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Vol70「契約更新のリリース」

  • 2026.01.14

    Vol70「契約更新のリリース」

絶康調

大夢(ベガルタ仙台MF鎌田大夢)の契約更新が6日に発表された。この契約更新のリリースなるものの存在が、オレには不思議だった。ベガルタ仙台に加入して最初のオフ。翌年に向けての交渉が終わったときに「リリースはいつ出しますか?」と確認されて驚いた。鹿島アントラーズ時代はなかった文化。複数年契約だったし、そもそも出す必要があるのだろうかと首をかしげた。その時初めてベガルタが全員分のリリースを出していることを知った。来季も戦う前提で交渉している。移籍したいんだったら分かる。翌年もいるのが基本線で、更新していくのが当たり前だと思っている立場としては、なんのために契約更新を発表するのか疑問を抱いた。いまだに答えは出ていない。

気になってちょっと調べてみたら、横浜F・マリノスやサンフレッチェ広島などは契約更新を発表していたものの、大半のJ1クラブは移籍時と契約満了時のリリースにとどまっている。複数年契約でも確かに更新しているとはいえ、出すメリットはどこにあるんだろう。一連の流れでシーズン終了後に一番不思議だったのは、サポーターに「リリースまだですけど来年もいてくれるんですか?」とか「残るんですか?」と聞かれることだった。移籍前提で話されるような感覚になり、実はショックを受けていた。個人的には仙台でキャリアを終えるつもりでいたし、加入時から言っているのにもかかわらずだ。鹿島時代のサポーターは残る前提で話してくれていたもんだから、更新のリリースなるものを考えたことがなかった。ゆえに、クラブからリリースのためのコメントを求められた時も「どういうこと」って謎だったな。

サインをしてからしっかり公表しているのか、実はクラブがじらしてこの状況を楽しんでいるのではないかと、うがった見方をしてしまったこともある。正式に契約を交わした時、という訳でもない。オレ自身一時期は代理人にお願いしたこともあるけれど、基本的に自分で交渉していた。印鑑とかを持って行かなくて、キャンプ中にハンコを押すこともあった。来年どうやって戦うかとか未来の話ばかりしていたな。「出場給もうちょっと上げてくださいよ」とおねだりするくらい。鹿島時代も評価されたら上げてくれるし、タイトル取れなかったらステイとか年数増やしてもらえないとかだったな。活躍してもタイトルとっても「もっとできたよな」「こうやっていればもっと勝ててた」とか思い当たるふしがあって、そこまで強く言えない自分がいた。

移籍の多いクラブだと、サポーターの安心のためにリリースしているのではという仮説はどうだろう。主力を抜かれる心配のあるクラブゆえの更新リリース。でもさ、サポーターも常にその不安と戦っていたら病んじゃうよ。移籍はいつ来るか分からない。契約更新のリリースを待たないといけない状況だと、越年したときに不安が増大していく。実際、年明けの東北人魂のイベントや、クラブチームの初蹴りの時、大夢の去就についてめちゃめちゃ聞かれた。みんな気にしているんだって思った。ある先輩は「大夢がいなかったらこの1年どうしたらいいんだろう」って。だったら、残る前提で選手を応援し、移籍することになったらショックを受けるスタンスがいいような気がする。そのためにはやっぱり強くならないとだよね。ベガルタはいいチームなんだから、どっしり構えていていいんだよ。あとはお金さえ潤沢にあればなって思うくらい。だって、契約更新が発表されたからといって安泰とも限らない。大夢がいい例だ。福島ユナイテッドの契約更新発表後のキャンプ序盤に、急きょベガルタへの移籍が決まった。それは、ベガルタが移籍金を払ってでも必要な選手だったということだし、大夢自身も将来海外でプレーするという夢に向けてのステップとして決断したということ。それぐらいの魅力はあるし、実際にファンもお金を払って見に行く価値のある選手になっている。そういう領域にいっていると思う。

ただ、5年目の大夢が最古参になったのは、本来はあってほしくないこと。24歳でベガルタを一番知っているっていうのはどうよ。大夢はまだ好き勝手やれる立場であってほしいし、クラブは長く貢献してくれる選手を大事に育ててほしい。梁さん(元ベガルタ仙台MF梁勇基)やしんごさん(元ベガルタ仙台MF富田晋伍)は、数字に表れない貢献度が大きかった。引退前はなかなか試合に絡めなくても、表に出てこない部分でチームにいい影響力を持っていた。黙々としっかり準備して練習し、ぴりっとした緊張感を持たせる言動があった。今は林くん(ベガルタ仙台GK林彰洋)やオク(ベガルタ仙台DF奥山政幸)らベテラン勢が、経験や他クラブの文化を持ち込んでくれている状態だ。根本的にはクラブが自前で育ててほしいところ。J1で苦しんだりJ2に降格したり、近年じっくりと育成できていなかったことが今回、大夢が最古参になってしまった遠因だろう。育成に関してはクラブが変わりつつあるので、長い目で今後を見守っていきたい。

現状、梁さんたちのような振る舞いを大夢に求めるのかっていったら違うよね。やってほしい部分もそりゃあるけれど、そこまで大夢に背負わせるのも悪い。今後どう羽ばたいていくにせよ、そのためには点を取ってほしい。大夢に今必要なのは目に見える数字。最古参になってしまうと、チームのことを考えて思い切ったプレーができなくなることも出てくるだろう。そこはあまり責任を考えずに数字を追い求めてほしい。そういう意味でもキャプテン人事は興味深い。
話を戻すとオレは契約更新リリースいらない派だ。選手が残る前提で新シーズンを待っている方がプラス思考でいられていいと思うよ。

  • 遠藤 康Yasushi Endo
  • Yasushi Endo

    1988年4月7日生まれ。
    仙台市出身。
    なかのFC(仙台市)から塩釜FC(宮城県塩釜市)を経て2007年鹿島アントラーズに加入。左足のキック精度が高く、卓越したボールキープ力も光る攻撃的MFで、10年以降は主力として3度のJリーグカップ制覇や、16年のJ1リーグと天皇杯優勝などに貢献した。J1通算304試合出場46得点。
    2022年、15年プレーした鹿島を離れ、生まれ故郷のベガルタ仙台へ完全移籍した。
    U-15、U-16、U-18の各年代で代表経験があり、15〜17年は日本代表候補に選出された。

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