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Vol51「なかのFC初全国」

  • 2025.04.17

    Vol51「なかのFC初全国」

絶康調

なかのFCが創立以来、初めて全国大会に出場する。アイリスオーヤマが主催し、毎年宮城県女川町で開催されている「プレミアリーグU-11チャンピオンシップ大会」。宮城県2位で出場した3月末の東北大会を勝ち上がり、全国大会進出を決めた。昨年は鹿島ジュニアが来ていたから家族で観戦した。「全国大会に出たいね」って息子と話していた。今年は東北代表でベガルタジュニアとなかのFCが出ることになった。子どものサッカーで勝ち負けは二の次と言ってはいるものの、やっぱり勝ったらうれしいね。

なかのFCには1人で2~3人はがせる子がいるわけでもないし、県の選抜にみんなが入っているわけでもない。1対1でしっかり戦うことや自立する精神を大切にしてきて、それを表現してくれた。うまさは突出していなくても結果につなげることができた。決勝の相手は、オレがなかのFCの運営を引き継いだころにゴーシくん(元ベガルタ仙台FW大久保剛志)が運営し始めたYUKIフットボールアカデミーだった。「一緒に宮城県のサッカー界を盛り上げたい」と話してきた相手とこういう舞台で戦えたのもうれしかったな。これをきっかけに強いチームをつくっていくことがレベルアップにつながるんじゃないかな。なかのFCを倒すチームがどんどん現れてきてほしいし、ベガルタを倒すチームが現れてほしい。プロを経験したゴーシくんやオレたちが、宮城県のサッカーに新しい風を吹かせていきたい。

なかのFCが街クラブとして一風変わっているのは、Jクラブのジュニア世代のように、代表のオレが指導者を指導するスタイル。そのスタンスはしっかり守りたい。こういうことに取り組んだほうがいいんじゃないかということを、さまざまなタイミングで話し合う。今年は専任の指導者を1人増やして、主要メンバーが3人になった。子どもたちの問題点を話して、働きながら指導してくれているコーチの人たちにも情報を共有していこうと思っている。オレが普段から言い続けていることなんて、「悔いのないようにのびのびと戦おう」「1対1で負けるな、抜かれたらすぐ取り返しに行け」ぐらいかな。現場に入ると勝ちたくなっちゃうから現場には入らない。その代わり指導者とのコミュニケーションを重視していく。子どもの判断を狭めるような教え方はしないようにしていきたい。指導者もレベルアップしていろいろなものを子どもたちに落とし込まないといけない。指導に注力していると目の前の子どもたちしか見られなくなって、サッカーの変化に気付きづらくなると思うから、オレは一歩引いたところにいる。

ポゼッションを重視してつないでくるチームが増えている。もちろん、つなぐことが重要であることは間違いないと思うんだけども、サッカーは縦長のフィールドで戦う以上、1本のパスを得点につなげることも大事にしないといけないよね。ただロングボールを蹴るだけになっちゃわないようバランスを大事にして、常に縦を意識しながらボール回しもできるようになるのが理想。とはいえ、DF陣に求めるのは、ビルドアップより1対1で負けないことや空中戦で勝つこと。そういう根本的なことは忘れないようにしていかないといけない。まずは1対1で負けない選手になってほしい。だから、なかのFCの練習は対人中心。びっくりするぐらい対人。基本ゲーム形式で1対1、2対2、3対3、5対5とか試合形式だらけだ。ウオーミングアップと基礎以外は対人。とにかく対人。1対1に強くなってボールを持ち続けられれば、結果としてポゼッションにつながっていく。

ポゼッションを小学生に落とし込むのはなかなか難しいと思っている。それなら2対2とかで動いているほうが楽しいしね。ポゼッションを理解するのは中学生になってからでも遅くはない。オレも小学生時代そんな言葉知らなかったし。どんなボールが来てもキープできて、はがせて、シュート打てて、奪えて。そのためには練習からたくさん1対1をやって、試合でもチャレンジすること。プロでもそう変わらない。かつて鹿島のCB陣もよく言っていた。「まずやってみて修正していくしかない。どんどん奪いにいって、なんで取れないのかを自分で考える。とにかくやるしかない」と。根本は同じで表現方法が変わっているだけだと思う。再現性とかオートマチックとか言っても基本は変わらない。なかのFCはそういうチームカラー。練習からへとへとになるまで戦い続けてほしい。

引退してからなかのFCの運営に協力してくださる人が増えた。クラブ側でボールを用意できたり、アルファゴール(小さいゴール)を増やしたり、環境がどんどん良くなっている。遠征とか送迎の面でも助けられている。多くの協力があって、自分たちが前に進む判断をしやすくなった。だから、関わってくれているみんなで全国大会出場を決めたと思っている。本番は夏。そこまでに個人が伸びないと強くならないから、限られた時間の中でいろいろとチャレンジしていきたい。現役時代からずっと言っているけど、個人の成長が一番の戦術。みんな全力で頑張って、全国の舞台で思う存分サッカーを楽しんでほしいね。

  • 遠藤 康Yasushi Endo
  • Yasushi Endo

    1988年4月7日生まれ。
    仙台市出身。
    なかのFC(仙台市)から塩釜FC(宮城県塩釜市)を経て2007年鹿島アントラーズに加入。左足のキック精度が高く、卓越したボールキープ力も光る攻撃的MFで、10年以降は主力として3度のJリーグカップ制覇や、16年のJ1リーグと天皇杯優勝などに貢献した。J1通算304試合出場46得点。
    2022年、15年プレーした鹿島を離れ、生まれ故郷のベガルタ仙台へ完全移籍した。
    U-15、U-16、U-18の各年代で代表経験があり、15〜17年は日本代表候補に選出された。

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