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Vol.3 FC LAVIDA U-15監督/村松明人氏

  • 2019.06.18

    Vol.3 FC LAVIDA U-15監督/村松明人氏

指導者リレーコラム

近年、埼玉県内でも目を見張る躍進を続けている昌平高校。その下部組織として12年に発足したFC LAVIDAも同じく、ジュニアユース世代で頭角を現しつつある。今回は昌平高校のコーチと並行してFC LAVIDAの監督を務め、その育成手腕に注目を集める村松明人監督に話を聞いた。

一リップエースの今村康太監督からのご紹介で取材に伺いました。まずは指導者を志したきっかけを教えてください。

村松 康太さんは習志野高校の1つ上の先輩ですが、僕が「将来は指導者になりたい」と漠然と考えるようになったのは、その習志野高校時代です。当時、サッカー部のコーチをしていた千野徹さんの影響で指導者に興味を持ちました。といっても、当時、千野さんがどういうトレーニングをしていたか、とか、何をして成果が出たか、ということは全く覚えていなくて(笑)。
唯一、記憶しているのは、型にはめられることなく自由に、自分たちの良さを引き出してくれたということですが、僕自身は千野さんの指導力にすごく惹かれるものがありました。それもあって大学卒業後、すぐにヴェルディSS相模原のコーチになりました。

ーFC LAVIDAの監督に就任される経緯を教えてください。

村松 ヴェルディのあとは、習志野の同級生が代表を務めていた茨城県のFOURWINDS FCで、コーチとして中学生を見ていたのですが、その時に「どうせなら、育てた選手を同じサッカー感をもった指導者のいる高校で見てもらいたい」と、同じく習志野の同級生だった藤島崇之が監督をしていた昌平高校に何人か選手を送っていたんです。
正直、当時は近くに選手が中学時代に身につけたサッカー感を継続しながら成長を望めるユースチームがなかったのと、昌平高校は私学だということもありました。同校は埼玉県にありますが、茨城県や栃木県の県境にあり…と言ってもFOURWINSの拠点は茨城県県北地域の北茨城市、高萩市、日立市だったので、決して近くはなかったんですけどね(笑)。でも、大事に育てた選手がそのまま順調に成長できる環境を与えるのも指導者の役目だと考えました。
FOURWINDSの選手を送り始めたときはまだ昌平高校も、これから力をつけていくぞ、という段階でしたが、サッカー感があうチームに選手を預けた方が選手のためになるのではないか、と。もっとも、サッカー感があう、あわないだけで判断すべきではないと思っていますし、選手がそれを言い訳にするのもいいとは思いません。でも、選手の成長を求める上で、選手にあったサッカー、チームでプレーするのはすごく重要で、指導者がそこを的確に見極めてあげることも大事なことだと思います。…と、話を戻しますがFOURWINDS時代から昌平高校に選手を送り込んでいた関係性もあり、僕も10年に昌平高校のコーチになり、そのあと、ジュニアユースチームを作ろうという話になって昌平高校の下部組織としてFC LAVIDAを発足し、監督に就任しました。と言っても高校のコーチも兼任しているので、平日はだいたい16時から高校生を、18時半から中学生を見ています。

平日の練習は、約2時間。
形や目的を変えながら、
ほとんどがゲーム形式で行われる。

ーチーム名の由来は?

村松 スペイン語で人生っていう意味です。「la」は接続ですが、「vida」っていうチームが東京にあったので、「la」をくっつけて『LAVIDA』にしました。迷彩のユニフォームは…特に意味はないですが、オシャレにいきたい、と選びました(笑)。

ー指導において一番大切にされていることを教えてください。

村松 『仕掛けること』ですね。うちのチームでは、ボールを大事にすること以上に、ゴールを奪うことに重きを置いているので、試合ではボールを受ける際も常に相手を見て、次のプレーをイメージしながら『ゴール』を意識してポジションを取ることを強く求めています。
それもあって、うちの試合はバックパスが圧倒的に少ない。選手にも、ボールを受けた時にバックパスを選択してしまうってことは次のプレーを考えていないということだし、バックパスをしなければいけない状況に陥っていること自体が、いいポジションではないと伝えています。

