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Vol.91 FC町田ゼルビアへの移籍を決めたワケ。

  • 2024.01.09

    Vol.91 FC町田ゼルビアへの移籍を決めたワケ。

発源力

©Gen Shoji

はじめに、令和6年能登半島地震によりお亡くなりになられた方々に哀悼の意を表します。また被災された方、そのご家族の皆さまに心よりお見舞い申し上げます。予断を許さない状況が続いている中、いろんな不安を抱えて過ごされている方も多いはずですが、被災地の皆さまの安全と1日も早い復興を願っています。

2024年最初の発源力は、今シーズンから在籍するFC町田ゼルビアに移籍を決めた理由について書いてみようと思います。

前回、僕はこの発源力で、昨シーズンの戦いを通して「試合に出て自分の力を証明したい。ピッチの上でしか感じられない喜怒哀楽の中に身を置いて、プロサッカー選手として生きている感覚を取り戻したい」という思いが強くなったとお伝えしました。
もちろん、移籍したからといって試合に出られる保証などなく、そこには常に『競争』があることは重々承知しています。だからこそ、その競争する場所が新たな体制でスタートを切ろうとしている鹿島アントラーズではダメなのか。復帰してわずか1年で鹿島を離れる決断が果たして自分にとって最善の選択なのか、ということも深く考えました。ましてや、プロサッカー選手として戦える時間は毎年、少なくなっていく現状を思えば、自分のキャリア以上に家族との生活や、そこで得られる報酬を第一に考えてチームを選択するべきだったかもしれません。
ただ、結論から言って、真っ先にオファーを出してくださった町田の熱意に触れ、素直に僕もその一員として新たなチャレンジをしたいという思いが強くなり、移籍へと気持ちが傾いていきました。そこには「先のことはその時にまた考えよう。今はとにかくピッチで源ちゃんの戦う姿を見たい。子供たちにもその姿を見せてあげてほしい」と言ってくれた妻の言葉に背中を押された自分もいました。

その町田の熱とはどういうものだったのか。契約の話なので、全てを明かせるわけではないですが、第一に、自分が外から見てイメージしていた町田とは全然違ったというのが率直な思いでした。皆さんがどういうイメージを町田に抱いているのかはわかりませんが、少なからず僕自身は…あくまでイメージですが、正直に言って、昨シーズンのJ2リーグをぶっちぎりで優勝した勢いのままにJ1リーグに乗り込めばなんとかなるでしょ、的な感覚でいるイケイケなクラブだと思っていました(笑)。
ですが、強化部の方と話をする中で聞かれたのは「今のままの自分たちでは、厳しいJ1リーグを勝ち抜いていけない」「J2リーグを戦っていたとき以上にシーズン中の浮き沈みや、うまくいかないことが間違いなく出てくる」というような『危機感』ばかりでした。そこには、熱量や勢いは備えながらも、明確なビジョンのもとに着実に前進していこうとしているクラブの姿がありました。と同時に「J2リーグ優勝に導いてくれた選手たちをリスペクトしながらも、まだまだ歴史の浅いクラブだからこそJ1リーグで戦い続けられるクラブとしての基盤をしっかり作っていきたい。この先『J1から降格したことのないチーム』になるために着実に1年1年、チーム力を積み上げていきたい」というクラブの考え方にも、すごく共感しました。

また、僕個人に対しては、そのうまくいかないこと、チームが沈んだ時期をできるだけ最小限にとどめ、踏ん張るためにも「J1リーグはもちろん日本代表や海外でもキャリアを積んだ経験をチームに還元しながら、チームを引っ張ってほしい」というような思いを伝えていただきました。また、クラブ側がリサーチされた僕のプレースタイルやキャラクターと自分が思っている強みが合致した中で求めていただいたことも、町田でプレーしてみたいという思いを加速させた理由の1つです。そして、最終的には、先ほども書いた通り、移籍交渉の場で感じ取ったクラブのJ1リーグでの戦いに懸ける思い、熱量に自然と惹きつけられていくような感覚を覚えたことが、移籍の決断に繋がりました。

もっとも、これまで僕が経験してきたどの移籍もそうだったように、加入に際して描いていた通りにシーズンが進むことはまずないはずだし、ましてやJ1リーグでの戦いが初めてのクラブだと考えれば、きっと思っている以上に難しい1年になるのは想像できます。僕がこれまで在籍したガンバ大阪や鹿島のように、Jリーグ発足時から存在し、30年もの歴史をほぼトップリーグで積み上げてきた『オリジナル10』のクラブでは考えられないようなことも起きるんじゃないか、という覚悟もしています。僕自身は、初心に返ってチャレンジしようという決意でいるものの、クラブに託された思いを受け止めればこそ、その『初心』は間違いなくルーキーのような感覚であってはいけないという責任も感じています。それらを総合しても、これまで在籍したクラブとは全く違う種類の苦労をするかもしれません。

ただ、それも含めて僕は今、すごく町田でプレーすることにすごくワクワクしています。現時点でクラブに感じている可能性が、この先もっと大きなものになっていくだろうという期待もあります。また個人的にも、勝ったり負けたりといった喜怒哀楽とは別の『サッカーを楽しむ』という本質をもう一度取り戻し、その姿をピッチでのプレーで示すことによって、応援してくださる皆さん、支えてくれる家族に恩返しをしたいという思いも強いです。そういえば、すでに開幕カードが発表されて、いきなり古巣のガンバと対戦することになりましたが、今シーズンの近い目標に描いていた『開幕スタメン』が、自分の中でより強い決意に変わっているのも、そうした思いがあればこそです。鹿島との対戦時には、それ以上の強い決意でその日を迎えることになると思います。

といった思いのもとで、新たなチャレンジに踏み切った僕は1月14日、いよいよ町田での始動を迎えます。初めて訪れる街、これまでゆかりのなかったクラブで、新たな仲間とサッカーをすることが、町田サポーターの皆さんに会えることが、今からすごく楽しみです。その日を心待ちにしながら、引き続き、自主トレに励みます!

  • 昌子 源Gen Shoji
  • Gen Shoji

    1992年12月11日生まれ。
    兵庫県出身。
    11年に米子北高校から鹿島アントラーズに加入。14年には自身初のJ1リーグフル出場を実現するなど主軸選手に成長を遂げ、16年のJ1リーグや天皇杯優勝、18年のAFCチャンピオンズリーグ制覇などに貢献した。
    18年12月にトゥールーズFCに完全移籍。すぐさまレギュラーに定着するも2シーズン目はケガに苦しみ長期の戦線離脱に。その状況を踏まえてJリーグへの復帰を決断し、20年から3シーズンはガンバ大阪で、23年は鹿島アントラーズでプレー。24年はFC町田ゼルビアに完全移籍となった。
    14年に日本代表に初選出。2018FIFAワールドカップ ロシア出場。

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Vol.92 2024シーズン、始動。