©FCMZ
J1リーグ第21節・鹿島アントラーズ戦での勝利で『Jリーグホーム通算100勝』を達成することができました。まずは、このクラブの歴史に関わり『100勝』を支えてくれたすべての方たちに感謝したいと思います。
今シーズンの町田GIONスタジアムでの白星は3つ目で、僕が加入した昨シーズンを合わせても11試合しかないと考えても、この『100』のほとんどは過去、FC町田ゼルビアで戦ってくださった方たちが繋いでくれた数字です。今も現役としてチームを支えてくれている裕希くん(中島)をはじめ、現役引退後クラブスタッフとして働いてくださっているリ・ハンジェさんや深津康太さんら、時代ごとにゼルビアのために戦い、昇格を目指してくれた人たちがいたから、今、僕たちはJ1リーグの舞台で戦えています。12年に初めてJリーグに参入したことを思うと、正直、時間がかかったようにも感じますが、歴史というのは、そのどれが欠けても『今』はありません。だからこそ、改めてその歴史に感謝しつつ、今後はこの数字を200、300と増やしていけるように『今』を預かる自分たちが責任を持って戦っていかなければいけないと思っています。
当日のGスタには最多入場者数を更新する13828人もの方が足を運んでくださいましたが、たくさんの方と『100勝』を喜べたのもすごく嬉しかったです! 前回の発源力で首位・鹿島との『6ポイントゲーム』に、熱い『共闘』と満員の圧をお願いしていましたが、想像を超えるたくさんの方たちが素晴らしい雰囲気を作り出してくれました。ありがとうございます。
もちろん、同じ関東圏のクラブである鹿島サポーターの皆さんにも多数、ご来場いただいたからこその数字だし、鹿島の選手がこの日のGスタにどれくらいの『アウェイの圧』を感じたのかも正直、僕にはわかりません。ただ、普段から、カシマスタジアムのようなサッカー専用スタジアムで戦うことに慣れている鹿島の選手たちでも『満員』が生み出す空気に少なからず感じたものはあったんじゃないかと思います。だからこそこの勝利はファン・サポーターの皆さんと一緒に掴み取ったと思っています。
また、試合後、相馬(勇紀)が拡声器を使って皆さんにも投げかけていたように「僕らが結果を出すことも大事だけれど、この雰囲気を毎試合、みなさんにお願いしたいです。家族や友人・知人を連れて足を運び、これからも満員のスタジアムで後押しして欲しい」とも思います。実際、それを当たり前の風景にできれば、より早く『200勝』に辿り着けるんじゃないかと思っています。
また個人的には、自分が先発出場した試合で初めて鹿島に勝てたのも嬉しかったです。相手の処理ミスもあったとはいえ、早い時間帯に先制点ができたことや、前半のうちに加点できたことで、より自分たちのゲームになったし、90分を通して落ち着いて試合を運べました。またDFラインでいうと、鹿島戦は流帆(菊池)の復帰戦でもありましたが、この一戦に対する彼の並々ならぬ想いやメラメラ感を感じながらプレーできたのも心強かったです。その熱さのあまり、最後の最後で気を付けていたはずの優磨(鈴木)にPKを与えてしまったというオチまでありましたが(苦笑)、それを含めて流帆らしかったなとも思います。また、攻撃においても、ハチ(岡村大八)が決めたセットプレーでの2得点目は、ハチ自身の駆け引きのうまさ、高さが活かされたシーンだった一方で、流帆という、J1リーグでも知られた『ヘディンガー』がいたことで相手選手の目線を散らせたところもあったんじゃないかと思っています。
そういえば、流帆は第20節・湘南ベルマーレ戦を前にした練習後の円陣で締めの挨拶を任された際、「後半戦はそれぞれが『俺がヒーローになってやる!』という思いでやっていこう」と話していましたが、この日はまさに流帆がヒーローでした!
そうした手応えや勝利の喜びを感じながらも、実は僕自身の心はどこかしっくりきていません。それはきっと、この日も言葉に変え難い『鹿島らしさ』をピッチで実感したからだと思います。
思えば鹿島に在籍していた時代、僕は日本代表の活動などで他のチームの選手から「鹿島ってなんか、強いよね」「独特の憎たらしさがあるよね」みたいに言われることがありました。その時は「そう言われても自分ではわからないな…」と思っていましたが、今はまさに僕自身が、鹿島に対して同じことを感じています。
表現が難しいですが、試合の中で大人と子供くらいの差を突きつけられる瞬間があるというか。同じJ1リーグ、同じプロサッカー選手で、なんなら昨年は僕らの方が上位で終えたのに、鹿島と戦うと「僕らはまだまだ未熟やな」と思わせられることが多いです。戦術どうこうではなく、時間の使い方、スタジアムの雰囲気の持って行き方、ゲームの流れの作り方といった、対戦相手だからわかる『したたかさ』というか。目には映りにくい駆け引きや時間の使い方も本当に上手いなと感じます。今回は僕らが先手を取れたとはいえ、前半戦での対戦のようにリードを許してしまうと、前に出ていこうとする相手をやんわりいなしたり、気づいたらその矢印を折られてしまっていたり。それを言語化すると『マリーシア』ということになるのかもしれないけど、意図してなのか、意図せずなのか、いろんな局面で相手を自由にさせない、したたかさを感じます。
いや…先ほども書いた通り、僕自身も鹿島に在籍していた時代はその理由をわかっていなかったことを考えると、おそらく鹿島の選手たちは、それを意図せずに、あくまでナチュラルにやっているはずです。だから、対峙する相手もそのマリーシアを乗り越える術を見出しにくいというか。それが鹿島がJ1リーグ最多の、600以上もの勝利を収めてきた理由でもある気がします。
ということを、改めて今回も感じたからこそ、その鹿島にいつか「スカッと勝てた!」と言い切れる試合をするために、ゼルビアもまだまだチームとして成熟していかなければいけないと感じています。と同時に、僕たちも歴史を育んでいくことで積み上がり、受け継がれていくであろう『町田特有の強さ』を備えたチームになっていきたいです。
-
昌子 源Gen Shoji
1992年12月11日生まれ。
兵庫県出身。
11年に米子北高校から鹿島アントラーズに加入。14年には自身初のJ1リーグフル出場を実現するなど主軸選手に成長を遂げ、16年のJ1リーグや天皇杯優勝、18年のAFCチャンピオンズリーグ制覇などに貢献した。
18年12月にトゥールーズFCに完全移籍。すぐさまレギュラーに定着するも2シーズン目はケガに苦しみ長期の戦線離脱に。その状況を踏まえてJリーグへの復帰を決断し、20年から3シーズンはガンバ大阪で、23年は鹿島アントラーズでプレー。24年はFC町田ゼルビアに完全移籍となった。
14年に日本代表に初選出。2018FIFAワールドカップ ロシア出場。