ーその働きかけとして、日々の練習ではどんなトレーニングをされているのでしょうか。

村松 そういった感覚は口で伝えられるものではないので、設定を変更しながら同数でのゲームを数多く行っています。
ボールの位置や、敵味方の位置を見てポジショニングをとるとか、次の展開がどうなるか予測することを感覚的に養うにはゲームが一番だからです。なので、ボード上で「この局面で、ここにボールがあるから、ここにポジションをとれ」という指導はしません。

ー同数で行うのも狙いですか?

村松 確かに守備のことを考えれば、数的不利の状況を作った方が守りづらくなるので練習になるとは思いますが、瞬間瞬間で、『同数から数的優位に持っていくには、どう組み立てるか』を考え、優位に立つことを求めたいので、最初から数的優位な状況を作ってゲームをすることはほぼ、ありません。
あとは『サッカー感』ですね。これを言葉で説明するのは難しいですが、要するに選手には「ゲームから消えない選手」であることを求めます。実際、消えてしまう選手、試合の中で頭が休んでしまう選手は、試合によっては機能する可能性もありますが、試合の展開や試合を選ぶ必要が出てきます。これは理想ではありません。

練習を見守る村松明人監督。声を荒げることは少なく要所、要所で端的に指示を送る。

ーそうした感性を養うために練習で工夫することはありますか?

村松  イメージとしては、あえて守備を難しくするというか、人数は同数でも守備がハマまらないようなシステム同士でゲームをやらせることはよくあります。あとは、方向性を決めた、移動式のトレーニングとか、4:4で外にサーバーを置き、方向がパッパと変わっていく、切り替えの早いトレーニングもします。ボールを奪われた瞬間に、ゴールコースを消す守備ポジションを取りながらボールを奪いにいくとか、頭と体の切り替えの速さが必要になる常に動いている状況でのトレーニングもやっています。それによって、僕が指示しなくてもピッチ上で選手が考え、状況を判断して動けるのが理想です。
もちろん、指導者が働きかけて選手を動かすことでうまくいく局面もあるかもしれませんが、それだとうまくいかなくなった時に、選手がピッチでフリーズしてしまうし、それではチームは機能しません。それに選手が自分の判断で自然に動けるようになれば、それはチームとしての結果にも直結していくはずです。もちろん、まだ中学生なのでこちらも気づいたことは伝えていますが、基本的なスタンスとしては選手が自分で考えて動けるチームにしたいと思っています。

ー練習を見ていると、かなり強度が高いように感じましたが、毎日、この内容ですか?

村松 今週は試合もないのでいつもよりも高い強度でやっていますが、普段も、強度は高い方だと思います。他のチームの指導者が見学に来られると「こんなにやっているチームはないよ」って驚かれることが殆どなので(笑)。

ー筋トレはしますか?

村松 毎日、ボールを使ったトレーニングをひたすら2時間くらいやるだけで、筋トレも、走り込みもしません。ただ、練習中は、ほとんど動き続けているし、実際、ゲームで足をつる選手もいないので強度としては十分なのかな、と思っています。

ーその割に、選手の皆さんは体が大きいですね。

村松 そうなんです! うちの選手はなぜかびっくりするくらい太いんですよ(笑)。こっちが「何か自分でトレーニングしているの?」って思うくらい下半身がゴツい選手が多い。その理由は僕としても謎で…うちで鍛えられてこうなったのか、もともとの体格なのか、分からないですが、自分の中学時代と比べても太いなって思います。

ー1年間の試合日程を考慮して、スケジュールを立てることはありますか?

