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Vol78「ベガルタユースのプレミア入り」

  • 2026.05.07

    Vol78「ベガルタユースのプレミア入り」

絶康調

photo by ©平田海雅

ユース世代の最高峰、高円宮杯U-18プレミアリーグに今季ベガルタ仙台ユースが初めて参入した。プリンスリーグのプレーオフを戦うこと8度、ようやくプレミアに上がることができた。そこで活躍した古屋くん(ベガルタ仙台FW古屋歩夢)が今季トップチームに名を連ねているのもうれしいね。プレミアでは大差で敗れた試合もあるし、シュートを雨あられのように打たれながらもスコアレスドローに持ち込んだ試合もある。横浜FCユースからは待望の初勝利を挙げた。関東1部リーグで戦う大学生たちを個々で見ていると、チームの結果ほどの差を感じない。ユース年代もプロに上がる選手は当然すごいレベルなんだけど、それほど圧倒的な力の差を感じることはない。どれだけ一方的に攻め込まれても0-0に抑えられたならいいじゃないか。勝てる試合があるならそう差はないから頑張ってほしい。プレミアはプロみたいなリーグ。学ぶこともたくさんあるだろう。ある程度強いJクラブのユースはプレミアで戦っている。そのプレミアに上がったことはクラブにとってめちゃくちゃいいこと。半面、負けないようにしようとユース年代からやってしまうと、本来の伸ばすべきところが伸びなくなる不安もある。オレの時代と違って、ユース世代の取り組みはトップとあまり変わらなくて、遠征や前泊とか、プロっぽくなっている。最もレベルの高い舞台に参加することが強化に直結するのは間違いないし、戦い続けてほしいのはもちろんなんだけど、プレミアに残らなければという思いにとらわれすぎると、育成が二の次になってしまう恐れがある。両立は簡単じゃないよね。ユースが強くてどんどんトップに選手が上がっていって、さらにトップも強いなんて理想的なサイクルができあがっているクラブはそうそうない。

分かりやすい正解はなく、常に指導者がレベルアップしていく必要がある。オレが運営しているなかのFCは街クラブ。Jクラブみたいな環境は整えられていない。それでも子どもたちがうまくなるために指導者のレベルアップを求め続けている。実際に小学校年代のサッカーを見ていて、指導者はまだまだ発展途上だと感じている。自分のエゴに子どもを付き合わせているクラブが多いのではないか。本当に上手になってほしいと思う熱量を目先の勝ち負けが上回っているように見えることが多々ある。自分のやりたいサッカーに子どもたちを当てはめている。子どもは伸びしろ無限大だ。一番大事なのはサッカーが好きという気持ちと負けたくないという気持ちを育むこと。伸び伸びとさせられない指導者が多いと思ったから、なかのFCのスタッフには強調しているけれど、それでも勝つことに執着してしまう場面はある。徐々に変えていきたいなと思っている。

先日、ジュニアを指導しているスタッフがB級ライセンスを取得するために休みを取りたいと伝えてきた。大人が知識を得て成長しようという姿勢を見せてくれたことはうれしかった。指導者がもっともっと学ぼうとする姿勢はすごく大事で、そうしないと子どもたちの成長はないと思っているので、快諾した。宮城でサッカーに携わっている人たちは、昔からみんな一生懸命サッカーに取り組んでいるものの、宮城で1位になれば満足してしまう風潮があった。高校サッカーも仙台育英が全国ベスト16入りすればたたえる。ベガルタ仙台もJ2で勝ちましたとローカルニュースになる。そこで満足せず、全国で名を売るために高みを目指し続けていくことがチームを強くする。今ベガルタユースがプレミアで勝てという話ではないよ。プレミアに上がったことはすごい。苦戦してしまうのも仕方がない。ここで周囲みんなが「よくやっている」で終わらず、勝てるようにって思えるようになることが理想だ。ただ手放しで褒めるんじゃなくて、「どうしたら勝てるだろう」ってみんなが話せるようになってほしい。ユースはトップで活躍する選手を輩出しないといけない。高いレベルに身を置きながら、選手が次々とトップに上がって活躍してようやく「育成がうまくいった」と言えるだろう。ヒデ(ベガルタ仙台MF武田英寿)や友太(ヴィッセル神戸MF郷家友太)たちは、いったんベガルタを離れて青森山田高で育っているからちょっと違う。そこが育成という言葉の難しさ。ジュニア世代から「ここで満足しちゃいけない」という意識を当事者も周囲も持ち続けることが宮城のサッカー全体の底上げにつながるだろう。

なかのFCを運営する上で大きなモチベーションとなっているのが、自分が小学校の時に「こういうチームがあったらいいな」と思うチームをつくること。大人も成長への意欲があるチームは活気がある。エラーもあるだろうけど変えているところだ。プレミアでも強豪の鹿島アントラーズアカデミーから学べることは多くて、これはと思ったことを宮城に持ち帰って伝えるようにしている。鹿島は試合もガンガンやるし、ユース年代はやった分うまくなるという哲学なのか、質より量でめちゃくちゃやる。選手は聞く前に量をこなし、やったものにしか分からない境地に達している感じだ。そして、勝ち負けにもこだわる。満男さん(元日本代表小笠原満男)やホンタクちゃん(元日本代表本田拓也)、アツ(元鹿島アントラーズMF中村充孝)が近くにいるから、指導者も彼らを質問攻めにしている。指導者がプロの経験を輸入しやすい環境があるのは大きいと思う。どのクラブだって何が正しいか模索している。答えはない、取り組み方なんだよね。ただ、成長していきたいという姿勢を見せるのだけは正解で、そこだけは間違っていない。

アカデミー世代はプロでやっていた選手から教わるとイメージが浮かびやすいことが多いと思う。その点ではベガルタからワカ(元ベガルタ仙台DF若狭大志)が去ったのはショックだったな。ワカはプレーだけじゃなくていろいろとうまかったんだよ。生きざまも含めてリスペクトに値する選手だったし、指導者としても若い。そういう存在がいなくなったのは痛いな。でもベガルタにはキンさん(元ベガルタ仙台DF菅井直樹)がスカウト兼コーチを務めているし、晋伍さん(元ベガルタ仙台MF富田晋伍)や梁さん(元ベガルタ仙台MF梁勇基)もいる。育成年代のチームに元プロ選手が関わり、みんなで成長していって、その上でプレミアに残れるよう頑張ってほしい。

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  • 遠藤 康Yasushi Endo
  • Yasushi Endo

    1988年4月7日生まれ。
    仙台市出身。
    なかのFC(仙台市)から塩釜FC(宮城県塩釜市)を経て2007年鹿島アントラーズに加入。左足のキック精度が高く、卓越したボールキープ力も光る攻撃的MFで、10年以降は主力として3度のJリーグカップ制覇や、16年のJ1リーグと天皇杯優勝などに貢献した。J1通算304試合出場46得点。
    2022年、15年プレーした鹿島を離れ、生まれ故郷のベガルタ仙台へ完全移籍した。
    U-15、U-16、U-18の各年代で代表経験があり、15〜17年は日本代表候補に選出された。

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