COLUMN

REIBOLA TOP > コラム > Vol.24「釣りが大好き」

Vol.24「釣りが大好き」

  • 2024.04.04

    Vol.24「釣りが大好き」

絶康調

釣りを初めたのは小学生のころ。父ちゃんがやっていて、結構連れて行ってもらっていたな。プロになって、近くにバス釣りのスポットがたくさんあったから、1人で行くようになったね。午前中の1部練習で午後にすることないのよ。1年目とかなかなか自分の思うようにいかないし、苦しいし、チームも勝っている中で結果を残さないとっていう状況で、ベンチにも入れない。煮つまっていたときに、ちょっと釣りしようかなって。そこからはまった。はまったというか、結構リフレッシュになる感じがあったんだよね。サッカーのことを完全に忘れられる。天気とか風とか環境の変化について、よく考えている。もちろん釣るためだけに。誰かと一緒に行っても一切サッカーの話はしてなかったな。

釣りを始めると、どうやったら釣れるんだろうとか、周りの人のやり方をのぞき見ていて、サッカーが頭から自然といなくなる。基本はルアー釣りだから、水の中でこんな感じで動かしたら魚も寄ってくるんじゃないかなって、不思議と長時間考え続けられるんだよ。1日中、集中できるよ。ルアー釣りの醍醐味を話すと長くなる。簡潔にまとめるなら、えさ釣りと違ってこっちからバスに寄っていかないとダメ。表層、真ん中、湖底のどのあたりを狙うか、もっと細かく分けるときりが無い。ワーム(疑似餌)のサイズとか、震え方の波動の強弱、リールを巻く速さ。何通りもある中で、そのときその場所での正解をずっと探し続ける作業が楽しくてたまらない。釣った魚を食べることはあまり興味がなくて、釣りに行くことそれ自体が目的かな。釣り上げられたらラッキー。準備の段階から楽しくて、どこで釣ろうか、道具は何を持っていこうかとか。鹿島のときはずっとブラックバスだった。霞ケ浦っていうとんでもなく大きい湖に車ですぐ行けた。当時はバス釣りのメッカで人も多かった。そこでひたすら竿を振っていた。近くの釣り人と「きょう釣れてますか」とか「何を使ってますか」とか話して、しばらくそこで頑張って、釣れなければ次のポイントに行く。ポイントを変えながら動くのも楽しいんだよね。車でブーっと移動してちょっとやってみて、釣れなかったらまたブーって動いて釣れるポイントを探す。魚に近寄ることをずっと考えて、「もうちょい深いとこがいいかな」とか。

ベガルタ仙台に来てからは、ちょいちょいチームメートと行く機会が増えた。ちょっと無理やりにでも連れて行っている。長くやっていると自分がプレーでうまくいかないときってあるじゃん。落ち込んでさ。サッカーが頭から離れないときってあるんだよね。どうしても。なんでオレああいうプレーしちゃったんだろうとか、こうしておけばもっとうまくいってたのになって。分かっていてもなかなか体が動かない時ってあるのよ。それがずっと頭に残ったままプレーしていると、悪いイメージばかりが浮かんじゃって、ミスを引きずってずっとやってる感覚に陥っちゃうような感じがオレはしちゃうのね。だから1回、釣りで頭からサッカーをしっかり外して、オフはオフでリフレッシュして、オフ明けから新鮮な気持ちでサッカーできるほうがオレはいいと思うかな。

オフの過ごし方は人それぞれだから、無理やり引っ張り出すわけじゃないよ。ちゃんと「行きたい」って言った選手を連れて行く。きっかけがないだけだと思うんだよね。行動に移す人がいないと、少し興味を持っただけじゃ行かないままになっちゃう。だから「オレがちゃんと準備するから行こうよ。どこに何時集合ね!」って。キャンプのときの卓球大会もそうだけど、オレは割とみんなで何かをやりたがるんだよね。
そのときは釣れるところが結構多かった。最近は禁止になったところが多い。昔はおおらかだったんだろうな。あと釣り人が増えてスポットが限られてきてるから、釣るのも大変だと聞いてる。宮城に来たらあまりバス釣りのできる場所がないんだよね。だから今は、海じゃないとゆっくり釣れないなと思い、自分の勉強がてら海で船釣りしてる。石尾陸登(ベガルタ仙台DF)は「釣りが結構好き」って言うから連れて行こうかな。「1日釣りできます」とか「釣れなくても全然いけるんです」とか、結構戦える感じをかもし出してるから楽しみ。オレも別に釣れなくても構わないタイプだし。大多数は釣れないとつまらないって感じるだけに、今季の貴重な戦力として期待している。ボウズは嫌でも反省会を楽しめる。サッカーはミスを引きずらないように必死で切り替えるのに、釣りは喜んで引きずる。

釣りをしていると人の性格が見えてくる。案外サッカーに通ずるものがあって面白いよ。アオイ(ベガルタ仙台MF工藤蒼生)はなかなか釣れなかったけど、最後まで諦めないでずっと釣り糸を垂れていた。根気強いんだなーと思ってさ。それって結構アオイのプレースタイルと似てるじゃん。足止めないで走り続けたり、不器用だけどずっと続けたりっていう。オレが何か言ったわけじゃなく、ずっとやってた。大夢(ベガルタ仙台MF鎌田大夢)はキャストがうまい。キャストって竿のしなりを使ってピッって投げるとか、いろいろな投げ方があって、投げられない人は案外投げられないんだよ。でも大夢は教えたら、すぐパッとできるようになってびっくりした。センスあるというか、器用なのも大夢らしいよね。あとは千尋(モンテディオ山形MF加藤千尋)かな。もがいてもがいて、どこかでなんかすごいシュートを1発ズトーンと決めるイメージがずっとあった。釣りに行ったときもずっと船酔いに苦しんで「全然できないです」とか言ってたのに、ちょっと回復してやってみたらあっさり大物を釣り上げた。75センチの真鯛。でかかった。オレずっとやってて釣れてないのに。なんだよ、お前がそれ釣るんかよって。それも含めて釣りは楽しいんだけどね。

  • 遠藤 康Yasushi Endo
  • Yasushi Endo

    1988年4月7日生まれ。
    仙台市出身。
    なかのFC(仙台市)から塩釜FC(宮城県塩釜市)を経て2007年鹿島アントラーズに加入。左足のキック精度が高く、卓越したボールキープ力も光る攻撃的MFで、10年以降は主力として3度のJリーグカップ制覇や、16年のJ1リーグと天皇杯優勝などに貢献した。J1通算304試合出場46得点。
    2022年、15年プレーした鹿島を離れ、生まれ故郷のベガルタ仙台へ完全移籍した。
    U-15、U-16、U-18の各年代で代表経験があり、15〜17年は日本代表候補に選出された。

  • アカウント登録

  • 新規会員登録の際は「プライバシーポリシー」を必ずお読みいただき、ご同意の上本登録へお進みください。

FCティアモ枚方×大阪信愛学院大学
「サッカーを通した人間教育」への挑戦