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Vol.147 ACLE2025/26の戦いを終えて。

  • 2026.05.05

    Vol.147 ACLE2025/26の戦いを終えて。

発源力

すでにお気づきの方もいらっしゃると思いますが、AFCチャンピオンズリーグ・エリート2025/26の決勝を終えた直後に短髪・金髪にしました! 30歳を過ぎ、3児のパパだという自覚もあって、近年はどちらかというと大人のダンディな男性を目指していました。でも、アルアハリ・サウジ戦後、『悔しさ』では片付けられない感情がどうにも収まらず、宿泊ホテルに戻ってすぐに坊主にしよう! と思ったものの都合よくバリカンがあるはずもなく…。しかも、帰国した足で水戸ホーリーホック戦(J1百年構想リーグ第13節)に備えて千葉のホテルに宿泊したため、チームメイトの知り合いの美容師さんに来てもらってバッサリいきました。試合直後からずっと胸の内にあった「こんなんじゃあダメだ!」「気合いが足りねぇ!」という感情をぶつけた次第です。また、髪色は美容師さんに「カラーも入れたいです」相談したら「暗い色より明るい色の方がいいと思います」と提案されたので、どうせなら思い切った色にしよう! とシルバーにしました。ですが、紫シャンプーを使い忘れたのもあってあっという間にシルバーが抜けてしまい、すでにブリーチ前の、金髪状態に戻っています。

という髪型の説明はいいとして、とにかくアルアハリ・サウジ戦は、悔しすぎました。
正直、力の差はあったと思います。ですが相手は今大会、中東情勢の影響で西地区のラウンド16の戦いが一発勝負になったところから中3日でファイナルズの戦いに突入したこと。ベスト16も120分の戦いになり、さらに準々決勝は前半のうちに退場者を出して10人の戦いを強いられていたこと。まして、僕らとの決勝でも再び退場者を出して68分以降は僕らが数的優位で試合を進められたこと。その中では、数は少ないながらも数回、好機を見出せたことなどを総合して考えても、勝たなければいけない試合だったと思います。ただ、見方を変えれば、うちはそのチャンスをものにできず、10人になって割り切った戦いをしてきたアルアハリ・サウジはチャンスをゴールにつなげてきたことを思えば『決定力の差』は明らかだったと言えるのかもしれません。
また、僕の肌感としては相手が数的不利の状況になってからの方が戦いが難しくなった印象もありました。個の質の高さを思えば、当然11対11でも難しい相手でしたが、10人になったアルアハリ・サウジは戦い方を明確にしながら、より個の質を際立たせてきたように感じたというか。そもそも、一人で時間を作ったり、当たり前のように一人で2〜3人を振り切ることをいとも簡単にできる選手が多いチームだった中で、延長戦ではよりその『質』を活かしてプレーしていたように感じました。1つ1つの勝負の際の部分。何気ない1プレーのようでいて流れを大きく変えられるプレー精度。実際、数的不利になってからもボールを失うことを一切、恐れずにカウンターを仕掛けてきたり、いとも簡単に僕ら陣地のコーナー付近までボールを運ばれることが多かったのも彼らの『質』に対する圧倒的な自信があってこそだったと思います。

加えて、アルアハリ・サウジサポーターが作り出す『ホーム感』には想像以上の圧をかけられました。覚悟はしていたとはいえ、耳が痛くなるほどの歓声は凄まじく、判定でプレーが止まるたびにペッドボトルやライター、鍵が飛んできたり、視界を煙で遮られたり。映像では伝わり切らない独特すぎる雰囲気は、僕が過去に経験した日本代表戦以上だった気もしたし、相手はそれを完全に味方につけて戦っていました。
実際、96分の失点直後、右サイドで縦に仕掛けようとした帆高(中村)を阻止したガレーノが、その勢いのままにスタンドを煽り、さらにスタジアムが熱を上げたシーンがありましたが正直、相手の絶対的キーマンの一人にあれをさせてしまうと相手選手もスタンドも気持ちよくなるばかりで…。事実、失点を喫した後は明らかに僕らの戦いはより厳しさを増したし、結果的に成す術なく試合を締め括ることになってしまいました。

ただ、悔しさ、自分たちへの物足りなさは感じながらも、この舞台を戦えたことは…決して簡単な言葉ではまとめたくはないですが、FC町田ゼルビアにとって大きな財産になったと感じています。今回のファイナルズでの戦いでは終始、主審の笛の基準が一貫していた中で、自分たちがその『基準』をもとにどこまでの激しさを許されるのかを判断して、プレーに反映させていくのか。失点した後、よりアウェイ感が増した中でも相手の嫌がることは何で、うちはあのクラスのチームに何をすれば好機を見出せるのかを冷静に見極める力、虎視眈々と好機を見出すしたたかさみたいなものはまだまだチームとして備えなければいけないと感じました。
何より、個の質という部分で感じた大きな差もこれからの成長に活かさなければいけないと思っています。守備を預かる一人として、ラウンド16以降の5試合において、強豪相手に1失点しか許さなかったことは自信になりましたが、決勝で喫したその1失点に大きな差を感じたのも事実です。あのシーンだけを切り取っても、たくさんの「こうしておけば」「あそこを対応しておけば」という反省が残りましたが、それを僕たちはあの舞台、雰囲気でもしっかり体現できるチームに成長しなければいけません。

またサッカーはチームスポーツだからこそ、チーム内の数人ではなくピッチに立つ大多数がああいった試合を経験しているくらいのチームにならないと、もはやヨーロッパの強豪といっても過言ではないアルアハリ・サウジのようなチームを上回っていけないとも感じました。それを踏まえても、今回のファイナルでたくさんの選手があの舞台を肌身で感じ、経験を積めたことは、間違いなく僕たちゼルビアの大きな財産です。というか、この経験を忘れずに、常に基準を高く置いて自分たちのプレー、チーム力を磨き続けることで本当の財産にしていきたいです。
正直、その日常を求め続けたとしても彼らが備えている個の質の部分には追いつけないかもしれません。でも、それを積み上げようと努力を続ける以外にアジアの頂点に立つ方法はないとも思います。だからこそ、これからも愚直に日々を積み重ねて、もう一度、みんなであの舞台に戻りたいと思います。

  • 昌子 源Gen Shoji
  • Gen Shoji

    1992年12月11日生まれ。
    兵庫県出身。
    11年に米子北高校から鹿島アントラーズに加入。14年には自身初のJ1リーグフル出場を実現するなど主軸選手に成長を遂げ、16年のJ1リーグや天皇杯優勝、18年のAFCチャンピオンズリーグ制覇などに貢献した。
    18年12月にトゥールーズFCに完全移籍。すぐさまレギュラーに定着するも2シーズン目はケガに苦しみ長期の戦線離脱に。その状況を踏まえてJリーグへの復帰を決断し、20年から3シーズンはガンバ大阪で、23年は鹿島アントラーズでプレー。24年はFC町田ゼルビアに完全移籍となった。
    14年に日本代表に初選出。2018FIFAワールドカップ ロシア出場。

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