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Vol.120 見えてきた、新たな形。

  • 2025.03.18

    Vol.120 見えてきた、新たな形。

発源力

©FCMZ

自分たちが今シーズン取り組んでいる新たなシステム、新たなサッカーが少しずつ実を結び始めてきました。J1リーグ第4節・名古屋グランパス戦での拓真(西村)が決めた1点目のように、北斗くん(下田)がサイドに速いスルーパスを送り込んだところからゴールをこじ開けるとか、2点目のようにパスを繋いで崩したところから得点を奪うとか。あるいは、第5節・横浜FC戦で侃士(桑山)が決めた1点目のように晃生(谷)からのロングキック一本で崩してゴールネットを揺らすというように、みんなが同じ絵を描きながら局面に応じて一番いい選択をすることで得点を奪えるようにもなってきています。得点シーン以外でも、昨年の攻撃パターンとは違う組み立て方でフィニッシュまで行く回数も少しずつ増えてきました。これはまさに、シーズンが始まってみんなで積み重ねてきたトライ&エラーが意味を持ち始めた証拠です。まだまだプレー精度は高くできると思っていますが、試合を重ねるごとに阿吽の呼吸でプレーできるシーンが増えているのは、ポジティブに受け止めています。

また、侃士のように若い戦力が台頭しつつあるのもすごくいいことだと思っています。侃士は昨シーズンも特別指定選手としてJ1リーグデビューを飾っていたことを思えば、多少のアドバンテージがあるかもしれませんが、新卒1年目のルーキーの活躍は他の選手ともまた違う、特別な活気をチームにもたらしてくれることからも、チームの追い風になっています。

思えば、侃士と初めて同じピッチに立ったのは、彼のデビュー戦だった昨年6月のヴィッセル神戸戦でした。その際は、途中出場ながら最初のプレーで、相手のセンターバック、マテウス・トゥーレル選手にヘディングで競り勝っていました。トゥーレル選手は昨シーズンのベストイレブンにも選出されたJリーグを代表するセンターバックですが、その相手にも全く臆さずに向かっていく姿を見て「すげぇな!」と驚いたのを覚えています。

実際、侃士はFWらしい負けん気の強さも備えていますし、ルーキーらしいガムシャラさも目を惹きます。体の使い方のところはセフン(オ)やデューク(ミッチェル)に比べるとまだまだですが、どんなボールにも反応しようとする姿勢はいずれ、必ず数字に繋がっていくんじゃないかとも思います。聞くところによると、昨年の関東大学サッカーリーグ1部の得点ランキングで侃士は2位だったそうですが、1つ上の順位、つまり『得点王』には今年、サンフレッチェ広島で注目を集めている中村草太選手がいたらしく…。大学時代はあと一歩、彼に及ばなかった悔しさを、Jリーグの舞台で晴らしてくれるだろうと期待もしています! 同時に、うちの前線にはタイプの違ういろんなFWがいるからこそ、彼らから学び、与えられた時間の中で確実に点を重ねていくことで、侃士自身も勢いづきながらそれをチームの勢いに繋げていってもらいたいです。

話は変わりますが、3月5日にチームメイトのエリキのヴィッセル神戸への期限付き移籍が発表されました。FC町田ゼルビアのJ1昇格に大きく貢献した23年のエリキの活躍を脳裏に焼き付けている方もたくさんいるはずで、ショックを受けたサポーターの皆さんは多かったんじゃないかと思います。

僕は昨シーズンに加入したので、1年強しか彼と一緒にプレーしていませんが、エリキが昨シーズン初めてメンバー入りしたJ1リーグ第11節・柏レイソル戦での大きな『エリキコール』を聞いて「本当に町田の人たちに愛されているんだな」と思った記憶があります。また、彼が第15節・東京ヴェルディ戦でシーズン初ゴールを決めた時も、スタンドの全員が笑顔になったというか。チームとしては5得点目だったにも関わらず、1〜4得点目より盛り上がったんじゃないかってくらい、皆さんが喜んでいたのも印象に残っています。その姿からも彼が『町田の太陽』と言われる理由を知った気もしました。

ただ今シーズンは、1月8日にチームが始動した中で、エリキの合流はJ1リーグの開幕直前の2月14日と、大幅に遅れ…。彼がそのことをどう受け止めていたのかはわかりませんが、チームがキャンプから取り組んできた新たな戦術に適応する時間があまりに足りずにメンバー外の状況が続いていたのは事実だと思います。その中で、彼自身も日に日に試合に出たいという気持ちが大きくなり、かつ、30歳という年齢や、彼が歩んできたキャリアを考えても、ゼルビアを離れるという決断につながっていったのかな、と。

その最後の決断のところは、チームメイトに挨拶に来てくれた時も特に彼からは明かされなかったので、あくまで想像ですが、僕自身も、過去の経験から「プロサッカー選手は試合に出場しなければ自分の価値を高められない」と何度も痛感してきたので。今はとにかく、彼自身が選んだ道を、ピッチでのプレーで正解にしていってもらいたいと願っています。

エリキ、Boa sorte!

  • 昌子 源Gen Shoji
  • Gen Shoji

    1992年12月11日生まれ。
    兵庫県出身。
    11年に米子北高校から鹿島アントラーズに加入。14年には自身初のJ1リーグフル出場を実現するなど主軸選手に成長を遂げ、16年のJ1リーグや天皇杯優勝、18年のAFCチャンピオンズリーグ制覇などに貢献した。
    18年12月にトゥールーズFCに完全移籍。すぐさまレギュラーに定着するも2シーズン目はケガに苦しみ長期の戦線離脱に。その状況を踏まえてJリーグへの復帰を決断し、20年から3シーズンはガンバ大阪で、23年は鹿島アントラーズでプレー。24年はFC町田ゼルビアに完全移籍となった。
    14年に日本代表に初選出。2018FIFAワールドカップ ロシア出場。

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