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Vol.34 集中力を持続させる『声』。

  • 2021.08.17

    Vol.34 集中力を持続させる『声』。

発源力

©GAMBA OSAKA

Jリーグ再開後の『15連戦』も半分を過ぎ、8月13日の清水エスパルス戦で9試合目を数えました。
これだけの連戦を戦うのは初めてという中でここ最近、特に感じ始めているのは体の疲れ以上に、頭の疲れのような気がします。試合が終わって、中2〜3日で次の試合に向けて頭を切り替え、対戦相手の情報をインプットし、対策を脳に刷り込ませて試合を迎えるという毎日がAFCチャンピオンズリーグから数えると、もう2ヶ月以上続いていると考えれば当然かもしれませんが、試合中、どんなに集中しているつもりでも、自分の意図しないところでふと集中力が欠けてしまっていたり、頭で考えるプレーイメージと体の反応が繋がらなかったり。気を抜いているとか、集中していないということとは別次元の状態に瞬間的に陥ってしまうことが試合の所々で見受けられます。直近の清水エスパルス戦でも、正直、自分の気づかないところで、スッと集中力が切れてしまったとか、瞬間的に足が止まってしまったということが僕自身にも、他の選手にも起きていました。
ただ、それでも局面で一歩足が出たとか、押し込まれた展開を耐え切れたとか、一度は対応が遅れたけどそのあともう一度、続けてプレッシャーに動けたのは、周りの『声』によるところがすごく大きかった気がします。僕も試合中、後ろにいるヒガシくん(東口順昭)の声にハッとさせられたり、「声」のおかげで反射的に体が反応できたシーンもありました。実際、シュート数としては14本打たれたという記録が残りましたが、枠内シュートはそう多くなかったのも、相手のシュート精度云々ではなく、仲間の「声」に助けられ最後のところで踏ん張れたからだと受け止めています。
そのことからも、改めて『声』の大切さを感じていますし、自分自身も、どんなに体が疲れていても「声」を休ませてはいけないとも思います。
「クリア!」
「後ろから来てるぞ!」
「集中!」
短い単語でも、人の体というのは瞬間的に音に反応します。皆さんも例えば授業中、集中力が途切れて眠くなってきた時に先生の大きな声に、体がビクッと反応して目が覚めたとか、イヤフォーンで何かを聞いていて、急にボリュームが大きくなった時に頭の中がシャキッとしたという経験をしたことがあるのではないかと思いますが、「声」にもまた一瞬にして集中力を戻させる力があります。
もちろんサッカーにおいては、そのボリュームやタイミングも考えなければいけないし、闇雲に出していれさえすればいいのかといえばそうではありません。必要な時に、必要な声を出すこと。そして、それがきちんと届くように、伝えようとすること。90分を通して声を出し続けるのは決して簡単ではないですが、それによってチームにピリッとした空気を流すこともできるし、チームメイトの集中力だけではなく、自分の集中力を保つことも可能になります。そう思うからこそ、ここからさらに疲労が溜まっていく連戦でもより意識して『声』を心がけたいし、それをチームの勝利に繋げられるものにしていきたいと思っています。
先に書いた清水戦では、特別指定選手として加わった山見(大登)が素晴らしい決勝ゴールを決めてくれました。この連戦が続いている状況下、僕らは日々、リカバリー、移動、試合、という毎日で練習はほとんどできないし、当然ながら山見とも一緒にゲーム形式の練習をやったことはありませんでした。つまり、6月の天皇杯、関西学院大学戦での対戦時に見た山見のプレースタイルだけを頭に置いて試合を迎えた状況でしたが、関学で魅せていたプレーを山見が臆さずにそのまま示してくれたことにも助けられ、あのシーンが生まれました。
その中で改めて彼の魅力だと感じたのは、ゴールシーンも然り、味方がボールを蹴る前から味方を信じて裏に走り出していたこと。今のガンバはどちらかというと、足元で受けるタイプの選手が多いだけに、彼のスタイルは新たな武器になるんじゃないかと感じました。実は、あのシーンについて僕は山見がボールを受けた瞬間、中を見ながらドリブルをしていたことから「レアンドロ(ペレイラ)の戻りが間に合っていたらクロスボールを選択するつもりだったのかな」と思っていました。でも、試合後の山見によれば「最初からシュートのことしか考えていなかったです」とのこと。その度胸も素晴らしいなと感じました。ここ最近の裕二(小野)も然り、途中からピッチに立った選手があんな風に流れを一変させてくれるほど、心強いことはありません。
ただ、山見はすでに21歳です。厳しいようですが、ガンバのユニフォームを着ている時点で、大学在学中であるということは関係ありません。ある意味、高卒でプロになった選手なら4年目にあたると考えても、むしろ、今回の活躍に驚くのは本人に失礼な気もします。もっとも、彼も近くで、高校2年生でプロデビューをし、高校3年生でレギュラーに定着した貴史(宇佐美)という怪物の存在を感じているはずなので、慢心はないはず。デビュー戦の衝撃によって一気に上がった自分への期待値をいいプレッシャーに、力に変えて、これからもチームを勢いづけてくれると信じています!

  • 昌子 源Gen Shoji
  • Gen Shoji

    1992年12月11日生まれ。
    兵庫県出身。
    11年に米子北高校から鹿島アントラーズに加入。14年には自身初のJ1リーグフル出場を実現するなど主軸選手に成長を遂げ、16年のJ1リーグや天皇杯優勝、18年のAFCチャンピオンズリーグ制覇などに貢献した。
    18年12月にトゥールーズFCに完全移籍。すぐさまレギュラーに定着するも2シーズン目はケガに苦しみ長期の戦線離脱に。その状況を踏まえてJリーグへの復帰を決断し、20年から3シーズンはガンバ大阪で、23年は鹿島アントラーズでプレー。24年はFC町田ゼルビアに完全移籍となった。
    14年に日本代表に初選出。2018FIFAワールドカップ ロシア出場。

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