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Vol65「奇跡」

  • 2025.11.06

    Vol65「奇跡」

絶康調

ベガルタ仙台が奇跡的な逆転勝ちを果たした。上位を争うサガン鳥栖との直接対決となった10月26日。全部後手後手の完全な負け試合だった。前線のファーストディフェンスの迫力も足りなくて全部はがされていた。打つ手打つ手全てに対応されていて、相手の思うつぼだったと思う。鳥栖はやりたいことができていたんじゃないかな。センターバックが勇気を持って相手FWをマークしないといけないと思っていた。鳥栖戦前は「負けたら昇格争いから脱落確定」みたいな位置付け。選手の気持ちも分からないでもないけど、ベガルタはそういう試合で堅くなってしまう。ベガルタはまだ「勝って当然でしょ」というチームではない。「こんなに選手がいて!」と言えるのは今のJ2だとヴィファーレン長崎ぐらい。ベガルタはその領域に達していないから、選手にとっても過度のプレッシャーになってしまう。目的は優勝とJ1昇格だよね。チャレンジャーとしてやっていかないといけないんだから、プレッシャーを感じなくていい。現状の立ち振る舞いを一番分かっているのはゴリさん(森山佳郎監督)だと思う。勝たないといけないけど、負けた時にこれが自分たちの実力とリアルに言えるのは大きい。頑張ってほしいという思いは強い、めちゃくちゃチャンスでしょ。一方的に押し込まれて0-2になって、さらに退場者まで出た。大雨だし気持ちも折れかねない状況。そこから3点を奪って勝ちをつかんだ。オレ自身も10人になってからひっくり返すなんて劇的な経験はしたことがないな。すごいとしか言いようのない勝利だった。

数的不利になってから、大夢(MF鎌田大夢)と真瀬(DF真瀬拓海)は鎖から解き放たれたかのように躍動していた。右サイドを真瀬が1人で制圧し、大夢は前にも後ろに動いて多くのタスクをこなしていた。ああいう戦いぶりを11人の時にもやってほしい。本能に従って大暴れしてほしい。もちろん戦術の決まり事もあるからバランスよくやらなきゃいけないというのも分かるけど、自分がやるという意識をもっと強く持ち、周りに伝えるくらいじゃないとね。「俺の邪魔をするな」、「こっち行きたいんだよ」とか、我が出るようなプレーを常にしてほしい。宮崎君(FW宮崎鴻)の1点目はリスクを冒してごりっとターンして右足で蹴り込んだ。自分が決めるという強い思いが伝わってくるプレーを見せてくれた。2点目のミドルシュートもそう。ただ、前線の選手はああいうプレーを前半の最初からやらないと相手にとっては怖くないよね。

鹿島アントラーズのトニーニョ・セレーゾ監督時代、オレが20代半ばの時を思い出す。あの頃、ゲームメーカーとして伸び悩んでいた。当時セレーゾは「得点しないとダメ。ボールに触らないとダメ。得点に絡まないと評価してもらえないよ」と言っていて、シュート練習がめちゃくちゃ増えた。とにかく得点を取りにいけと。練習ではどんなとこからシュートを打ってもほめてくれた。チームメートからは「なんでそこでパス出さないんだよ」と思われていただろう。けど結果的に2桁得点できた。まあ、その上でそれだけじゃ勝てないと考えて、いろいろなことをミックスするようになったけれど、得点への意識は強くなった。そしてチームが勝つようになった。あとは枠に入れる確率を上げるだけ。やっぱり練習するしかないよね。
宮崎君は前での得点感覚にのみフォーカスしてほしい。流れてボールを受けてチャンスメークもいいんだけど、もっともっとゴール前で勝負する選手になってほしいと思う。あのガタイがあるんだし、自分の強みを理解して特化させるようになってほしい。今ここでのチーム戦術に合わせたプレーで満足してほしくないとは思う。試合を鹿島スカウトの人と見ていて、「宮崎がポイントだよね。もっとゴール前にいさせないと」って話していた。あとは、年間通してあのプレーをしてくれたらなと思った。近年は半年活躍して海外移籍というケースが増えているから、年間計算できる選手が少ない。ベガルタだと友太(MF郷家友太)とオク(DF奥山政幸)かな。大夢も今年はハイパフォーマンスでちょっと抜けている印象がある。

10人で2点ビハインドをひっくり返す。こんな奇跡的な試合が2017年にもあったらしい。それがベガルタ対川崎フロンターレ戦だ。よりによってベガルタが負けた側で絡んでいた。鹿島が首位にいたシーズン終盤、もう負けられない川崎が絶体絶命の状況を覆した。あの時は2-3という結果だけ見て「ベガルタ何やってるんだよ」って話していたような記憶がある。川崎はその後4試合を3勝1分けで乗り切り、最終節で鹿島を抜いてJ1初優勝という奇跡を起こした。奇跡は2度起こせるということは、あの時に川崎が証明している。ひるがえって今、ベガルタは同じような状況にいる。追い詰められた絶望的な状況で昇格争いのライバルから勝ち点3を奪った。残り3試合、全部勝てば未来は開けると信じている。だから11月2日の今治戦にはあえて触れないでおこう。諦めない限り奇跡は何度でも起こすことができる。頑張ってほしい。

  • 遠藤 康Yasushi Endo
  • Yasushi Endo

    1988年4月7日生まれ。
    仙台市出身。
    なかのFC(仙台市)から塩釜FC(宮城県塩釜市)を経て2007年鹿島アントラーズに加入。左足のキック精度が高く、卓越したボールキープ力も光る攻撃的MFで、10年以降は主力として3度のJリーグカップ制覇や、16年のJ1リーグと天皇杯優勝などに貢献した。J1通算304試合出場46得点。
    2022年、15年プレーした鹿島を離れ、生まれ故郷のベガルタ仙台へ完全移籍した。
    U-15、U-16、U-18の各年代で代表経験があり、15〜17年は日本代表候補に選出された。

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