サッカー専門トレーナーX
J1チーム専属トレーナーを経て独立し、現在Jリーガー・欧州プロサッカー選手たちを中心に様々な種目のトップアスリートのパーソナルサポートを展開。これまで国内外のプロサッカー選手、約200名のコンディショニングに関わってきた経験をもとに、コンディショニングを多元的に追求し続けています。
前回は痛みの基礎知識について知ってもらおうと、様々な痛みの種類を専門的な用語も交えてお話ししたので少し難しかったかもしれません。
今回からは痛みの本質の部分をできるだけわかりやすくお伝えしていこうと思いますので、お付き合いください。
「で、なんで痛いの??」
まず、ケガの初期は「炎症を起こしているから痛い」のですが、それ以降の痛みは「酸素不足だから痛い」のです。
酸素不足って??
私たちのカラダは60兆個の細胞で構成されていますが、それらの細胞は全て、酸素をエネルギー源にして活動しています。以前にもお話ししましたが、酸素がなければ生命は5分と持ちません。私たちが生きる上で最も必要なものは酸素なのです。
ですから、カラダは酸素がくまなく全身に行き渡っているかにとても敏感です。
それを踏まえて話を『痛み』に戻します。
ケガをした箇所は、細胞組織の損傷が起きると同時に細胞の修復が始まります。
その細胞の修復には酸素が必要で、その酸素は呼吸から血液に取込み、血管を通じて全身の細胞に送り届けられます。
『痛み』の原因が酸素不足にあることを、ふくらはぎの肉離れを例にしてお話ししていきましょう。
肉離れをしたら、まずMRI画像検査を行うのですが、その際、白く写っているところは筋肉組織内の血管が切れ、出血している状態を示しています。この出血の量や範囲に応じて、全治何週間か診断されるのが一般的です。
筋肉内の血管が切れているということは、その付近の細胞に酸素の供給が絶たれていることを意味します。また、血管のあるところには必ず神経繊維も存在していますが、神経は最も酸素を必要とする組織とも言えます。
なのに、肉離れにより血管が壊れて酸素の供給が悪い状態(=酸素不足)になると、神経はめちゃくちゃ焦ります。
神経に意思があるとしたなら、
「酸素が少ない! ヤバい! 緊急事態だー!!」
とテンパり、前回の話に出てきた経路を伝って脳に「司令官! 酸素不足です!」と伝達します。
すると司令官は、
「ふくらはぎの神経でなんらかの問題が発生しているとの連絡がきた! よし、痛みの信号を発生させてカラダの持ち主に知らせよう!」と、痛み発生のスイッチを押し、カラダの持ち主に対処するように知らせます。
そうすると、
カラダの持ち主が、ズキン! と痛みを感じ取り、
「痛いから病院に行ってみよう」
となるのです。
これが、ケガの初期における痛みが酸素欠乏によって起こる仕組みです。次回は、ケガの初期ではない時の酸素欠乏による痛みについてお話しします!