村松 基本的にはないです。週末に試合が入ってくるか、くらいは気にしていますが、そこまで細かく組み立てないようにしています。というのも、常に『トレーニングのまま、ゲームにいく』というイメージで試合に臨むのが理想だから。
よく試合前日はトレーニングの強度を落とすとか、軽く体を動かす程度の調整で終わるって聞きますが、うちは試合前日も普通にトレーニングをします。あえて練習だから、ゲームだから、と分けて考えなくても、その調整は時間でするくらいでいいのかなと。
もちろん、週に2回、試合が入っている時は多少、内容も考慮しますけど、それ以外はほぼ毎日、変わらない強度で行います。

筋トレは一切していないそうだが下半身の太い、
体格的にも恵まれた選手が目立つ。

ー『トレーニングのままゲームにいく』理由は?

村松 普段のトレーニングを、練習のための練習にしたくないからです。だからこそ、試合と同じような感覚で行う練習内容が多いとも言えます。
試合と違うことがあるとすれば、シュート練習をちょこっとするくらい。それ以外はいろんな形、特性を考慮したゲームばかりですが、走る距離だとか、強度も、常に試合に近い状況を想定してトレーニングをしているので、試合だからといって敢えて何かを変える必要はないという感覚です。

ーゲーム感を発揮するための技術も、ゲームをしながら養うという考え方ですか?

村松 ウォーミングアップではドリブルからパス、とかやりますけど、それもただのウォーミングアップにはならないようにゲームをイメージした上で、ボールの受け方を工夫させたり、個人的に足りないものを指摘したりしているので、技術練習をしているようには見えないかもしれません。
ただ、僕の感覚では、ゲーム形式のトレーニングを続けるうちに1〜2年生でそれなりの技術は備わっているのかな、と。先ほどもお話ししたように、ゲームといってもいろんな種類があり、時にシュートを打つことにフォーカスしたゲームをすることもありますしね。これも、ただ、単なるシュート練習だと肝心の「どこで受けて、どうゴールにぶち込むか」という感覚が養えないのでゲームでやりたいな、と。
それに、技術があっても…例えば止める、蹴る、運ぶ、がすごく巧い選手だったとしても、ゲームから消えてしまう選手は基本的に試合には起用しません。裏を返せば、たとえ技術が劣る選手でも、ゲームに関わる力があれば試合に出場できるし、実際にうちにはそういう選手もいます。なぜなら、どれだけ技術があっても守備のポジショニングがとれない選手が一人いるだけで、チームとしては『穴』になってしまうからです。実際、Jリーグの試合を見ていても、高い技術は備えているのにゲームの中では機能していない選手はいますよね?それによって、『チーム』として考えればマイナスになってしまっていることもある。そう考えても僕の中に、技術が最優先という感覚はないです。といっても、技術がある選手はこちらとしても起用したいので、ゲーム感を備えられるようにもっていきたいと思っていますが(笑)。

ーご自身が携わる選手には、将来、どんな選手になってもらいたいと思いますか?

村松 よく送り出す側の立場にある人が「将来はどの指導者のもとでも評価される選手に育てたい」と言っているのを聞きますが、正直、僕はどんなサッカーにも適応できる選手っていないと思うんです。だからこそ、選手には僕ら指導者側がどうなって欲しいか、より、選手自身に『自分がどうなりたいか』を描けるようになってもらいたい。
基本的に選手って…僕自身もそうでしたが、指導者の好みにあわせて、指導者の理想のスタイルを気にしながらサッカーをしますが、本音を言えば…指導者の僕が言うのもなんですが(笑)、できれば気にして欲しくない。なぜなら選手って、自分で大きくなっていくべきだから。
もちろんそこには要求されたことを受け入れる人間性や周りにリスペクトする心も大事ですが、それを持ちながらも、自分の中で『自分はこうなりたい』『自分のサッカーはこれだ』というものを備えられる選手になって欲しいと思っています。

ー先日、コパ・アメリカ2019に出場する日本代表に選出された松本泰志選手は、昌平高校卒業後、サンフレッチェ広島に加入しました。最近は昌平高校からプロサッカー選手も多数輩出されていますが、彼らの姿から学ばれることもあるのでしょうか。

