J2・J3百年構想リーグもいよいよ大詰めを迎えている。プレーオフラウンド第1戦で東A組1位のベガルタ仙台が東B組1位のヴァンフォーレ甲府を1-0で下し、優勝を争う第2戦の1、2位決定戦に進んだ。決勝点はヒデ(MF武田英寿)のFKがポストに当たったはね返りをマサ(DF菅田真啓)が蹴り込んだ。試合を通してヒデの左足に一番可能性を感じたね。そして、試合を終えたヒデに手応えを聞いたら「まだまだ課題がある試合」と反省していた。選手が満足してしまうとチームの伸びしろは確実に減る。ヒデの反応を見てほっとした。タイトルまであと一歩だ。
守備型の甲府相手にどう戦うか。ベガルタはハイプレスを仕掛けず引いてブロックを敷いた。暑かったから体力の消耗を抑えようとしたのかもしれない。その結果、お互いがしっかり守ってじっくり組み立てる時間帯が多くなった。ボールを奪取してすぐにショートカウンターを仕掛けるよりも、いったんボールを下げてビルドアップの確実性を選択した。両チームがそうだったこともあって、自然と展開も重くなった。今季のベガルタは攻撃から守備への切り替えがすごく速い。奪われたらすぐ守備態勢に入り、プレスを仕掛けたりブロックを敷いたりして失点を防いでいた。堅実な守備は東A組で秋田の14失点に次ぐ15失点と数字にも表れている。半面、守備から攻撃へのシフトはゆっくりだ。このタイミングでの仕掛けを増やすことが得点増への一番の近道だと思う。
ショートカウンターは得点につながる確率が高い。下がってボールをもらわず前に走れば、チーム全体が前進することができる。守備は中盤でボールを刈り取れているので、攻撃に転換した1歩目が前に向くことにより迫力を増す。速い展開でボールを失うリスクを乗り越えた先に得点シーンが待っている。やみくもにカウンター狙おうという話ではないよ。危険を冒してでも前に進む機会を増やしてみようということ。大夢(MF鎌田大夢)とヒデはそういう判断とチーム全体のスピードコントロールができるし、もっとチャレンジングなパスを出せるだけの余裕はある。すぐいくのか、キープして待つのか、いったん下げるのか。くさびを入れたり、ダイゴナルに走る選手へのパスをもっと増やしたら面白いと思う。甲府戦は荒木くん(FW荒木駿太)がめちゃくちゃいい動きで「ここに走っていてほしいよね」という場所に走り込んでいた。あそこでパスが出ていればもっと縦に速いサッカーができたんじゃないかな。それぐらい走り込む場所とタイミングが素晴らしかった。パスが通ればチームは前進できる。入ったら面白いことが起きると思わせてくれる。そこでボールを受けたら相手は嫌だよねというところに彼はピンポイントで現れていた。前線で岩渕くん(MF岩渕弘人)と中田くん(FW中田有祐)の距離が遠い時間が結構あった。2トップがずっと理想的な距離間で一緒にいるのは難しく、離れてしまうこともある。でも、荒木くんがその間に入ってくれていた。献身的な走りは攻撃に厚みをもたらす。オレは攻撃したいがために守備を頑張る選手だった。マイボールになったら「やった!攻撃だ!」と喜んでわーっと上がっていたな。案外そういうマインドが得点を呼ぶ。いくぞという選手が3人もいればショートカウンターでゴールに迫ることができるのもサッカーだ。そういう場面を増やしていけば、夏からのリーグ戦はもっと楽しみが増えるだろう。
このリーグ戦は若手を積極起用しながら勝ち続けてきた。PK勝ちも勝ちは勝ち。J1降格組の横浜FCと湘南ベルマーレが入った激戦区の東A組でダントツの勝ち点を積み、2位以下を大きく引き離すなんてなかなかできることじゃない。ここまで来たら勝って終わってほしいね。優勝すればベガルタにとって2009年のJ2優勝以来、2個目のタイトルとなる。選手が自信を得てプレーし、クラブとして成長していく上でここは取っておきたい。2018年冬、ベガルタは天皇杯決勝まで進み、あと一歩というところまで迫った。ベガルタを応援している人たちは「2位だった。惜しかった」と覚えているだろう。あの躍進は偉業だった。しかし、大半のサッカーファンは、年月がたつと優勝した浦和レッズ以外を忘れてしまう。百年構想リーグのタイトルは今回しか獲得できない。ぜひタイトルを手にしてほしい。いいチームで高い給料を得るのもいいけれど、個人的には何かを成し遂げる喜びにはお金以上の価値があると信じている。
泣いても笑ってもあと1試合。西B組を独走していたテゲバジャーロ宮崎がプレーオフラウンド第1戦でつまずいたこともあって、最後をホームのユアスタ仙台で開催できるという追い風も吹いた。マサは今季キャプテンに就任し、いろいろなプレッシャーの中で戦い続けてここまで来た。ものすごく貴重な経験を積んだシーズンで有終の美を飾ろうとしている。「若手がたくさん試合に出ている。この子たちのためにも勝ちたい。勝って自信につなげてほしい」と言っていた。精神的にも大きくなったなと感じたし、その願いをかなえてほしいと思う。
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遠藤 康Yasushi Endo
1988年4月7日生まれ。
仙台市出身。
なかのFC(仙台市)から塩釜FC(宮城県塩釜市)を経て2007年鹿島アントラーズに加入。左足のキック精度が高く、卓越したボールキープ力も光る攻撃的MFで、10年以降は主力として3度のJリーグカップ制覇や、16年のJ1リーグと天皇杯優勝などに貢献した。J1通算304試合出場46得点。
2022年、15年プレーした鹿島を離れ、生まれ故郷のベガルタ仙台へ完全移籍した。
U-15、U-16、U-18の各年代で代表経験があり、15〜17年は日本代表候補に選出された。






