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Vol83「ベガルタ女川キャンプ」

  • 2026.07.16

    Vol83「ベガルタ女川キャンプ」

絶康調

ベガルタ仙台が宮城県女川町でキャンプに入り、8月のJ2開幕に備えている。夏といえば昔はミニキャンプっていうのが定番だった。なるべく暖かいところを求めてじっくり取り組む冬とは違って、リーグ戦の中断期間に体をつくってもう半年戦う準備をするというものだった。鹿島アントラーズも中断期間がなくなるまで毎年Jヴィレッジでやっていたから、懐かしかった。寒くないからけがをする不安が少ないのはいいよね。体がある程度暖まった状態でプレーできるのは強みだよ。鹿島時代に1度だけ宮崎県でミニキャンプをやった記憶がある。セレーゾ監督のときだったか。大雨と台風でほとんどサッカーができなくて、雨の中走ってばかりいた。「どしゃぶりじゃん」「サッカーできないじゃん」って話していたな。

14日はアイリスFCとの練習試合だった。ベガルタは百年構想リーグでやれていたフォーメーションに手応えを得ていて、完成度が高かった。チームとしての成長はビルドアップのところに感じた。一つひとつ考えずにプレーできている。以前は「ここでパスして」「ここで降りてきて」とか常に指示が飛んでいた。今はゴリさんのサッカーが溶け込んでいるから、もっともっと細かいところを追求しているようだ。ただし、キャンプでいいからといってリーグでの結果につながらないのもあるあるなのよ。しかもベガルタは百年構想リーグで優勝し、他のチームからは確実に対策されるところで、それを上回る完成度と個人の力で勝っていかないといけない。ゴールの前の得点は戦術ではなくて個。そこを選手たちがいかに高められるかというのが今年の課題になってくる。土台ができてきているからこそ、そこにフォーカスして磨いてほしい。絶対にそこが必要になる。

ベガルタとは去年も練習試合をした。今年はアイリスもメンバーが替わってもうちょっとやれるかなと思ったけど、全く歯が立たなかった。Jクラブとやれる世界線はなかなかないから、貴重な機会。ひとつの寄せとか切り替えの速さとか、若い選手に植え付けていかないといけないと分かっただけでも収穫だった。明確な目標を掲げてチームをマネジメントし、モチベーションを上げていくためにしっかりやるべきことはやらないと。ただ選手だけ集めてもうまくいかない。アイリスでの成長がないと意味がない。先日は東北1部のチームに僅差で敗れた。アイリスが2部とはいえ、オレは勝てると思っていた。能力よりもモチベーションの差だったと思う。ベガルタはそういうことを感じさせてくれるチームになっていた。J1を目指すとなると、置いて行かれる選手も出てくるだろう。そういう環境をつくらないと強くならない。ベガルタはそういう目標があるから完成度も高いし強かった。

帰ってきたモト(FW中島元彦)もなじんでいた。フィットするのに時間がかかると思ったけど、さすがモト。ゴリさん(森山佳郎監督)もモトに期待していて、今のところは自由にやらせている感じだったな。モトは一回り大人になった感じだった。勝たせたい気持ち強いんだな、覚悟決めてきたんだなっていうのは見ていても話していても分かる。中盤の主力たちを見ていると、いつ試合してもいい感じが伝わってくる。ふんわりとした空気の中で始まるキャンプもあるし、ゼロからつくり直すチームも多い中で、ベガルタはオフ期間にもしっかり体をつくって臨戦態勢に入っているようだ。これはいい。戦闘モードになっていないと感じたキャンプの一つは、オレが加入した2022年のベガルタだった。J2に落ちてきたのになんでこんなにのほほんとしているの?と思った。全体的に危機感が足りないと感じたから、当時の若手をできるだけあおるようにしていた。ただ、その時にぴりついた雰囲気に持っていけなかったり、結果を出せなかったりしたのは自分の力不足だったと反省している。今年に懸ける思いが伝わってくるのは選手だけじゃない。スタッフ含めての空気感もできあがっていた。普通2~3年やったら人間は環境に慣れてしまう。でもゴリさんの熱い感じは年々増すんだなって衝撃を受けた。勝負の年だからっていうのもあるだろうけど、ゴリさんはとにかく年々熱くなっている。

ゴリさんとモトと3人で話した。ゴリさんはモトを信頼しているんだなという感じはひしひしと伝わってきた。獲得にそれだけの金額を払っているしね。J2からJ1に上げるのとJ1で戦えるのはイコールではないというか、その時点では未知数なところがある。その点モトはJ1で活躍したからさらに高く評価された。そういう意味でもモトはいったんセレッソに行って良かったと思うよ。そして、モトのベガルタに対する愛情だよね。セレッソで育ってセレッソを愛していたけど、仙台でのファンやスタジアム、J1昇格を逃した悔しさという記憶がものすごく大きな影響を与えたんだろうね。決意表明の移籍で、今年駄目だったら次がないというくらいの危機感が伝わってきた。あのモトが静かに「今年はいきますよ」って言うんだよ。ずしっとくるよね。やっぱり、性格的に背負い込んじゃうんじゃないかっていうのは良くも悪くも感じたな。モトもうまくやるようにはするだろうし、ゴリさんのマネジメントも楽しみ。どこでもやれるモトをどう使うかによって、チームの戦い方も変わってくるだろうと思う。それにしてもFWが多い。アイリスに貸してくれないかなと思ってしまった。全く試合に出られないのは選手にとって良くない。練習しないとうまくならないし、かといって練習は試合のためにやることだからね。

そんなキャンプの中で、ケイト(MF有田恵人)が復帰しサッカーしている姿を見れたのはうれしかった。ケイトの良さをみんな分かっていて、そして、いいところでけがしてしまうのが残念だった。ケイトはリハビリを一緒にやっていた仲間だ。応援がてら「あれだけ離脱していたら普通クビだけどね」と煽ったら「今年頑張ります」って笑っていなされた。いい表情だった。試合に出て走り回るケイトを楽しみにしている。

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  • 遠藤 康Yasushi Endo
  • Yasushi Endo

    1988年4月7日生まれ。
    仙台市出身。
    なかのFC(仙台市)から塩釜FC(宮城県塩釜市)を経て2007年鹿島アントラーズに加入。左足のキック精度が高く、卓越したボールキープ力も光る攻撃的MFで、10年以降は主力として3度のJリーグカップ制覇や、16年のJ1リーグと天皇杯優勝などに貢献した。J1通算304試合出場46得点。
    2022年、15年プレーした鹿島を離れ、生まれ故郷のベガルタ仙台へ完全移籍した。
    U-15、U-16、U-18の各年代で代表経験があり、15〜17年は日本代表候補に選出された。

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