AFCチャンピオンズリーグ2025/26ファイナルズの初戦、準々決勝のアルイテハド戦に1-0で勝利し、準決勝に駒を進めることができました。
現地に入ってからも西地区のラウンド16の試合は映像で観ていましたが、中東勢はどこも個の能力が相当高いことは覚悟していました。また、基本的には前線にお金をかけて強力なアタッカー、FWを抱えているチームが多いことから、90分を通して『守備』の部分でどう対応できるかも試合のカギになるだろうなと想像していました。
あとは、僕らの試合前日に行われた『ヴィッセル神戸VSアルサッド』戦でも感じましたが、西地区から出てくるチームはいずれも中2日での準々決勝に臨むため、単純に後半は走れなくなるだろうという予想もありました。事実、ヴィッセルは2点のビハインドを追いかける展開になっても試合終盤までしぶとく攻め続けることでゴールをこじ開けていたことから、僕らもできる限り失点せずに試合を進めていればどこかで必ず勝機を見出せるだろうと思っていました。
そんなふうにいろんなシチュエーションを想像してアルイテハド戦を迎えた中で、31分にテテ(イェンギ)のゴールで先制して1-0で折り返せたのは理想的でした。ただ、相手にとってはビハインドを追いかける展開になったこともあってだと思いますが、アルイテハドが後半もしっかりとギアを上げてきたのは予想外でした。
特に相手が後半の始めからステフェン・ベルフワインを投入し、シャドーに据えたのに応じて、ボランチのダニーロ・ペレイラがセンターバックに、10番のフセム・アワールがボランチに、と1列ずつ下がる陣形をとった中で、アワールとベルフワインのところでうまくボールを持たれる展開になったことで両脇のプレッシャーも速くなり、正直かなり押し込まれてしまう展開になりました。それによって逆にうちも何度かカウンターのチャンスを作れるようになったともいえますが、そこを決めきれなかったこともあり、より相手が勢いづいていった気もしました。しかも、試合の最終盤にはVAR判定によって相手のゴールが取り消されたシーンもあり…。正直、ヒヤリとしましたが、最後までみんなで耐え切れたことで勝利を引き寄せることができ、準決勝に駒を進めることができました。
思えば僕にとって、今回のファイナルズが開催されているサウジアラビアのジッタは2017年以来の場所でした。当時は2018FIFAワールドカップ・ロシアのアジア最終予選の最後のゲームを戦うべく、日本代表として足を踏み入れていました。正直、9年も前の話なので試合内容の記憶はかなり薄いですが、覚えているのは、僕らはすでに本大会への出場を決めた上での試合だったのに対し、サウジアラビアはこの試合に勝てば本大会出場を決められる状況だったこと。それもあって、国内はめちゃめちゃ盛り上がっていて、会場となったキング・アブドゥラー・スポーツ・シティーは62,165人の大観衆で埋め尽くされていたこと。何気ないプレー…しかもトラップが綺麗に決まった、とか、遠目からシュートを打っただけでスタンドがやたらと盛り上がり、それに伴って勢いづいていく独特の雰囲気も感じました。確かこの大一番を前に国王がチケットを買い占めて国民に配布したらしく、試合中、国王がビジョンに映し出されるたびにスタンドが特別な空気になっていたのも印象に残っています。結果サウジアラビアが0-1で勝利し、W杯出場を決めたため、試合後は街全体がお祭り騒ぎでした。
という記憶がありながらも正直、僕自身はそれらの経験を試合前にチームメイトに伝えることは大して有効じゃないと思っていました。もちろん「こんな感じだったよ」というくらいの話はしましたが、正直、そういった雰囲気は口で伝え切れるものではないからです。
例えば、試合前の整列の際、相手選手を初めて間近に感じた際には、体の大きさ、迫力みたいなものにウォーミングアップの時には受けなかった圧を感じることもあるだろうと思っていましたが、それも自分で体感して初めてわかることです。だからこそ、そうした経験は「相手の圧を感じる瞬間もあると思うぞ」と言うにとどめ、それよりも「ただし、試合になって、本当の圧をかけるのは俺たちだ」と強調して試合に入りました。
その中で、おそらくはみんながそれぞれにいろんなことを感じ取った準々決勝になったと思いますが、言えるのは、1つ戦ったことで得られた経験値を必ず次への学びとして活かさなければいけないということです。
例えば、試合終盤、結果的に取り消しになった相手のシュートが突き刺さった瞬間のスタンドの盛り上がり、さあここから怒涛の攻撃を仕掛けるぞ、というスタジアム全体の雰囲気は、代表戦に劣らず今回のアルイテハド戦も凄かったです。もしあのゴールが決まっていたら、自分たちが次の1点を取りに行くのは難しかったんじゃないか、という気持ちにもさせられました。
それを踏まえても、やはりこうした大会では先制できたからと言って、守るばかりではなく、追加点を取りに行くことも考えなければいけないと思います。勝ち上がるほど相手の個の質、強者ぶりがより際立っていくからこそ、わずかな隙をも見逃さない強かさはすごく大事になってきます。そんなふうに、アルイテハド戦で出た課題、経験値をもう一度みんなでリマインドした上で、次のアルアハリ戦に臨み、しっかり勝ち切って、まずは決勝に駒を進めたいと思います。
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昌子 源Gen Shoji
1992年12月11日生まれ。
兵庫県出身。
11年に米子北高校から鹿島アントラーズに加入。14年には自身初のJ1リーグフル出場を実現するなど主軸選手に成長を遂げ、16年のJ1リーグや天皇杯優勝、18年のAFCチャンピオンズリーグ制覇などに貢献した。
18年12月にトゥールーズFCに完全移籍。すぐさまレギュラーに定着するも2シーズン目はケガに苦しみ長期の戦線離脱に。その状況を踏まえてJリーグへの復帰を決断し、20年から3シーズンはガンバ大阪で、23年は鹿島アントラーズでプレー。24年はFC町田ゼルビアに完全移籍となった。
14年に日本代表に初選出。2018FIFAワールドカップ ロシア出場。






