FC今治のマーケティンググループに所属し、新スタジアムで行われるホームゲームを盛り上げる企画や運営にたずさわる加地和さん。FC今治の活躍で地元愛媛を盛り上げようとチームと地域に深い愛と熱い思いを持って奔走しています。サッカーを通して地方創生の一端を担う加地さんに、この場所に辿り着くまでのこと、これからの地域とサッカーの未来についてもお話をうかがいました。
―現在の活動内容について教えてください。
加地 J3のFC今治で、ホームゲームを盛り上げていくためにイベントの企画や試合当日の運営を担当しています。
―1日のスケジュールはどのような感じですか?
加地 8時半には出社して、ホーム戦の週はイベント会社や試合にブース出店いただくマルシェの方と打ち合わせをします。
POPや資料を作ったりという細かい作業をしたり、2週間に1回ホーム戦があるので、時間ができたら次のホーム戦のイベント企画や調整にとりかかります。
その他にもホームタウン活動として、選手を起用したイベントをこれから徐々に再開していこうと準備しているところです。
ホームゲームが開催される日は、前日に設営や掃除は終わっているので、13時キックオフの時は7時半頃に集合し朝10時の開場に向けて、キッチンカーやマルシェの方にご挨拶をし、あとはそれぞれの持ち場で、お客様を迎える準備しています。
―チームにはどのような経緯で関わることになったのでしょうか。
加地 大学では地域貢献活動をしていて、卒業した後は地元の愛媛で仕事をしたいと思っていました。でも、そのままチームに所属するには足りないものがあるという自覚もありましたし、当時のジェネラルマネージャーから「一度外に出ていろいろな経験をしてから戻ってきてもいいのでは」とのアドバイスもあり、大学含め6年間は県外で経験を積みました。
2021-2022年、INAC神戸レオネッサでトップチームのマネージャーをさせていただいている時には、WEリーグ初年度優勝という素晴らしい経験をさせていただきました。
もっと続けたかったのですが、その当時コロナ禍で家族や祖父母に会えない環境が私にはつらくて、地元に帰りたい、地元愛媛のサッカーを盛り上げたいという気持ちが強くなり、愛媛に帰ってきました。
―ご自身も選手をされていたんですか?
加地 サッカーを始めたのは小学校6年生からです。なでしこJAPANがW杯で優勝した時にサッカーってこんなにも輝けるんだ、なんてかっこいいんだと夢中になりました。
始めたのは遅かったのですがもともと負けず嫌いだったので、中学時代は男子サッカー部の中に入って活動し、その後は女子サッカー部がある小松高校(愛媛県西条市)、吉備国際大学(岡山県)へと進学しました。
大学に入って1年生の夏に腰痛が悪化し、リハビリに1年ほどかかると言われたので、サッカーは辞めて教職を学ぶために時間を費やそうと思い、監督に話しにいきました。
意外にも監督からは選択肢として「マネージャーになる」か「マネージャーと選手をする」の2つを与えられました。「辞める」という選択肢がなかったんですよ笑
今思うと「辞めていいぞ」と言われなくて本当によかった。その選択肢のおかげで現在の私があるので、監督には感謝しています。
―FC今治は新しいスタジアムができましたね。
加地 はい、2023年1月29日に新スタジアムのオープニングセレモニーを行いました。里山がコンセプトになっていて、試合のない日でもスタジアム内を散歩したり、カフェやドッグラン、畑までがあったりして、365日どなたでも楽しめる場所になっています。
高齢者の方が多い地域なので、手押し車を押しながらスタジアム内で毎日のようにお散歩していらっしゃる人たちを見ると嬉しくて「あぁここにスタジアムができて良かったな」と思います。
FC今治にはスタッフが総勢約80名います。トップチームの試合をサポートするスタッフだけでなく、しまなみ野外学校という「若者たちの遺伝子にスイッチを入れる」をコンセプトに野外体験教育を行う事業や、子どもたちのスクールをはじめ、今治市内の幼稚園や小学校で巡回サッカー教室を実施しているホームグロウングループなど、いろいろなグループにたずさわる方々と一緒に仕事をしています。
―加地さんの髪が青いのはチームカラーですか?
加地 そうなんです。笑 実は私もこういうことするのは初めてなんですけど、とにかくFC今治が大好きで、愛媛に戻ってきてすぐにこの髪色にしました。いろんな人との会話のキッカケになるので、今や「かじちゃんはそれじゃないとね」と言われるようになりました。
―とってもお似合いです!素敵です。
―チームの運営をしていく上で大切にしていることはありますか?
加地 コミュニケーションは大切に考えています。情報共有の大切さ、報連相をしっかりする、これは学生時代から社会人になった今も大切にしています。
あとは笑顔ですね。みんなが笑ってる方がいいので、自分も「む」って顔しているより笑って仕事する方が、笑顔の輪が広がる気がします。
―今後の展望はありますか?
加地 今治市に住んでいる全員に来ていただけるくらい、今治里山スタジアムには楽しいコンテンツがいっぱい詰まっているので、それをもっとたくさんの方にお伝えしたいです。
そして地域とより深く関わっていくことが私は大事だと思います。杖をついてグループで試合の応援に来てくれるおばあちゃんたちがいて、FC今治の選手やFC今治がそうやって愛される、地域に近い存在でありたいです。
今年5月にあいさつ運動&みまもる運動と題して、選手とスタッフが地域の小学校を訪問する活動が実現したところなんです。
登校時間はスタッフが挨拶に立ち「おはようございます!」と声をかけ、下校時間には選手が子どもたちに「気をつけてねー」と見守りながら声をかけます。これを1年かけて26校回る予定です。
―発信しておきたいということはありますか?
加地 FC今治は選手はもちろん、監督やコーチスタッフ、バックスタッフ(フロントスタッフ)みんなフレンドリーで温かく、最高のクラブです。とにかく大好きです。絶対に優勝して、絶対に昇格してほしいです。
とにかく今治里山スタジアムに1度は来ていただきたいです。楽しいですし、心が穏やかになる場所です。
スタジアムはピッチと観客席が近く、選手のベンチが観客席と一体になっていて、とても近いんです。いろいろなスタジアムを見てきましたが、私はここが1番好きです。
FC今治の企業理念に「次世代のため、物の豊かさより心の豊かさを大切にする社会創りに貢献する」とあるんですが、まさにそれを体現したスタジアムです。試合日と試合日以外で過ごし方は違いますが、皆さんが思い思いにスタジアムで過ごされているのを見て、心がとても豊かになります。
―地域の皆さんの応援で良いパフォーマンスができそうですね。ぜひ新スタジアムに行ってみたいと思いました。ありがとうございました。
<プロフィール>
加地 和(かじ のどか)
1997年生まれ、愛媛県新居浜市出身。FC今治 マーケティンググループ。
小学校6年生からサッカーを始め、小松高校、吉備国際大学を経て、広報担当として伊賀FCくノ一三重、マネージャーとしてINAC神戸に参加。愛媛へ戻るのを機に現在のFC今治でマーケティングに携わる。地元愛媛とFC今治への愛に溢れた仕事ぶりで、地域とFC今治を盛り上げる活動を続ける。溢れた愛でチームカラーに染まった髪色がトレードマーク。