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Vol.97 U-23日本代表。

  • 2024.04.02

    Vol.97 U-23日本代表。

発源力

©FCMZ

インターナショナルマッチウィークは久しぶりにU-23日本代表の試合を2試合ともフルで観ました。チームメイトの悠(平河)と翔太(藤尾)が選出されていたからです。FC町田ゼルビアでも勢いを見せている若い彼らが日の丸を背負ってどんなプレーをするのか。単純に興味がありました。

二人のことはゼルビアへの加入が決まり、始動前に自主トレに来ていた時からチームメイトによく名前を聞いていました。
悠は山梨学院大学時代にゼルビアの特別指定選手になってJリーグデビューをした選手で、プロキャリアとしては今シーズンが2年目でしたが、チームメイトの多くが「初めてのJ1リーグでも悠は結構戦えると思います」と話していたのが印象に残っています。その頃の僕は彼のことを全く知らなかったので、そんなに仲間から評価される選手ってどんな選手なのかなという興味もありました。そして、みんなが評価していた理由は、一緒にプレーするようになって理解できました。僕は開幕前、左センターバックでプレーすることが多かったため、左サイドMFの悠の動きをみてパスの出し入れをすることも多かったのですが、足も速いし動き出しも良く、確かにいい選手だと感じました。彼に直接パスを通したり、左サイドバックの幸多郎(林)を含めて左サイドでのいい連携から攻略できるシーンも多く、一緒のピッチに立っていてすごく呼吸を合わせやすかった印象もあります。

一方、翔太はセレッソ大阪から加入し、すでにJ1の舞台を経験していたし、水戸ホーリーホックや徳島ヴォルティスなど、いろんなチームを期限付き移籍で渡り歩いてきたこともあって、悠とはまた違った雰囲気を纏った選手だという印象がありました。実際、一緒にプレーしてみると、セレッソ時代のキヨ(清武弘嗣)をはじめ、いろんな素晴らしい選手を間近で見てきた環境に影響を受けたんだろうなと思うようなプレーも多く、伸び代もまだまだあるんじゃないかと思います。どことなくヒョロっとしているような印象を持たれがちの翔太ですが、体はすごく強いし、見た目の金髪から想像する性格とは大きく違って、めちゃめちゃ礼儀正しく、周りとの関係性をしっかり作れるのも彼の良さだと感じています。
そういえば、キャンプの時にU-23日本代表監督で、僕がリスペクトしてやまない大岩剛さんが視察に来ていたことがあったんです。そこで僕が剛さんと話していたら、後から翔太に「なんで、剛さんを知っているんですか?」と言われて衝撃を受けたことがあります。しかも、彼に「剛さんが鹿島のコーチをしていた時代に、10代だった僕は剛さんからセンターバックの全てをゼロから教えてもらった。自分で言うのはおこがましいけど、僕は大岩剛二世だと自負しているくらいや」と伝えたら、めちゃめちゃ驚かれて、改めて自分の年齢を感じました(笑)。聞けば彼らは剛さんが元プロサッカー選手とは知っていても、プレーは観たことがないらしく…。「お前みたいなヒヨッ子は、現役時代の剛さんなら間違いなく小指一本で止めていた。そのくらいすごい選手やったんやぞ」と教えておきました。

話がそれましたが、そんな彼らの出場したU-23日本代表戦はゼルビアで魅せているような彼らの良さが出た部分と、即席的に集められたチームで結果を出さなければいけない代表チーム特有の難しさの両方が出たように感じました。実際、僕も日本代表としての経験がある中で、選ばれたばかりの頃は特にそういう難しさを感じていました。もちろん代表チームは、所属チームでの結果があってこそ選ばれる場所です。毎日一緒にトレーニングをしている所属チームと、2カ月に1度くらいの頻度で集まって、監督も戦術も変わる中で戦う代表チームでは、間違いなく後者でプレーする方が難しいと思います。
ただ、そういう難しさがあってもしっかりプレーできるだろうと見込まれて選ばれるのが代表選手だと考えても、慣れないメンバーだから、普段とは違う戦術だから、は言い訳にならない。そういう状況を乗り越えて結果を求めることで見出せる成長は必ずあります。よく黒田剛監督は練習中に「1本中の1本」という言葉を口にされます。シュートにしても、トラップ1つとっても、1本中の1本を大事にしろ、と。今回のU-23日本代表戦は悪天候の中での試合でしたが、どれだけスリッピーなグラウンドでも、たとえばマリ代表は確実に足を伸ばしてきていました。そんなふうにどんな環境下でも1本を大切に、当たり前にできるのが代表選手で、悠や翔太もおそらくそういうことを感じ取ったんじゃないかと思います。

と同時に日本代表選手は、代表活動を通して肌で感じた世界とか、代表で戦うために必要なプレー基準を、チームに落とし込む責任を担っています。ましてや、ゼルビアには日本代表を経験している選手が少ないだけに、日の丸を背負うことの緊張感、責任感、意識、1つのパススピードやトラップの精度を含めて、彼らが感じ取ったことは、自分のモノにするだけではなく、チームに還元するべくしっかりプレーで示してもらいたいと思っています。それによって、彼ら自身の成長にもより拍車がかかるだろうし、そうなればチームにもよりプラスアルファの力が生まれるからです。

そんな二人が出場したマリ戦の後、「悠と翔太は出ないかも知れないな」と思いながらもかつてのチームメイト、タロウ(荒木遼太郎/FC東京)や染野(唯月/東京ヴェルディ)のプレーを楽しもうとウクライナ代表戦も続けて観ました。
彼らが今シーズン、新天地で活躍していることは聞こえてきていたとはいえ、普段、リーグ戦を戦っている最中はなかなか他のチームの試合を観る機会はないからです。彼らのポテンシャルの高さは知っていたので活躍には驚かなかったですが、勝手な兄貴心で彼らの頑張っている姿をゆっくり観たかったのもありました。結果、二人のことも改めて「やっぱりいい選手やな〜」と思ったし、そのことを日の丸をつけて戦う彼らから感じられて素直に嬉しかったです。

そんな僕はといえば、2週間の中断期間に行われた練習試合で、ケガからの復帰後、初めての90分を戦いました。今のところJ1リーグでは途中出場が続いていますが、しっかりとスタメンで出るための準備を着実に整えています。ここからさらにコンディションを上げながら、出番が来た時に自分らしいパフォーマンスでチームを助けられるように、現状と向き合い続けようと思います。

  • 昌子 源Gen Shoji
  • Gen Shoji

    1992年12月11日生まれ。
    兵庫県出身。
    11年に米子北高校から鹿島アントラーズに加入。14年には自身初のJ1リーグフル出場を実現するなど主軸選手に成長を遂げ、16年のJ1リーグや天皇杯優勝、18年のAFCチャンピオンズリーグ制覇などに貢献した。
    18年12月にトゥールーズFCに完全移籍。すぐさまレギュラーに定着するも2シーズン目はケガに苦しみ長期の戦線離脱に。その状況を踏まえてJリーグへの復帰を決断し、20年から3シーズンはガンバ大阪で、23年は鹿島アントラーズでプレー。24年はFC町田ゼルビアに完全移籍となった。
    14年に日本代表に初選出。2018FIFAワールドカップ ロシア出場。

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