンテージにしながら、結果を積み重ねていけたことで前半戦を首位で折り返せたという流れがあったと思います。ただ、一方で後半戦は、戦い方を研究され、持ち味を封じられた試合も多く、なかなか相手を上回ることができなかったのも明らかでした。それが最終的に順位を落としてしまった理由にもなりました。逆に、自分たちの上位を走ったヴィッセル神戸やサンフレッチェ広島は、その後半戦に白星を増やし、順位を上げていきました。

つまり、何を言いたいかというと、リーグ戦というのは、一発勝負のカップ戦とは違い、シーズンを通して強さを示せるチームが上位に生き残っていけるということです。よりお互いの手の内がわかった上で戦う後半戦も、相手の対策に屈することなく上回れるか、結果を出せるかが、最終的に明暗を分けていきます。

だからこそ、今シーズン、ゼルビアが昨年以上の成績を求めるには『シーズン』を通して勝ち抜くことを想像して、今を過ごさなければいけないし、チームづくりに向き合わなければいけないと思っています。そして、そのために、去年とは違う新しいシステムや戦い方を自分たちのものにするための『今』から逃げてはいけないと思います。それが自分たちのものになれば、逆に、試合展開に応じて、昨年自分たちがベースにしていた戦い方がより際立つことも増えるからです。

だからと言って、今自分たちが新たに取り組んでいるサッカーが全てうまくいっているわけではないのも、事実です。まだまだチームとしてスムーズにいかないところもあります。黒星を喫した開幕戦や第3節・東京ヴェルディ戦はわかりやすくいい時間帯、悪い時間帯があって、その後者でやられてしまったのも、見ての通りです。特に、相手チームに僕たちのやり方への対策を講じられた際に、どう対応するかの部分で後手を踏んだのは明らかでした。試合後にみんなと話をする中でも、もう少し相手の出方に応じて、柔軟に戦い方を使い分けられるようにならなければいけない、という課題も明確になっています。

でも一方で、この先もトライ&エラーを繰り返しながらその部分でチームが熟成すれば、いずれどの試合でも結果を見出せるようになる、というくらいの自信を持って『今』に向き合えています。今はその事実を大事に考えながら、かつ第4節・名古屋グランパス戦のように『勝つ』ことを自信にしながら、チームとしての積み上げをしていこうと思います。

そんなふうにチームが一枚岩で進んでいるからこそ、正直、東京ヴェルディ戦での一部サポーターの方からいつもより厳しめの声を投げ掛けられたのには驚きました。誤解を招かないように最初に言っておきますが、これは彼らの行動に異を唱えているということでは決してないです。どんな応援をするのか、試合結果をどう受け止めるのかも人それぞれの自由で、実際、僕たち選手はいつもその1つひとつの声を真摯に受け止めています。

じゃあ、なぜ驚いたのか。1つは僕がゼルビアでプレーするようになって、初めて聞いた、厳しめの声だったというのはあるかもしれません。実際、昨シーズンはなかなか勝ち星が遠い苦しい戦いが続いた後半戦も、ポジティブな声が数多く耳に届きました。それに対し、今シーズンは、わずか3試合目で厳しめの声が聞こえたことで素直に『驚き』という感情になったのだと思います。ただ、それを、昨年の戦いを通してゼルビアが上位を目指すべきチームだと確信しているから、とか、期待値がより上がっているからこその声だと受け止めれば、僕たちが一歩成長した証とも言えます。少なからず、僕自身はそう受け止めて、進んでいこうと思っています。

あと、応援について触れた流れで、せっかくの機会なので伝えておくと、先にも書いた通り、僕たち選手は常に皆さんの声援の1つひとつにいつも真摯に耳を傾け、受け止めています。ただ、それは全て『チーム』に投げかけられるものだけです。仮に特定の個人を攻撃したり、貶めるような声は絶対に受け入れられません。サッカーはチームで戦うスポーツで、誰か特定の個人で結果が出るものではないからです。

もちろん、人間には感情があって、時に熱くなることもあるかも知れません。それは選手も同じだと思います。ただ、熱くなったからと言ってピッチで何をやってもいい、言ってもいいということは絶対にありません。侮辱するような発言や、感情任せのラフプレーには必ず警告カードが出されます。それと同じで、この先も皆さんにはゼルビアの一員として、しっかりとルールを守る中で、共にゼルビアの勝利のために戦う仲間であり続けて欲しいと思っています。

  • 昌子 源Gen Shoji
  • Gen Shoji

    1992年12月11日生まれ。
    兵庫県出身。
    11年に米子北高校から鹿島アントラーズに加入。14年には自身初のJ1リーグフル出場を実現するなど主軸選手に成長を遂げ、16年のJ1リーグや天皇杯優勝、18年のAFCチャンピオンズリーグ制覇などに貢献した。
    18年12月にトゥールーズFCに完全移籍。すぐさまレギュラーに定着するも2シーズン目はケガに苦しみ長期の戦線離脱に。その状況を踏まえてJリーグへの復帰を決断し、20年から3シーズンはガンバ大阪で、23年は鹿島アントラーズでプレー。24年はFC町田ゼルビアに完全移籍となった。
    14年に日本代表に初選出。2018FIFAワールドカップ ロシア出場。

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