柴田 麗Urara Shibata
管理栄養士/公認スポーツ栄養士
大学にて体育の教員免許を取得後、カラダを動かすことから食べることの世界に興味を持ち、栄養学を学んで管理栄養士を取得する。筑波大学修士過程を修了した後、05年に明治製菓株式会社(現・株式会社明治)に入社。
様々な競技のトップアスリートの栄養サポートに携わり、19年3月に退社。現在はフリーで活動している。好きなスポーツに出会うことは人生を豊かにすると信じてやまない。
「カラダを大きくしたいです。何を食べたらいいですか?」という直球の質問をサッカージュニア選手や保護者の方から投げかけられることがよくあります。
プロのサッカー選手を間近で見るとなおさらそんな思いを強くするのかもしれません。テレビで見る印象とは違って背が高かったり、細いと思っていたら脚の筋肉が目立ったり、肩幅があってガッチリしていたり。日々のトレーニングによって磨き上げられたカラダに憧れるサッカージュニアも多いことでしょう。
質問にある「大きくなる」は、「身長が高くなること」と「筋肉がついて幅のあるカラダになること」の両方を意味しています。それぞれについて考えてみましょう。
身長については、コラムのVol.7「夏休みに気にかけたいこと」にも書いた通り、骨の成長が関係しています。一般的には小学校中学年~中学校にかけて骨の大幅な成長が見られます。身長の伸びや骨の強さ、骨の本数が大人と同じになるなど、カラダの中が変化するからです。
サッカージュニアは、サッカーをすることによって骨に刺激が伝わり、運動をしていない同学年の児童と比較すると、骨の代謝がさらに盛んになります。この骨の代謝が盛んな時期に、骨の材料となる栄養素、たんぱく質、ビタミンC(骨の土台となるコラーゲンを作る)、カルシウムを意識して摂ることが大切です。密度の高い強い骨がつくられ、自分が伸びる範囲で最高の身長を手にすることができる可能性が高まります。毎日の食事で、肉・魚・卵・大豆製品(たんぱく質)や甘酸っぱい果物(ビタミンC)、乳製品(たんぱく質、カルシウム)を忘れずに、補食でも意識して取り入れていきましょう。
一方、「筋肉がついて幅のあるカラダになること」についてですが、「毎日腹筋や腕立て伏せをしても、筋肉がつきません」「試合で当たり負けしてしまいます」など、切実な悩みも多く聞かれます。ですが、子どもの成長過程には発育のパターンがあります。簡単に言うと、まずは身長が伸び、その伸びが止まった後にいわゆるガッチリとした筋肉がついてきます。つまり、身長が伸びている時期はいくら筋肉の材料であるたんぱく質をたくさん食べても、トレーニングをしても、ガッチリした筋肉はつきません。でも、その時期が過ぎて食事、トレーニング、休息を計画的に実施すれば、プロサッカー選手のような憧れのカラダになっていくのです。
カラダ大きくなる(成長)には個人差があります。身長が伸びない、筋肉がつかないと焦る必要は全くありません。そうは言っても、サッカージュニアはきっと気にしてしまうはずですが、せめて周囲の大人は焦らずに見守ってあげてください。大事なのは、成長とサッカーに必要な栄養素を食事や補食から摂る習慣を身につけ、早めの就寝を意識して、憧れのカラダを手にする準備をすることですから。