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Vol.42 ヴェルスパ大分レディース コーチ/姫野加奈子

  • 2023.12.27

    Vol.42 ヴェルスパ大分レディース コーチ/姫野加奈子

PASSION 彼女たちのフィールド

ヴェルスパ大分レディース発足から主力選手として長く活躍し、2021年から指導者としての道へ進み始めた姫野さん。サッカーができる環境への感謝を忘れず、家族のように大切に思うチームと共に歩む決意とこれからのことについてお聞きしました。

―現在の活動内容について教えてください。

姫野 ヴェルスパではコーチという形でチームに関わらせて頂き、大分県の女子サッカーの運営委員として大会などの運営もしています。仕事は別府市で保育士をしています。

―お仕事が終わってから練習なのですね。

姫野 普段、月水金は仕事の後に夜の19時から21時まで練習があり、土日は試合か練習です。試合があるときは大分県のサッカー協会のお手伝いとして、大会の運営もしています。
練習をしているグラウンドは大分市にあり仕事場から30分ほどかかりますが、それほど苦ではありません。うちのチームはみんな斡旋された職場ではなく、自分達の好きな仕事をしながらサッカーをしているというのが魅力です。昼間までとかではなく基本的に8時間しっかりフルで働いてから、夜はサッカーというリズムでやっています。

―今のチームに関わるきっかけを教えてください。

姫野 柳ヶ浦高校でサッカーを始めて、卒業後も選手としてクラブチームに入って活動していたのですがそのチームがなくなってしまって。そんな時に拾ってもらったというか、サッカーができる環境を作ってくれたのが新チームとして発足したばかりのヴェルスパ大分でした。2014年の発足当初は10人からのスタートでしたね。

―サッカーを始めたきっかけは?

姫野 サッカーに興味を持ったのは父が小学校のサッカーチームの指導者をしていたのがきっかけです。父のチームにはマネージャーとして携わっていて、小学生の選手を励ましたり、お手紙を書いて応援したりとか。そうやって中学の時は父のサッカーについて回っていて、楽しそうだな、やってみたいなと思っていました。高校に入学して飛び込みのような形でサッカー部に入りました。

―指導者になったのは、いつからですか?

姫野 2021年からなので、今年で2年目です。チームの活性化を図るためプレーイングマネージャーとしてチームに関わり、今季は九州2部リーグで優勝して九州1部リーグへの昇格を決めたところです。
チームの選手のみんなはだいたい大分市や別府市に住んでいます。社会人の選手が増えてきたんですが、学生が少なくて。下は中学1年生、上は先日引退されましたが私の二つ上の35歳が1番上でした。
18歳以上の社会人選手が15名くらいいます。社会人は少し怖いというか厳しいイメージがあると思うんですが、実際はそんなこともなく優しくて、学生も伸び伸びできているようです。学生の選手は社会に出てからのことも学べたり、社会に出ている年上の人間と一緒にいることで大人の態度の真似をしたりできて家族みたいですね。
発足当時から10年以上一緒にサッカーをしている選手もいて、家族以外の人とそんなに時間を共にすることもないと思うので、居心地の良い温かいチームだなと思っています。

―1部リーグに上がることで状況はどのように変わるとお考えですか。

姫野 実は2年前にも1部リーグにいたんですが降格して、そして今年第1位でまた上がれることになったという経緯がありまして。
一昨年の経験では、リーグが変わると周りのレベルが大きく違ってきます。技術の面はもちろん、なかなか勝てない、確実に勝てる試合っていうのがないような状況でメンタル面など、すべてにおいてレベルアップを図らないとまた同じことのくり返しになってしまう。また2部降格ということがないように、みんなで底上げしていけたらいいなと思っています。チャレンジできることって楽しいですから。

―指導する上で大切にしていることはありますか?

姫野 私はコーチでもあるのですが、選手として試合出場する機会もあるので、指導者というよりはスタッフと選手のパイプ役であったりとか、またプレーの中で選手同士を繋ぐ役ということを意識してチームに関わっています。

―サッカー人生における転機のようなものはありましたか?

姫野 元々指導者に、というよりは自分にサッカーができる環境を与えてくれたチームへの恩返しの気持ちが大きかったです。選手を引退することになった時も、このチームに関わっていたいという気持ちが強くありました。
現・総監督の荒川さんのご指導を受けるなかで、指導者って面白いのかなって思いました。国体などでたくさんの監督やスタッフの方のお話を聞いて、想像しているよりすごく奥が深いなと。もちろん難しいとも思います。例えば選手とスタッフのパイプ役という存在はなかなかいなくて、そういう存在になれたらというのはきっかけなのかもしれません。

―荒川さんのご指導で心に残っていることはどのようなことですか?

