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Vol.121 日本代表、おめでとうございます!

  • 2025.04.01

    Vol.121 日本代表、おめでとうございます!

発源力

©FCMZ

3月20日の2026W杯アジア最終予選で、日本代表がバーレーン代表に2-0で勝ち、来年6月に開幕するW杯・北中米大会への切符を手にしました。おめでとうございます! ここまでの戦いの全てを観てきたわけではないですが、率直に「日本は強くなったな」と思ったし、過去最速で本大会出場を決める姿に、風格すら感じました。

残り3試合を待たずしてW杯出場を決めたことで、見た目的には楽に勝ち進んだように映るかもしれないですが、過去の経験を振り返っても、W杯出場までの道のりに、簡単な試合など一つもなく…。実際に戦った選手たちは常に大きなプレッシャーと向き合ってきたと思います。ですが、それさえも感じさせないほど、堂々とした戦いぶりでした。

そのバーレーン戦を終えた直後、3月26日のサウジアラビア戦を観て、僕が出場した2018年のロシア大会の記憶が蘇ってきました。というのも、ロシア大会の時のアジア最終予選も、1試合を残してオーストラリア戦で本大会出場を確定させた直後に戦ったのが、サウジアラビア戦だったからです。

当時、僕らがオーストラリアに勝利したことで、本大会出場の残り1枠を、ラスト1試合でオーストラリアとサウジアラビアが競う状況にありました。その中で、チームを率いるハリルホジッチ監督からは、サウジアラビア戦を前に「俺たちは最後までしっかり勝ちにいく」という言葉と共に、ベストメンバーで臨むことを伝えられました。

そのアウェイに乗り込んでのサウジアラビア戦は、暑さもさることながら、スタジアムがものすごい熱気に包まれていました。聞くところによれば、サウジアラビアの国王(だったはず)が、試合のチケットを大量に購入して国民を招待したらしく、満員のスタジアムは異様な盛り上がりを見せていました。試合前、その国王が大型ビジョンに映し出されるたびに、観客全員が両手を挙げて頭を下げるという、礼拝の仕草を繰り返していたのも初めて見る光景でした。

結果、その試合で僕たち日本代表は63分に失点して、0-1で負けてしまったのですが、相手のゴールが決まった瞬間、『トーブ』と呼ばれる白い長袖のワンピースのような服を着た人たちが一斉にうねりをあげ…。同時に、頭に被っている『ガトラ』と呼ばれる真っ白の布を押さえるための黒くて太い輪っかが、ピッチに向かってビュンビュン飛んできて。「え? それは飛ばしたらアカンやつだろ!」と冷静に思っていたのを覚えています。また、サウジアラビアの強さもめちゃめちゃ印象に残っています。もちろん、勝たなければプレーオフに回らなければいけなくなる状況だったのも大きく影響したと思いますが、にしても、強かった!

それに対して先日、日本と対戦したサウジアラビアは手堅い戦いを敷いてきたというか…。日本以外のチームはグループリーグで僅差で競っている状況にありながら、ベタ引きで勝ち点1を死守するような戦いをしていました。これは、相手にとってアウェイ戦だったことや、予選で圧倒的強さを見せてきた日本へのリスペクトもあったと思います。また、次の試合でオーストラリアが日本と対戦することや、最終節ではサウジアラビア対オーストラリア戦を残しているのも頭にあったのかもしれません。いずれしても、僕たちが戦ったサウジアラビア戦とは全く違う戦い方をしていたことに「こんなに違うんや!」と、終始驚きながら観戦していました。

そのサウジアラビアの戦い方を見て思ったのは、おそらく本大会も、日本をリスペクトした上で戦い方を変えてくるチームがこれまでよりも増えるだろうということです。何より、2022年のカタール大会のグループリーグで、日本が初戦でドイツに、3戦目でスペインに勝ったことによって、間違いなく世界の日本を見る目は変わったはずです。つまり、他国は…というか、ヨーロッパの国ですら、以前のように「日本と同じ組か、ラッキー!」と思うことはまずなくなって、「面倒くさい相手と同じ組になってしまったな」という意識で臨んでくるんじゃないかと想像します。そして、その事実は日本のグループステージの戦いを間違いなく難しくするはずで…。となれば、日本にとっては、これまでとは違う種類の難しさと向き合う大会になるんじゃないかとも思います。そしてだからこそ、その大会に、どう日本が挑むのかが今からすごく楽しみです。

かつ、ここから本大会までの約1年強の時間を通した、メンバー選考というサバイバルの中で、W杯出場を目指す選手がいかにさらなる成長を見出せるのかも日本の明暗を分ける要素になっていくんじゃないかと思っています。

先に話をしたロシア大会では、アジア最終予選のオーストラリア戦でチームをW杯出場に導くゴールを決めた拓磨(浅野/現RCDマジョルカ)や陽介(井手口/現ヴィッセル神戸)は本大会のメンバーに選ばれませんでした。2022年のカタール大会では、当時ハダースフィールド・タウンFCに所属していた雄太(中山/現FC町田ゼルビア)が本大会のメンバーに選出されながらチームの試合でアキレス腱を断裂し、出場が叶わなくなってしまったこともありました。

そんなふうに本大会の出場メンバーが決まるまで、試合が始まる瞬間まで、何が起きるかわからない、誰がピッチに立つのか決まっていないのがこの世界です。そして、だからこそ、そこに立つ可能性は、プロサッカー選手の全員にあるとも言えます。その事実も自分たちの成長の追い風になるように。僕自身も1日1日を無駄にせず、しっかりチームでの戦いを続けようと思います。

  • 昌子 源Gen Shoji
  • Gen Shoji

    1992年12月11日生まれ。
    兵庫県出身。
    11年に米子北高校から鹿島アントラーズに加入。14年には自身初のJ1リーグフル出場を実現するなど主軸選手に成長を遂げ、16年のJ1リーグや天皇杯優勝、18年のAFCチャンピオンズリーグ制覇などに貢献した。
    18年12月にトゥールーズFCに完全移籍。すぐさまレギュラーに定着するも2シーズン目はケガに苦しみ長期の戦線離脱に。その状況を踏まえてJリーグへの復帰を決断し、20年から3シーズンはガンバ大阪で、23年は鹿島アントラーズでプレー。24年はFC町田ゼルビアに完全移籍となった。
    14年に日本代表に初選出。2018FIFAワールドカップ ロシア出場。

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