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Vol82「モトの復帰」

  • 2026.07.02

    Vol82「モトの復帰」

絶康調

ワールドカップで日本がブラジルに敗れた。前半良かったし、後半もまあまあ、勝てるじゃんって思って見ていた。1-2という結果になっちゃったけど90分ずっと良かった。親善試合と本番は違うということをひしひしと感じたね。試合の最初の入りも日本はプレスにいっていたのにボールを握られた。奪ってもすぐプレスをかけられた。去年3-2で勝った親善試合だと、あのスピード感はなかったな。

ブラジルはやりづらかっただろうな。佐野海舟選手の先制点は、奪ってからシュートまでがすごかった。決めてやるという強い意志が伝わってきた。「打って終わって」という感じで見ていたこちらもテンション上がったね。後半になるとブラジルはどんどん放り込んできた。いいFWをシンプルに使ってくるのはうざいし、それでやられた。中でつないでもうまくいかないからシンプルに狙ってきた。本当はくさびを入れたりサイドを崩したり、細かくパスをつないで得点したかったんだと思う。GKの鈴木彩艶選手は、どんだけ止めるんだよって感嘆するぐらいすごかった。最後にやられたシュートにも触っている。まだ23歳だというから末恐ろしいよね。結果として負けたのには何かしら原因があって、やっている人にしか分からないところがある。それを次にどう生かすのか。これから競争が始まる。次は誰が出てくるのかなって。三笘薫選手はけがで招集されず、遠藤航選手は直前に離脱、久保建英選手がグループリーグでけがをして、心臓部分が3人欠けていながらあれだけ戦えた。ベスト32だから前回より結果は伴っていないとはいえ、確実にレベルが上がっている。あんなに献身的に11人が守備する国はそうそうない。しっかり二度追いもするし。堂安律選手と中村敬斗選手という中盤の攻撃的な選手がウイングバックでしっかり守備しつつ攻撃でも存在感を発揮したのは、もちろん2人の能力もあるけど、日本の強さにつながっていたと思う。3バックの守備的なイメージを覆す活躍だった。オレは代表でプレーしたこともないから偉そうには言えないけど、確実にレベルが上がっている分、今回はベスト8以上にいけると感じていたから、目に見えた結果が見たかったというのも本音としてある。

やっぱりワールドカップは盛り上がる。フランス、ブラジルを追っていこうと思う。アルゼンチンもメッシが気になる。優勝候補にはそういう華のあるスター選手がいる。日本もそういう位置付けだったのが三笘選手や久保選手だった。けがした張本人が一番悔しいだろうけど、いたらどうなっていたんだろうっていうのは超気になる。たらればになっちゃうけどさ。最後に田中碧選手が奪われて失点したシーンは責められないよ。オレがジュニアに教えているときも、取られてもいいからなるべくつなぐように教えている。ただクリアするのは簡単。ああしてずっと圧力かけられている中でも勝ちにいくためには、ボールをつないで攻めなきゃいけない。田中選手にもクリアという選択肢はあっただろう。それでも、勝つために握って前進しようとしたんだから。
そして、ワールドカップの熱狂のさなかにモト(セレッソ大阪FW中島元彦)がベガルタ仙台に完全移籍することが決まった。これはベガルタにとってめちゃくちゃいい補強だ。J1百年構想リーグでWESTの優勝争いをしていたセレッソで、主力として試合に出ていたモトが、だ。仙台でやりたい思いもずっとあったんだろう。モトから「仙台にいきます」って電話が来た時、思わず「早くない?」って返しちゃったよ。J1で活躍していた選手がJ2のクラブに来るというのは、ベガルタの魅力や愛着ももちろん、相当な思いがあったんだろう。J1で、海外で、代表でってなるとなるべく上のレベルでやりたいと思うのが選手のさがだ。モトが帰ってきたからって簡単にJ1へ上がれる保証はない。百年構想リーグを制しても「今年上がるのは間違いなく仙台だろう」というほどの絶対的な強さはまだ身に付いていない。厳しい戦いに自分を追い込んで来ている。セレッソ時代よりもっと結果を残さないといけない。モトにとって勝負の年になるだろう。

今さら何をという感じになるかもしれないが、改めて。モトはサッカーIQが高くて経験も抱負だ。そして、センターバック以外ならどこでも戦える。一番武器になるのがミドルシュートだ。ベガルタはミドルシュートが少ない。その点モトは左右どちらでも蹴ることができる。これは飛び道具として相手にとってかなりやっかいだ。一つミドルがあるだけで相手の対応は違ってくる。得点はもちろん、相手DFが寄せざるを得ないというのは大きい。それによってFWもボールを受けやすくなるからね。さらに、勝ちたいという欲もチームを引っ張りたいというメンタリティも、オレが仙台時代に見てきた中で最も強かった。キャプテンじゃなくてもキャプテンらしい発言にも現れていた。前はちょっとやんちゃだったけど、セレッソでいろいろと感じるものがあったんだろう。モトらしいチームの引っ張り方をしてくれるんじゃないかなと期待している。これで練習からのポジション争いが激化するのがいい。誰が出てくるのか楽しみだ。本当のポジション争いが始まる。ベガルタは五十嵐くん(DF五十嵐聖己)と石井くん(DF石井隼太)という、従来のサイドバック系ウイングバックがいる。そこで竜(MF相良竜之介)が中村選手みたいなウイングバックを務めるのもありじゃないかと思う。堂安選手だってモトがウイングバックをやっているイメージに近かった。新しいウイングバック像だよね、こういう発想があるんだって思った。

モトが帰ってきてみんな喜んでいる。モトはやれる。期待値はとても大きい。けれど、モト1人にいろいろ背負わせないでほしい。サッカーはチームスポーツだ。勝てばモトのおかげ、負けたらモトのせいという風にならないようベガルタを応援していこう。

病気療養中の北畠泰之社長の退任が、29日の取締役会で決まった。ご快復をお祈り申し上げます。

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  • 遠藤 康Yasushi Endo
  • Yasushi Endo

    1988年4月7日生まれ。
    仙台市出身。
    なかのFC(仙台市)から塩釜FC(宮城県塩釜市)を経て2007年鹿島アントラーズに加入。左足のキック精度が高く、卓越したボールキープ力も光る攻撃的MFで、10年以降は主力として3度のJリーグカップ制覇や、16年のJ1リーグと天皇杯優勝などに貢献した。J1通算304試合出場46得点。
    2022年、15年プレーした鹿島を離れ、生まれ故郷のベガルタ仙台へ完全移籍した。
    U-15、U-16、U-18の各年代で代表経験があり、15〜17年は日本代表候補に選出された。

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