姫野 サッカーのことというより感謝の気持ちの大切さや、技術面より頑張っている姿を応援してくれる方に見てもらおうとか、メンタル面や立ち居振る舞いを発足当時からしっかりと指導していただいてきました。誰かの心を動かすためには、私は今でも技術より大切なことだと思っています。練習後に選手が道具を毎回きれいに拭いて、10年以上長く使っているものもあります。当たり前なことは一つもなく全て誰かの支えがあってそこにあるからこそ小さなことでも感謝し、大切にしていかなければいけないそんな小学生みたいなことも改めて教えてもらってきました。
選手一人ひとりをしっかりと見て、その子たちが前向きになれる働きかけをしてくださる方なので安心するというか選手の信頼も厚くて。今は総監督として一歩引いている形ではありますが、それでもチームにとっては大きな存在です。

―これまでで思い出に残るシーンは?

姫野 発足して4年くらいは伸び悩み、県で1位になってからも惜しい状況が続き、3回目の正直でやっと九州リーグに昇格を決めることができたのですが、2018年のその時の試合はものすごく嬉しかったですね。本当に。生涯忘れることはないというくらい、思い出に残っている試合です。

―さらに上への昇格を含めた今後の展望をお聞きしてもいいですか?

姫野 まずはなでしこリーグ参戦が目標ではあります。そのためにも選手の補強などをしつつ、来年度は九州リーグ1部上位を目指したいですね。そこから少しずつ目標を達成できたらいいなと思っています。
その過程で、ヴェルスパ大分レディースをたくさんの方に知ってもらいたいです。小さい年齢の子から社会人や一度引退した人もずっと関わっていられるビッグファミリークラブ、みたいな。
自分自身としては、共に戦ってきた選手たちがいつか指導者の立場、監督としてチームを引っ張っていける存在になってくれたらと思うのですが、自分自身がまだその域に達していないので、がんばらないといけないなと思うところです。

―サッカーを通して得たことはどんなことでしょうか。

姫野 人とのつながりのありがたさはすごく学びました。応援してくださる方がいたり、陰で頑張ってくれるスタッフ、その環境を作ってくれるチーム、試合ができる相手がいるということ、チームの味方がいて相手がいて、っていうのは当たり前じゃないということを痛感してきたので、そういう人との関わりの大切さっていうのは何度も感じてきました。
それが保育士としての仕事にもチームで取り組むというところに活きていると思っています。
職場では2歳児担当なんですが仕事のあとサッカーしていると言うとびっくりされます。練習に週3以上行ってると話すと「そんなに?!」って。職場でももうこのままですね。元気な感じで働いています。
卒園児の子が私をきっかけに始めたサッカーを、今は中学2年生になってるのですがずっと続けてくれていて。その子が自分達を介してサッカーを始めてくれたこと、頑張ろうと思うきっかけになれたことがすごく嬉しいです。

―それはうれしいですね!

姫野 他の地域でもスクール活動も盛んになってますし、きっかけ作りや魅力の普及も大事ですね。私たちヴェルスパも地域に出て活動をしています。選手が指導者としてメニューを考えて小学生や幼稚園の年中、年長さんくらいの年齢の子どもさんとスクールとしてサッカーを経験してもらおうという活動をしています。コーチが指導するのを選手がサポートしたりもします。

―他に取り組みとして力を入れているものはありますか?

姫野 運営としてはSNSにも力を入れています。YouTubeの動画編集はやったことなんてなかったところから教えてもらいつつ始めて、現在はだいたい毎週金曜日に更新しているのでだいぶ忙しくしてます。選手も一緒になって編集しているので珍しいことだと思いますし、思いもたくさん込めています。今まで全く知らなかったという方たちが試合を観にきてくださるきっかけにもなっていて、とても嬉しいです。
「まずはチームを知ってもらう」というのが1番の目的です。選手として入ってくる子たちにも、大分にはこういうチームがあるんだと知っていただきたいと思って作っています。

―これからの方たちになにか伝えておきたいことはありますか?

姫野 引退したからこそ思うことでもあり、私にとってのサッカーの魅力でもあるんですが、振り返ってみるとここまで打ち込めることってなかなか経験できないことだったなと、毎日喜怒哀楽して青春してたなとすごく思います。皆さんには、いま目の前にある、今しかできないことを本当に全力でやって欲しいなと思います。
サッカーはもちろんスポーツをしている方、今取り組んでいることがあるすべての方に、引退とかそれを辞めようと思うタイミングや理由って人それぞれあると思うんですが、続けることは今しかできないことだと思うんです。だからやれる時には満足するまで全力で挑戦してほしいです。
大人になって青春することはなかなかないことだと思うので、うまくいかないことも悔しい気持ちも嬉しいことも全て、”今”を楽しんでください。
あとはサッカーの魅力をもっと知っていただきたいですし、これを読んで下さった方がヴェルスパ大分レディースの試合を観にきてくださったら嬉しいです。

<プロフィール>
姫野加奈子(ひめの かなこ)
1990年別府生まれ。柳ヶ浦高校からサッカーを始めクラブチームに所属するも解散、その後ヴェルスパ大分レディースに加入。発足からの主要選手として長く活躍し今季のリーグ昇格にも大きく貢献。2021年から指導者の道へ。

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