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Vol.58 横浜F・マリノスアカデミー ジュニアユース/プライマリー兼任 GKコーチ 八巻 楽

  • 2023.07.19

    Vol.58 横浜F・マリノスアカデミー ジュニアユース/プライマリー兼任 GKコーチ 八巻 楽

指導者リレーコラム

横浜F・マリノスジュニアユースGKコーチ八巻楽さん。恵まれた環境の中であっても、自分が今できる全力とはなにかを冷静に問い続け、学びをやめない姿勢を子どもたちに示しながらより良い指導を模索しています。体も心も急激にのびていく時期の選手達一人ひとりに、心身のバランスの取れた成長を促すために大切にされていること、今現在に至るまでの経緯や経験などをうかがいました。

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―現在の活動について教えてください。

八巻 横浜F・マリノスでジュニアユースとプライマリーという15歳以下の選手のGKコーチとして活動しています。
現在のジュニアユースとプライマリーの専任になって3年、マリノス自体は8年目です。
指導者として8年間のうち3年はスクールコーチ、その後2年はスクールコーチと関東学院大学でGKコーチを。そして3年前から現在に至ります。

―1日のスケジュールはどんな感じですか?

八巻 日によって違いますが、基本的に平日は事務作業が少しと、各カテゴリーの練習があります。土日は各カテゴリーの試合が多いです。その他ではTOPチームの練習を見学させていただいたり、クラブとして取り組んでいる食育サッカーキャラバンという小学校の体育の授業と給食に参加させていただくような活動やチーム内のミーティングがあったりします。

―このクラブチームに至る経緯を教えてもらえますか?

八巻 大学を卒業後、JAPANサッカーカレッジに入団させていただき、選手をやりながら指導者になる道を考え始めました。そこで大学でお世話になったコーチに相談したところ、マリノスのスタッフの方をご紹介いただいて。そこでのご縁でマリノスに入れていただいたという経緯です。
マリノスには当時から選手としてもGKコーチとしても憧れる方々ばかりで、僕にとって夢のような場所でした。
なので「もしコーチができる可能性があるなら是非マリノスでやりたいです!」とお願いしました。スクールコーチとして活動を始めさせてもらえることになり、この恵まれた環境で学べる機会をいただきました。
指導者として様々な方の指導を観たり、話を聞かせてもらって学ぶ日々の中で、GKの魅力と奥深さをどんどん発見していく感じがあります。
マリノスに伝わるGKの魅力を選手と一緒に追いかける、とても楽しい日々ですね。

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―指導するにあたって、大切にしていることを教えてください。

八巻 なんだろうなぁ…指導はもちろんGKを含むサッカーというものは、これといった正解がないのが魅力であり難しさだと思います。
指導する上で、僕の経験の中でも「この時はこうだな」という、ある種の正解が見えたような気になる瞬間があったりします。だけど、それは「確率は高いかもしれないけど正解じゃないかもしれない、もっといいものがあるだろう」っていうのを自分自身で忘れないようにしてします。
そしてそれはプレーする選手に求めることでもあります。わからないからとりあえずやみくもにやる、というのはダメ。
今までの経験値や自分の知識から今の全力の正解を出す、でもそれがずっと100点じゃないと意識し続けるのは大事かなと思います。

―すごく大事なことですね。正解を求めることは大事ですが、出た!と思ってそれに甘んじるとそれ以上の成長は見込めないと。

八巻 そうなんです。インプットして考えて、アウトプットすることの繰り返しをしないといけなくて、どちらかを止めるとその瞬間衰退が始まっていきます。自分の考える全力を出しながらそれが正解じゃないと理解しておかないといけないというのが、難しさであり魅力であり、大切にしていることです。

―今指導されている年代についてはどう捉えられていますか?

八巻 この年代の特徴として、特に中学1年生になると大きな環境の変化があります。ルール、ボール、ゴール、コートのサイズ、そしてプレーヤーの人数もプロの選手たちがプレーしているものと同じものになります。身体はそのままなのに急にプロと同じ環境でサッカーをすることになる。下手になったわけではないのに、急にそう感じざるを得ない状況は選手にとって難しいと思います。
ただ、技術、戦術、メンタル、フィジカルの成長に伴い、守りにくかったゴールが守れるようになるということを考えれば、難しい状況である反面で、伸びしろが多いという、とてもおもしろい一面もあります。
また、成長の個人差がすごく出てくる時期でもあるので、一人ひとりの体の成長と心の成長のバランスが指導する上では難しいところです。心の成長が早い選手だと、客観的に自分を観て理想と現実を比較できる反面、自信を失う可能性があります。体の成長が早い選手は身体的なアドバンテージがありながら、そのアドバンテージを活かせなかったり、というアンバランスさがあるのがこの年代の特徴かもしれません。

