Jヴィレッジで行われたベガルタ仙台と鹿島アントラーズの練習試合をじっくり見させてもらった。鹿島がJヴィレッジでキャンプするのはずいぶん久しぶり。昔は毎年のようにJヴィレッジでキャンプしていたから浩二さん(中田浩二フットボールダイレクター)とも「懐かしいね」って話した。秋春制以降で夏にシーズン前のキャンプをするようになり、どのクラブも探り探りと聞いた。東西南北いろいろなところでやっている。来年からどうなっていくんだろうね。
さて、練習試合は計3本。オレが予想していたよりベガルタはチャンスをつくった。特に1本目立ち上がりは、先制されたとはいえベガルタが強かった。ベガルタのような3-1-4-2っぽい特殊なフォーメーションのチームはそう多くなく、鹿島も最初は戸惑ったんだろう。鹿島が守備の狙いを定められないうちに決定機を2本ぐらいつくった。そこで決め切れていればまた違っていたと思う。しかしそこはさすが鹿島、20分ほどでしっかり4-4-2のままアジャストされて、抑えられるようになった。ベガルタがやられたイメージの中でも、ところどころカウンターからチャンスはつくれていた。そこで決められないところやパスの精度に昨季J1王者との差を感じた。その中でも1本目に出ていたヒデ(MF武田英寿)とレンジ(MF松井蓮之)はすごく頑張っていて、なんとか爪痕を残そうとしていた。特にレンジは守備を1人でやっていたかのようだった。ベガルタは鹿島のボールホルダーに誰もいけず守備ではめられなくて、気持ちよくボールを回されている感じ。それでもアンカーのレンジは単独で奪ってカウンターにつなげていた。今年のベガルタは中盤の競争が激しい。去年中心になったヒデ、大夢(MF鎌田大夢)、レンジにモト(FW中島元彦)や浅倉くん(MF浅倉廉)も入った。それでも核はレンジになるんだろうとオレの勘が言っている。いくら攻撃的にやるとしても、ああやって守備で締める選手がいないとね。レンジは結構気合入っていたらしく、「強度が高く全然通用しませんでした」と悔しがっていた。でも「公式戦よりいい試合」と得たものも多かったようだ。レンジは強度でひけをとっていた感じはしなかったけどね。レンジか相手のミスでしかボールを奪ってないんじゃね?ってくらい頑張っていた。
2本目になってモトや大夢が出てきた。鹿島はけが人多くて若手が多く出ていた。圧倒というほどでもないにせよ、ベガルタは終始相手陣地でサッカーしていた。ただ、これというチャンスがつくれなかった。最後の最後の質が足りないサッカーだったな。モトと大夢は自信持って堂々と渡り合っていたし、左WBに入った石井ちゃん(DF石井隼太)がすごく良かった。本人がというよりは、石井ちゃんと絡んだ選手がいいプレーをしていた。それってすごくいいことなんだよ。攻撃がすごくスムーズで、本人の良さが周りに伝わっていた印象がある。左利きだから縦に行ってそのままクロス上げられる。左利きなら誰でもって思うかもしれないけど、スピードに乗ったままそのまま上げられるのは強みだ。スピードを上げた状態だとクロスの質が下がるとかありがちなんだけど、質を落とさずクロス上げられるしパスも出せるし、中にも入っていけるのはいいね。
心配なのはベガルタの守備。1本目は自陣の守備が整備されていなかった。2本目はそもそも自陣の守備機会が少なくて、修正できたのかも分からなかった。ここが今季のキーになりそう。うまくいけば攻撃にもスムーズに移行できるからカウンターもはまる。1本目を見た感じだと後ろからの声がけがちょっと少なかった。レンジも1人で奪いにいける強さはあるんだけど、周りの動かし方に課題を残している。そういう意味ではずっと攻めていたアイリスFCとの練習試合のときには見えなかった課題が浮き彫りになる貴重な機会だったと思う。
1本目の鹿島の修正点は、パスの出どころの抑え方。SBの裏を突くのが仙台のフォーメーションの肝で、そこのずれを修正してWBを誰が抑えるかをはっきりさせてパスの出どころを減らし、ベガルタを抑え込んでいた。それを試合の中で修正しちゃえるのが鹿島の強さの一因。あのシステムの仙台とやるのは初めてだろうに、しっかり抑えて自分たちのゲームに持っていけるんだからすごいよ。そこでベガルタが1点取れていれば違う。点を取れるFWがいるかどうかが大事になる。それがモトなのか岩渕くん(MF岩渕弘人)なのか宮崎くん(FW宮崎鴻)なのかが見えなかったかな。ますますモトをどこで使うんだろうか興味が高まった。どこでもできるから。それが良さでもあるし、逆に言うと核になる人が定まっていないとも言える。今は自由にやらせている感じ。モトは「中盤だったらアシスト、FWだったら点取るんで」って心強いこと言っていたから、両方やってもらおう。そしてモトが若手に対する細かいところの指示が優しくなっていた。「左に出して」とか。「まるーく言えるようになりました」ってドヤっていた。シーズンが始まっていつまで続けられるのかと楽しみにしている。
収穫も多かった中で最後の3本目が問題だ。前線がほぼユースの鹿島に0-3負けちゃったんだよね。「鹿島のユースが強い」で済ませていいものなのか。プロの若手が高校生にちんちんにやられたことを重く受け止め危機感を持たなければいけない。そりゃ鹿島が有力選手を集めているから強いのもあるよ。でも、それだけじゃない。鹿島ユースは試合前日でも走り込んだり、まだこんなに練習するのって思うくらいボールを追い掛けたりしていて、それが球際の強さにつながっている。現状に満足せず前進するためには、相手のいいところを吸収してこちらの強みにするぐらいの姿勢で取り組んでいってほしい。
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遠藤 康Yasushi Endo
1988年4月7日生まれ。
仙台市出身。
なかのFC(仙台市)から塩釜FC(宮城県塩釜市)を経て2007年鹿島アントラーズに加入。左足のキック精度が高く、卓越したボールキープ力も光る攻撃的MFで、10年以降は主力として3度のJリーグカップ制覇や、16年のJ1リーグと天皇杯優勝などに貢献した。J1通算304試合出場46得点。
2022年、15年プレーした鹿島を離れ、生まれ故郷のベガルタ仙台へ完全移籍した。
U-15、U-16、U-18の各年代で代表経験があり、15〜17年は日本代表候補に選出された。