村松 あります。その1つがチャンスというのは本当に誰に対しても広がっているんだな、っていうことです。例えば、泰志(松本)は、高校1年生の時から見ていましたが、1年生の段階ではそれほどスペシャルな選手ではなかったんです。っていうか、今まで昌平高校からJリーガーになった選手は4人いますが、高校時代に「この選手は間違いなくプロになるな」って確信するような能力を持った選手は一人もいません。
プロになるような選手って、ともすれば中学生年代でもそのポテンシャルに光るものがあったりしますが、彼らは高校1年生の時でさえ、そういうオーラは全くなかった(笑)。ただ、例えば泰志には、当時から自分の『こうなりたい』という強い意欲があり、それを3年間持ち続けていた印象はあります。それもあって、先ほどの「自分がどうなりたいか」を大事にして欲しいという言葉に繋がるのですが、その必要性に気付かせるのも僕たちの仕事だと思うので、そういった環境づくりはこれからもしていきたいと思っています。

ー日本のサッカーではよく『規律』という言葉を耳にします。ご自身の指導においても、それは大事だと考えますか。

村松 『規律』という言葉自体はあまり使いませんが、サッカーは組織、チームで戦うスポーツなので、チームとしての決まりごとや、やるべきことがあるのは自然だと思います。
ただ、僕はその中でも『個人』をちゃんと出せる状況にはもっていきたい。つまり、選手個々の特徴が出ないゲームとか、そういう状況に追いやってしまう指導はしたくない。守備が得意じゃない選手に守備の要求ばかりして、その選手の良さが消えてしまったら、その選手を起用する必要はあるのか?ということになってしまうので。それもあって、守備が苦手な選手にも「自分なりにチームのためにどう守るか考えろ」と伝えます。つまり、チームとしてやるべきことはあるけど、自分らしさを消さなくていいように判断してプレーしろ、ということです。

ー今後、チームとして、監督としての目標があれば聞かせてください。

村松 チームとしての目標は…日本一をいつかは獲りたいです。指導者としてはピッチにいる11人全員を…大学経由でもいいので、プロにすること。近年、昌平高校からは先ほど名前の挙がった泰志も含め、コンスタントにプロサッカー選手が誕生している状況があり、サッカーを評価いただけることが増えたせいか、少しずついろんな方が注目してくださっているので、この流れを続けながらいつか、11人全員がプロになれたら理想です。

ーご自身は将来的に、別のカテゴリーの指導者をしてみたい、と考えることはありますか?

村松 ないです。ずっと育成年代の指導者でいたいと思っています。なぜなら、サッカー選手の成長において、中学年代は一番大事な時期だと思うから。体も変わってくるし、プレーヤーとしてもやり方次第で一気に変化する選手もいる。そう考えても、この年代の指導者を預かる責任はすごく大きいし、だからこそ、やりがいも感じています。

ーそんな村松監督が注目されている指導者をご紹介いただきたいのですが。

村松 刈谷JYのコーチをされている吉村大輝さんを紹介します。LAVIDAを立ち上げて数年経った時にいろんなチームと試合をする中でよく、相手チームの指導者の方からうちのチームが「刈谷JYと似ている」と言われていて。それをきっかけにどんなサッカーをするのか興味が湧いて交流を持つようになりました。
お互いが主催する大会にも参加しあっていますし、日程等の関係でそれが無理だったとしても、年に1回は必ず試合もしています。サッカー感の部分でもすごく相通ずるものがあって、僕自身もいつも対戦を楽しみにしているチームなので是非、話を聞いてみてください。

<PROFILE>
村松明人(むらまつ・あきと)
1979年生まれ、千葉県出身。
習志野高校、日本大学を卒業後、指導者の道に。ヴェルディSS相模原やFOURWINDS FCで中学生年代の指導に携わったのち、11年に昌平高校のコーチに就任。その後「一貫指導体制で選手を育成したい」との思いから、昌平高校監督の藤島崇之とともに12年にFC LAVIDAを発足し、監督に就任した。近年はU-15チームが埼玉県リーグから関東ユース(U-15)サッカーリーグへの昇格を決めるなど、短期間でチームを急成長させている。

text by Misa Takamura

J1/ヴィッセル神戸<前編>