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Vol.129 『経験』とは何か?

  • 2025.08.05

    Vol.129 『経験』とは何か?

発源力

©FCMZ

7月21日に今シーズンの『ゼルビアファンフェスタ2025』が開催されました。まずは暑い中、たくさんの方にご来場いただいてありがとうございました。Jリーグの各クラブが日頃の感謝を伝えるべく、趣向を凝らしたファンの皆さんとの触れ合いイベントを行なっていますが、FC町田ゼルビアも例に漏れず、ファンの皆さんとの楽しいひと時を過ごしました。最近は暑さ対策もあり、練習場でのファンサービスはハイタッチにとどまっていますが、この日だけはサイン会や写真撮影会を多なったり、会話を交わしたり。お互いを身近に感じられる触れ合いイベントを通して、交流を深めることができました。また、僕のユニフォームを着てくれている人やグッズを持参してくれている人も見かけたし、プロになった時からずっと応援してくださっている方も参加してくれていたりもして、改めていろんな人に支えられていることを実感する機会にもなりました。
チームとしても5連勝で迎えたファンフェスタだったことも追い風になってか、終始、和気藹々とした雰囲気で、残りの試合に向けた結束を強める時間になりました。特に、J1リーグ第23節・清水エスパルス戦でゼルビアでの初ゴールを挙げ、続く、第24節・東京ヴェルディ戦でも決勝点を奪った流帆(菊池)や大八(岡村)の人気には驚かされました。晃生(谷)を含め、サッカーではどちらかというと黒子的な役割の多い、守備陣の人気が高いのは同じ守備を預かる一人として密かに嬉しかったです!

さて、今回はその東京V戦で感じた『経験とは何か』について書いてみようと思います。
結果としては1-0で勝利した東京V戦でしたが、正直、なぜ勝てたのかわからないくらい、内容的には相手に圧倒された試合になってしまいました。
押し込まれる時間も長く、決定機の数でも相手に上回られたし、個人的にも90分を通して終始、いいパフォーマンスではなかったと自覚しています。ロングキックやサイドチェンジ、ショートパスのフィーリングも良くなかったし、少しボールを運んでビルドアップをするとか、守備で引っ張ることも、あまりできていませんでした。局面での相手の寄せのスピードもいつもより速く感じ、ボールを受けた時の視野も狭くなっていました。
というのもあって、前半の飲水タイムで、試合が途切れた時には「今日はいいパフォーマンスをしようとすることは捨てよう」と思っていました。これは何もプレーを諦めるということではありません。最低限、自分の仕事はまっとうしながらも、プレーで乗れていない分、チームとして集中力を保たせるための働きかけをすることに舵を切ったということです。今シーズンは、敢えて自分が声で引っ張るということをしてこなかったですが、この日は身振り手振りで近くの選手に指示を出したり、オーバーアクションで仲間を鼓舞したり。手を叩いて士気を促すとか、ワンプレーごとに「ナイス!」などと声を張り上げることを意図的に行なっていました。

それは後半も然りで、飲水タイムの時間帯になってもなお、自分のパフォーマンスが上がってくる感じがなかったため、飲水タイムでは監督に自ら進言していました。
「監督、今日はこの時間になっても自分のプレーが乗れていないです。なので、今日は自分のプレーを諦めます。その代わり、残りの時間帯は一切いらんことをせず、ひたすらキャプテンとしてチーム全員の集中力を保たせるための役割に集中します。特に僕の左サイドは必ず自分が声を出して引き締めるので、ベンチに近い右サイドは監督が声を掛けて集中を保たせるようにお願いします」
それに対して監督からも「わかった。源は近い選手にどんどんボールを渡してシンプルにプレーしてくれ。集中力のところは任せたぞ」と言ってもらっていました。
これは、1つに、そんなふうに言葉にすることで、自分にプレッシャーをかけたところもあります。発言には常に責任が伴います。それを理解しているからこそ、敢えて口にして自分にハッパをかけました。また過去の経験上、試合中、自分のプレーがあまりうまくいってない時にプレーにフォーカスしてその状態から抜け出そうとしても、うまくいった試しがなかったことからアプローチを変えた自分もいました。ということから、東京V戦はとにかくプレーは最低限のことをして、あとは周りに助けてもらおう、そのためにできることをしようと振り切りました。

僕に限らず、サッカー選手は常に目の前の試合で最高のパフォーマンスをしようとピッチに立っていますが、それがうまくいく時ばかりではありません。体は動くのにボールタッチがついてこないとか、いい準備をしたのに思うように走れないというように、自分でも理解し難い状況に置かれることもあります。そこを乗り越える方法は人それぞれですが、少なくとも僕が今回チャレンジした、マインドに振り切った方法は、ある意味『経験』がなせる技だった気もしています。
ベテランになるとよく「経験が活きた」みたいな言葉をよく聞きますが、実のところ32歳になった今も、1年目のようなミスをすることはあります。それは世界的名プレーヤーでも同じでどんなに技術のある選手でも、時に考えられないようなミスを犯す姿を見かけます。すなわち、経験を積めばミスをしなくなるということでは決してありません。チームは生き物だと自覚して、常にいろんなことを察知しながらチームを牽引しようとピッチに立っていても思うようにプレーできるとも限りません。
じゃあ、経験とは? 今も正直、明確になっていないですが、東京V戦を通して感じたのは、自分の状態を正しく理解し、それを自分自身でうまくコントロールしてマインドを変えるということも1つかもしれないです。…ってことをその時は気づかなかったですが、今こうして言葉にして整理する中で感じています。
もちろんそれは、プレーを託せる仲間への絶大な信頼があってこそですが、結果的に、東京V戦はそれが90分間、自分がピッチに立ち続けられた理由になったし、何より、チームとしても耐え切って勝利に繋げられたことで、長らく考えてきた『経験とは何か』の答えを1つもらった気もしました。

その東京V戦から中断期間を過ごしてきた中で、今週の水曜日には天皇杯ラウンド16・京都サンガFC戦を、週末にはJ1リーグ第25節・ヴィッセル神戸戦を戦います。いうまでもなくチームにとっては絶対に負けられない大一番です。京都戦は『一発勝負』でどれだけ自分たちの力を表現できるかが問われる試合になるし、首位・神戸戦は僕らにとって6ポイントゲームと言える、正念場の試合です。いずれもホームで戦えることを追い風にしたいので、皆さんもぜひ、町田GIONスタジアムで一緒に戦ってください。

  • 昌子 源Gen Shoji
  • Gen Shoji

    1992年12月11日生まれ。
    兵庫県出身。
    11年に米子北高校から鹿島アントラーズに加入。14年には自身初のJ1リーグフル出場を実現するなど主軸選手に成長を遂げ、16年のJ1リーグや天皇杯優勝、18年のAFCチャンピオンズリーグ制覇などに貢献した。
    18年12月にトゥールーズFCに完全移籍。すぐさまレギュラーに定着するも2シーズン目はケガに苦しみ長期の戦線離脱に。その状況を踏まえてJリーグへの復帰を決断し、20年から3シーズンはガンバ大阪で、23年は鹿島アントラーズでプレー。24年はFC町田ゼルビアに完全移籍となった。
    14年に日本代表に初選出。2018FIFAワールドカップ ロシア出場。

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