鹿島アントラーズ時代に社長だった井畑滋さんが、2日に亡くなられた。井畑さんは選手と近い社長で、奥様も選手の家族とも接してくださっていた。井畑さんだからいい時代を築けたと思うし、いつも笑顔でにこにこ話してくださる人柄もすてきだった。物理的にも心理的にも距離の近い、鹿島らしい方の下でサッカーができてよかったと今思う。訃報に接し、心からお悔やみ申し上げます。
ベガルタ仙台は11月29日のいわきFC戦に0-1で敗れ、最後の最後で7位に後退し、J1昇格プレーオフ進出を逃した。育成型クラブに転換していく中でも勝利を常に求められるなど、いろいろなプレッシャーがあった中、誰もが経験できるわけじゃない1年は大変だったと思うし、みんなよく頑張っていた。ゆっくり休んでほしい。おつかれさまでした。とはいえ、百年構想リーグを挟んで来季はすぐにやってくる。ここから巻き返していくために必要なことは何だろうか。
いわきFC戦までも停滞気味だった。J1自動昇格の可能性も残し、プレーオフ進出は手中にあるという中で引き分けたり負けたりしてしまったのは、力が足りなかったというのが正直な感想だ。ボールを握ってうまくやっている感じでも、勝負のパスが少なく1点が遠い。竜(MF相良竜之介)の仕掛けが一番可能性を感じたな。もっともっと回数を増やしてほしかった。確かに守備は去年より良くなった。それでも最後の球際のところをもっと詰めていきたい。いわきFC戦の失点シーンも、間に合っていたのにシュートを打たせてしまった。選手はサボっているわけではないし頑張っている。それは確かだ。だけど、どこかでゴリさん(森山佳郎監督)の熱量に慣れちゃったのかなと思う部分はある。環境でも適応し、慣れてしまうのが人間。本来はゴールを狙わなきゃいけないところでパスを選択するなど、セーフティーなプレーが多い。そもそもシュートをもっと打って、そういう局面でもっとわくわくさせてほしいんだよね。ペナルティーエリア近くには多くボールを運んだし、支配率とかの指標は軒並み上がっているようだ。だけど、ペナ内に入ってもゴールの予感に乏しい。印象的なゴールは鳥栖戦の大逆転を呼び込んだ宮崎君(FW宮崎鴻)の2得点。強引に死にものぐるいでゴールを狙ったあのシュート、ああいうプレーをみんな見たいと思う。ドローに終わったブラウブリッツ秋田戦もしかり。リスクを冒してでも得点を狙うプレーこそ応援したくなる。例えばそこでブロックされたりボールを奪われたりしたら、前で得点に絡む選手たちは、それを上回るためのワンツーや、もっといいところでボールをもらう工夫をしていくもの。それが攻撃のバリエーションを増やし、勝利にもつながる。今年だってもちろんみんな頑張っていた。残り数試合の段階まで自動昇格も見えていた。どのチームよりもホームが一丸となって戦ったシーズンだったと思う。だけど、頑張っただけでは結果につながらないのもスポーツだから仕方がないよね。
ベガルタは市民クラブで右往左往しながら近年を戦ってきた。ゴリさんが来てようやくチームカラーができつつある。ハードワークや走ること、きっちりとした守備。じゃあ今年は何を強くするか。そういう1年だった。戦術なのか、個なのか。何が積み上げたかったのか。もっとスーパーな選手じゃないとダメなのか。絶対的なFWを獲得すればいいでしょってみんなは思うかもしれない。だけど仙台が築こうとしているサッカーにフィットするかは分からない。ハードワークしながら得点を重ねる選手がどれぐらいいるのか、いないんじゃないかな。湘南時代にごりごり走って戦うサッカーをつくりあげた京都の曺貴裁監督ですら、圧倒的な得点力を誇るFWラファエル・エリアスを上手に使って優勝争いをしている。FWのグスタボは全然試合に出ていなくて失敗と言われている。けれど、毎回当たり外国人を獲得できるチームなんてないし、監督と合うとは限らない。鹿島だってそう。日本人のレベルをどれだけ上げるのかっていうところにかかっている。相手にとっての要注意人物をどれだけ増やせるのか。ゴールを決めてこそなんぼだ。ヒデ(MF武田英寿)や大夢(MF鎌田大夢)にはもっとミドルシュートを狙ってほしい。逃げるようなプレーじゃなく、鳥栖戦の宮崎君のようなプレーを見たい。
ゴリさんにも強気の采配を期待したいな。相手によってメンバーを替え、相手の強みを消すよりも、今勝てているメンバーで相手のストロングポイントを凌駕してほしい。例え話になってしまうけれど、相手の右サイドがすごく攻撃的だったときに、守備的な左サイドの選手を入れて迎え撃つのではなく、「お前が押し込み続けろ」って左サイドハーフの竜を送り出すようなイメージ。選手だって「俺が勝たせてやる」という心境になるだろうし、選手自身の成長にもつながると思うんだよね。最初からできる選手はそういない。どのチームもその中でみんなやっている。好調な選手がすぐスタメンをつかめるというのは、若手にとってはうれしいことでもある。一方で主力は、勝って替えられることに敏感になるものなんだよね。だから試合に出ているメンバーは勝ち続けたいと思っている。
みんなもっとできるポテンシャルがあるし、来年はW杯がある。出られる可能性だってゼロじゃない。だからこそ、もっとごりごり自分でゴールに行く姿勢や、俺が決めてやるという気迫があるプレーを見たい。シーズンが終われば移籍市場も活発になるだろう。来季のベガルタがどういうメンバーになるのかは分からない。あまりメンバーが変わらないのなら、おのおのが底上げしないと優勝はできない。何かが変わらないといけないし、何かを変えないといけない。そして、ベガルタ仙台というクラブに収まらない、スケールの大きい選手になってほしい。選手の成長とともにクラブも規模拡大していければ最高なんだけどね。
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遠藤 康Yasushi Endo
1988年4月7日生まれ。
仙台市出身。
なかのFC(仙台市)から塩釜FC(宮城県塩釜市)を経て2007年鹿島アントラーズに加入。左足のキック精度が高く、卓越したボールキープ力も光る攻撃的MFで、10年以降は主力として3度のJリーグカップ制覇や、16年のJ1リーグと天皇杯優勝などに貢献した。J1通算304試合出場46得点。
2022年、15年プレーした鹿島を離れ、生まれ故郷のベガルタ仙台へ完全移籍した。
U-15、U-16、U-18の各年代で代表経験があり、15〜17年は日本代表候補に選出された。






