半年の特別シーズンを終えて、オフに突入しました。今回は日本サッカー界にとってシーズン移行に向かう前の初めてのオフだし、6月11日(日本時間12日)には2026FIFAワールドカップ・北中米大会が開幕して連日、メディアで『サッカー』が取り上げられていることから、どことなく例年とは違うオフシーズンを過ごしています。
実は、僕自身も今回のW杯で初めてDAZNの解説にチャレンジすることになりました! DAZN的には「現役Jリーガーによる視点」で視聴者の皆さんに試合を楽しんでもらおうという狙いらしく、僕以外にも何人かの現役Jリーガーが解説を担当されるそうです。いつもなら、解説される側の立場である自分が、解説側に回るのはどこか変な感覚ですが、現役選手であるうちはW杯のような大きな大会でしかできない経験だと思いお引き受けしました。本来、3〜4試合できれば、掴めるコツや僕なりの解説みたいなものが明白になっていくかもなと思っていましたが、今回は自分のスケジュールにうまくハマるカードがDAZNで放映される6月22日の『スペインVSサウジアラビア戦』しかなかったので、その1試合とデイリーハイライトに出演する予定です。今はまだ両チームとも名前と顔が一致しない選手も多く、そこから勉強を始めているような状況ですが、なんとか視聴者の皆さんの試合を観る楽しみを膨らませられるような解説をできればいいな、と思っています。
ただし、これまで自分が人前で何かを話すような機会に恵まれた際に「この話をしよう」「この言葉を使おう」などとあらかじめ準備して臨むとうまくいった試しがなく…。基本的に、その場の空気、参加している方たちの表情を見て話す内容を決めていく方が自分なりに「今日はしっかり伝えられた」という感覚になることが多いだけに、解説でもその場のアドリブ力というか、対応力みたいなところを大事にしながら臨みたいと思います。
昨今は何かと人前で話す機会が増えたこともあって、大勢の人を前にしても過度に緊張することはなくなりましたが、若い頃は当然、緊張もしたし、話し終わった後に「もっとこれを伝えたかったな」と反省することも多かったです。
ただ、プロキャリアをスタートした鹿島アントラーズでは、たとえば、シーズン終了後のサポーターの皆さんに向けた挨拶は、キャプテンではなく選手会長がすると決まっていたため、20代前半から偉大な先輩方を差し置いて挨拶に立たせてもらう機会がちょくちょくあり…。その経験は今の自分にすごく役立っている気がします。実際、そういう場を何度か経験するうちに、つまりは『場数を踏む』たびに、よりリラックスして自分の言葉で話せるようになっていきました。
また、当時の鹿島では、シーズン前に選手がいくつかのグループに分かれてスポンサー企業への挨拶回りをするという取り組みをしていましたが、そういうシーンで目上の方やスポンサー企業の要職の方たちなどを前に話をさせていただいたことも『人前で話す』上ではすごくいい経験になっていたように思います。そんなふうにサッカーには直接的に関係のない場所で他の方が話す言葉を耳にして衝撃を受け、話し方、伝え方、を工夫するようにもなっていった自分もいました。
その衝撃を受けた一人が、鹿島のフロントスタッフだった秀樹さん(鈴木)です。現在は、鹿島の取締役副社長を務められている秀樹さんは当時、クラブの取締役をされていて、経営や事業を統括する立場にあった方でした。その秀樹さんと一緒に初めてスポンサー企業を訪ねたときのことは今でも印象に残っています。
僕が22〜23歳の頃、秀樹さんも一緒にあるスポンサー企業を訪問した際、自ら「僕に喋らせてください」と志願して話をさせていただいたことがありました。自分としては目上の方たちを前に、これから始まるシーズンに向けた決意表明と、応援していただくことへの感謝など、ある程度はしっかりと伝えられた気でいました。でも、僕の直後に挨拶に立たれた秀樹さんの話を聞いて、あまりのうまさに愕然としました。ユーモアもあって笑いもとるし、僕が聞いたことのないような四字熟語を織り交ぜながら、どんどん社員の方たちを話に引き込んでいく姿はめちゃめちゃ格好良く、しっかり伝えられた気でいた自分を恥ずかしく思ったくらいでした。その時に、秀樹さんに「すごいですね! どうやったらあんなに上手く話せるんですか?」と尋ねたところ「慣れだよ、慣れ!」と返ってきたのもよく覚えています。
もっとも、それ以来、僕もそれなりにいろんな場数を踏んできたつもりですが、あの時の秀樹さんほどうまく話せるようになったとは思えず…。唯一、うまく自分の思いを伝えられた! という達成感があったのは、自分の結婚式で挨拶をした時くらいです。いや厳密に言えば、その時も、僕の後に挨拶をしてくれた父の話がうますぎて、そっちの方が印象に残ったんじゃないかと思った記憶もあります(笑)。それでも大人になるにつれ、場数を踏むにつれて以前よりは自分の考えをしっかりと伝えられることが増えたんじゃないかとは思います。
これは、「話すことが仕事ではないんだから、うまく話せるようになる必要はないでしょ」と開き直れるようになったのが良かったのかもしれません。実際、今もキャプテンとしてチームや仲間に向けて話をする機会は多いですが、いつも大事なのはうまく話すこと以上に、しっかり考えを伝えることだと自分に言い聞かせて話をしています。
だからこそ、今回、初めて経験する解説も、僕なりに感じたことをしっかり伝えられる機会になればいいなと思っています。あとは福田正博さんとダブル解説の予定なので、百戦錬磨の福田さんに学びながら、助けていただきながら、できるだけわかりやすく、自分の言葉で伝えることを心がけようと思います。いや、せっかくの機会なので少々自由に、ぶっちゃけてしまうのもアリか?! とも思っていますが、視聴者の皆さんはどんな解説を望まれるのかぜひ聞いてみたいところです! それも参考にしながら、僕自身もその時間を楽しもうと思っています。
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昌子 源Gen Shoji
1992年12月11日生まれ。
兵庫県出身。
11年に米子北高校から鹿島アントラーズに加入。14年には自身初のJ1リーグフル出場を実現するなど主軸選手に成長を遂げ、16年のJ1リーグや天皇杯優勝、18年のAFCチャンピオンズリーグ制覇などに貢献した。
18年12月にトゥールーズFCに完全移籍。すぐさまレギュラーに定着するも2シーズン目はケガに苦しみ長期の戦線離脱に。その状況を踏まえてJリーグへの復帰を決断し、20年から3シーズンはガンバ大阪で、23年は鹿島アントラーズでプレー。24年はFC町田ゼルビアに完全移籍となった。
14年に日本代表に初選出。2018FIFAワールドカップ ロシア出場。