―そこに成長を止めないような指導側からのバランス調整が必要になるんですね。

八巻 はい。ただ「今まだ成長途中だからいいよ」っていうのは違うかなと思っていて。今いる立場と今の実力で戦うしかない、というのはどんなに成長したとしても変わりません。たとえ日本代表になったとしても。なので、先のことを選手自身が安心材料にしてはいけないと思っています。
例えば、シュートを止められなかった原因がまだ今は身体が小さく、大きなゴールを守るのは難しいと感じても、それを選手本人に伝えるのかはすごく悩みます。選手自身がどのようにそのシーンを受け止め、成長の糧にしていくのかをよくみないと、成長を加速させたいと思って伝えた言葉が成長を妨げる弊害になることもあるかと感じます。
そのアンバランスさを考えるというのはこの年代を指導する上で1番の特徴かと思います。

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―今後の展望はありますか?チームとしてや、個人としても。

八巻 チームとしてこの年代に大切なことは個人がどれだけ成長できるかということと、心と体のバランスが整ってきた時に成長が加速するタネみたいなものをどれだけ持っておけるかだと思っています。
そのためにチームとして成長する過程を大切にしていきたいです。
僕個人としてはプロサッカー選手になれなかったので、J1リーグに強い憧れがあります。トップチームの輝かしいその雰囲気、そこで活躍する選手やスタッフのように、そこに貢献できる人間になっていきたい、というのが個人としての展望です。

―サッカーを始められたのはいつですか?

八巻 本格的には小学校5年生です。5年生の時に日韓W杯があってオリバーカーンを見てこんな人になりたいと思ったんです。GKをやりたくて本格的にサッカーを始めました。

―最初からGK志望だったんですね。

八巻 僕にとっては1番魅力的で1番やりたかったポジションでした。近くのチームでGKやりたいっていったらすぐさせてくれて、こんなに嬉しいことはないっていう気分だったんですが、後から思うともともとそんなに競争率高くなかったのかなと思います。
当時は気づいていませんでしたけど。笑

―他のポジション希望だったけど渋々…からスタートだったというお話をよく聞きます。

八巻 活躍されているGKの方のお話を聞くと確かに違うポジションからGKに、という方が多いですね。最近思うのは、だから僕はプロになれなかったのかなと思います。
GKはサッカーの一部分であってサッカーのすべてではない。サッカーというものの本質を理解した上で考えないと、結局GKとしての上達も遅いのではないかということを自身を振り返って感じます。
僕、キーパー練習がすごく好きだったんです。好きなことは悪いことではなかったけど、GKは競技ではなくポジションなので視点を大きくもつ必要があると自分の経験から感じます。

―少年時代はどんな選手だったんですか?

八巻 中学の頃は体の成長が早くて当時から今と同じくらいの大きさがあって、DFをしていた時期もあります。ただ、とにかく当時はオリバーカーンみたいになりたくて。絶体絶命を止める、ピンチを救うヒーローのイメージで。そんな場面がないかなとか、そんな場面の時にチームを救えるGKになりたいと思っていました。

―ピンチこい!みたいな。いいモチベーションですね!

八巻 そう。でもそれがサッカーの本質と合ってるかと言われると…笑 ピンチなんかない方がいいじゃん!て今なら思うんですけどね。

―最後に発信しておきたいことはありますか?

八巻 今後も選手たちの成長を通して、指導者として成長していきたいと考えております。
もし、どこかのグラウンドでお会いできる方がいらっしゃいましたら、ぜひお話させていただければと思います。
今回はこのような機会をいただき、ありがとうございました。

―ベストを尽くし、現状に甘んじることなく向上心を忘れないことの大切さを教えて頂きました。ありがとうございました。次の指導者のご紹介をお願い致します。

八巻 FC東京U-15むさしGKコーチ 来 龍哉 さんです。

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<プロフィール>
八巻 楽(やまき らく)
1991年生まれ。東京都八王子市出身。オリバーカーンに憧れ小学5年生から本格的にサッカーを始める。聖望学園高等学校、流通経済大学を卒業後、JAPANサッカーカレッジを経て、一般社団法人F・マリノススポーツクラブに所属し指導者の道へ。
同クラブでGKコーチとして、ジュニアユース/プライマリーを兼任して指導にあたる。
JFA公認B級ライセンス、JFA公認GKレベル2ライセンス取得。

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