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Vol55「東北大学蹴球部」

  • 2025.06.11

    Vol55「東北大学蹴球部」

絶康調

先日、「東北人魂を持つJ選手の会(東北人魂)」を冠にしたアンダー8(小学2年生以下)のフットサル大会を開いた。東北人魂は満男さん(元日本代表MF小笠原満男、岩手県大船渡市出身)が中心となり、東日本大震災で被災したサッカー少年のために何かできないかということで、東北ゆかりのJリーガーを中心に設立した団体。震災から14年が経ち、復興支援の意味合いが強かった初期とは少しずつ形を変えて活動している。復興支援や次世代育成、Jで活躍する選手が生まれることを第一に掲げつつ、社会に出てからもさまざまな形でサッカーに携わることができるような機会を設けたいとも思っていた。その一環として、今回は東北大学蹴球部と一緒に運営した。プラス学生たちが主導権を握って何かをやりたいというときに手伝えたらと思っている。

東北大との絡みは、アイリスオーヤマのスカウトとして県内の大学を回ったことだ。まさかオレが大学のキャンパスに出入りするようになるとは思っていなかったし、しかも旧帝大のトンペイ(東北大)。一番縁の無い大学だと思っていた。アポイントを取ってやりとりしている時から「若い監督だな」と思っていたら、キャプテン、つまり学生だった。実際に会いに行ったら分析班やスポンサー班も含め、学生が主体となって部を動かしていた。仙台大や東北学院大のように、組織としてしっかりしている強豪とは違う世界。とにかく新鮮だったし、すごいと思った。今春大学院に進んだ中心選手は、茨城県出身で鹿島サポーターだった。みんな大学卒業を機にサッカーから離れていく。大学サッカーを「楽しかった」と振り返る一方で、「教わることがなかったのはさみしかった」とぽつりと漏らした。そこで、何かしらの形で応援できないかと考えた。審判など、何かをやりたいという子はたくさんいる。バイト代を得ながらサッカーにも携われるということで、手始めになかのFCでの審判をお願いした。そして、交流を活性化させるためにもということで、今回の東北人魂イベントの運営を持ちかけた。まずは3人の学生に審判と準備の手伝いを通して空気感を見てもらった。

めちゃくちゃ真面目だね。そして、思いのほか不器用だった。最初は子どもたちとどうふれ合うのか分からない感じだった。大人だったら足を引っかけたとかファウルも分かりやすいけど、スピード感のないアンダー8でどう笛を吹いていいのか戸惑いながらも頑張っていた。イベントの合間には、自分たちの力でスポンサーなどを獲得し、部の活動費を増やすために必要なことをレクチャーした。勢いでオレもスポンサーになっちゃった。頑張ってほしいし、お手伝いしながら切磋琢磨していきたいね。社会人と話す機会が少ないんだろう。話さないと何も生まれないし、就職しても1人でやれることには限界がある。サッカーと同じで、仲間でやるほうがパワーも出るし大きな成果が期待できる。サッカーを通して学べることはどんどん伝えていきたいなと思っている。彼らは毎年12月に、東北大で高校2年生向けのサッカーフェスティバルをやっている。東北の進学校を集めてサッカーで交流し、さらに勉強を教えつつ進路相談にも乗る。大学生が自分たちでアイデアを出してやっている。唯一無二だよね。勉強を教えようという発想はなかなかないよね。こういうものはもっと発信して、共感し応援してくれる人を増やしていきたい。ある日の公式戦。大雨で風も強くてひどいコンディションだった。オレは約束した手前、ひどい雨の中見に行った。誰もいないだろうと思ったら、案外見に来ている人がいたし、学生の応援団は太鼓とかたたいて必死で応援していた。そうやって後押ししてくれる人もいるんだから、学生たちだけで頑張っていることも発信すればもっと注目してもらえるし、社会人になったときに違った形で役に立ったりするかもしれない。

オレからすればトンペイってとても頭のいい学生が集まるすごいところ。その上サッカーでは東北1部で戦っている。自分たちで分析し、練習してメンバーも組んで。その中でも、メンバーを決めるのはとても大変な作業だと思う。交代の判断も難しい。「教わってみたかった」、「1回でいいから全国大会に出たい」と言う彼らのために、そこのジャッジをできる人を探したいと思っている。誰だって試合に出たい。調子が悪い自分を下げる判断を自ら悩まなければいけないこと一つとっても苦労は多い。何か協力してあげたいと思うじゃん。今できることがあるとしたら、刺激をもらえるような監督、選手と一緒に成長してくれる監督を見つけてあげたい。選手と一緒に考えた上で、最終的な判断を下せる人がいてほしいなと思う。去年は強豪の仙台大相手に延長まで戦い、全国大会まであと少し、ジャイアントキリング目前まで進んだ。サッカーはそれも醍醐味だよね。みんなが夢を見ることができる。
東北人魂の活動は、もちろん復興支援もあるけれど、次世代も。小学生から対象を広げ、学生も含めて社会貢献もという形や、人材育成も見据えて今後もずっとやっていく。今回のことを満男さんに相談したら、「いいねえ、楽しそう、俺も行きたいんだけどなかなか行けないんだよな」って背中を押してくれた。東北人魂は、満男さんありきの活動だと思っているので、いつでも満男さんが参加できるようにしておきたい。宮城での活動はオレがしっかりやろうと思う。8月には3日かけてアンダー12(小学6年生以下)のカップ戦を開催する。東北大生にはワークショップも任せることになった。彼らがどんなアイデアを出してくるのか、楽しみだ。

  • 遠藤 康Yasushi Endo
  • Yasushi Endo

    1988年4月7日生まれ。
    仙台市出身。
    なかのFC(仙台市)から塩釜FC(宮城県塩釜市)を経て2007年鹿島アントラーズに加入。左足のキック精度が高く、卓越したボールキープ力も光る攻撃的MFで、10年以降は主力として3度のJリーグカップ制覇や、16年のJ1リーグと天皇杯優勝などに貢献した。J1通算304試合出場46得点。
    2022年、15年プレーした鹿島を離れ、生まれ故郷のベガルタ仙台へ完全移籍した。
    U-15、U-16、U-18の各年代で代表経験があり、15〜17年は日本代表候補に選出された。

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