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Vol.2 サッカーというスポーツ

  • 2020.04.23

    Vol.2 サッカーというスポーツ

BRAIN〜ズミの思考〜

サッカーは「判断のスポーツ」である。
ボールを受けた選手はトラップするのか、ドリブルをするのか、パスをするのか、シュートを打つのか。ボールを持たない選手は止まるのか、走るのか。選手はいつ、どこで、何をするのかをそれぞれが判断して決断し実行する。
と同時に、サッカーは「ミスのスポーツ」でもある。
トラップやシュート、パス、ドリブルなどの技術的なミス。前へ行くべきか下がるべきか、動くべきか止まるべきか、パスするべきか、シュートを打つべきか。試合中は何度も判断のミスが起きる。
良い判断をし、ミスを減らすことが試合に勝つ確率を上げ、良い判断ができ、ミスの少ない選手が良い選手だと僕は考える。
そして、実際ピッチ上で判断するのも、ミスをするのも選手であり、監督ではない。だから監督は、選手がピッチの上で良い判断ができ、ミスをなるべく減らすことができるように、日頃のトレーニングを課し、ミーティングを重ねるのだ。
過去、自分が指導を受けた監督の中には、まるでコントローラーを手に持ってサッカーゲームをしているかのように常に「右にいけ!」「ここにパスしろ!」「シュート打て!」「クロスを上げろ!」などと言い続ける監督もいた。もちろん指示として必要な面もあるはずだが、選手の判断を奪うような指示を出し続けるのは、選手にとってはストレスだし、何より、プレーすることを楽しめなくなってしまうと思う。名古屋時代に仕事を共にしたドラガン・ストイコビッチ元監督が言っていた。
「ゲーム(試合)はご褒美だ」
厳しいキャンプの時期を経て、練習を重ね、週末にやってくるゲームは選手にとっては一番楽しいご褒美のような瞬間だ、と。だからピッチに立つ選手は楽しめ。
「Enjoy play!」
そしてこうも言っていた。
「技術的なミスが出るのは仕方がない。だが、戦術的な(判断の)ミスはダメだ」
と言っても、ピッチ脇でパスミスやトラップミスに一番怒鳴り、キレ散らかしていたのは彼だったが(笑)。

どんな良い監督や指導者でも技術的なミスを0に近づけるのは難しい。ただ、判断のミスは0に近づけることはできる。なぜならその判断ミスというのは、監督が示す判断の基準やチームのスタイルによってミスになったりミスではなくなるからである。
例えば、サイドの深い位置までボールを運んで行ったとする。その時ボールを持った選手は、クロスを上げるか上げないかの判断を迫られた。サイドからの攻撃をスタイルとしているチームならクロスを上げることが正しい判断かもしれないが、それをスタイルとしていないチームであればクロスを上げることが判断ミスになることもある。
今、僕が監督として指導、指揮を執るうえで心掛けているのは、選手が判断するための基準、チームのスタイルを明確に提示し、選手が楽しんで、思い切ってプレーできるよう判断を奪わないようにすることだ。そして、サッカーの主役であるピッチでプレーする選手が、サッカーというスポーツは「楽しむもの」だということを忘れないように働きかけていきたいとも思っている。

今、新型コロナウイルス感染症の蔓延により、サッカー界は全カテゴリーにおいて公式戦が延期になり、さらに練習も自粛しているクラブがほとんどです。練習も試合もできないこの期間は、僕にとって、選手にとって、応援してくれるファン・サポーターの皆さんにとって、サッカー界に携わる全ての方々にとって、とても辛く苦しくストレスの溜まる日々だと思います。
でも、この辛く苦しい時期を乗り越え、迎える事ができたその『ご褒美』とも言える試合の日は、いつも以上に楽しく素晴らしい日になるのは間違いありません。1日でも早くこの事態が収束に向かうよう、それぞれが意識を高く持ち、行動していきましょう。
心から願います。早くサッカーのある日常が戻ってきますように。

  • 小川 佳純Yoshizumi Ogawa
  • Yoshizumi Ogawa

    1984年8月25日生まれ。
    東京都出身。
    07年に明治大学より名古屋グランパスに加入。
    08年に新監督に就任したドラガン・ストイコビッチにより中盤の右サイドのレギュラーに抜擢され、11得点11アシストを記録。Jリーグベストイレブンと新人王を獲得した。09年には、かつてストイコビッチも背負った背番号『10』を背負い、2010年のリーグ優勝に貢献。17年にはサガン鳥栖に、同年夏にアルビレックス新潟に移籍し、J1通算300試合出場を達成した。
    20年1月に現役引退とFC TIAMO枚方の監督就任を発表し、指導者としてのキャリアをスタートさせた。

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