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8月10日に戦ったJ1リーグ第25節・ヴィッセル神戸戦で、FC町田ゼルビアは初めて神戸から勝利を掴むことができました。町田GIONスタジアムでの対戦は初めてでしたが、関西チームとの対戦でしたが12,619人の方に足を運んでいただいて『ホームの利』を感じながら試合を進められたのも、すごく心強かったです。
対神戸戦というだけではなく、『首位』の神戸を倒せたのも、すごく意味のあることだったと受け止めています。昨シーズンは後半戦の失速が最終的な順位に大きく影響を及ぼしましたが、今回は、その後半戦に首位のチームから白星を奪えたこと。また、お互いに、後半戦に入って加速し、連勝を続けていた中で直接対決を征することができたのも自信になりました。
試合の明暗を分けたのは、試合前から黒田剛監督に口酸っぱく言われていた『強度』だったと思っています。
先にも書いた通り、J1リーグでの神戸戦は、過去3回戦って、1分2敗と、一度も勝てていませんでした。昨シーズン、最初の対戦となった国立でのホーム戦(第8節)は1-2で敗れ、アウェイ戦(第20節)はスコアレスドローに終わりました。また今シーズン最初の対戦となったアウェイ戦(第11節)はオウンゴールで失点し、0-1と敗れました。
そのスコアだけを振り返れば「惜しい試合だったな」という印象を持ってもおかしくない点差でしたが、実際にピッチに立って戦った僕自身は正直、点差以上の差を感じていました。素晴らしいポテンシャルを備えた、経験値の高い元日本代表戦選手を数多く揃える神戸なので、当たり前かもしれませんが、単なる『強度』ではなく、『質の高い強度』を示せるチームだと対戦のたびに感じていたからです。相手にとって何が嫌なのか、を常に考えてプレーしながら、ファウルのもらい方、メンタリティ、どことなくレフェリーをも味方につけていくように感じる試合コントロールのうまさは、J1チームでも群を抜いていました。正直、サッカー自体は、昨年のゼルビアがしていたような、前線のターゲットマンにボールを当てて、そこから縦に早く切り崩すというもので、僕たちにしてみれば、ある意味で慣れた戦い方でしたが、いざ試合になるとチームとしても、個々の局面でもそうした王者らしいしたたかさで上回られ、『質の高い強度』にやられ、結果、勝点を掴めずに試合が終わる、ということが続いていました。
それに対し、今回の対戦では、その『強度』で初めて上回れた実感がありました。神戸は『Jリーグ2連覇』の立役者であるサコくん(大迫勇也)が途中出場、ヨッチ(武藤嘉紀)とゴウくん(酒井高徳)はメンバー外だったことを思えば、決して万全な状況ではなかったかもしれません。ですが、彼らが揃わない中でも7戦負けなしで首位の座を捉えていた神戸です。彼らに代わってピッチに立っている選手たちも自信をつけているのは明らかで、首位に立つのに相応しい質を持った選手が多いことも、覚悟していました。
ですが、立ち上がりからその『強度』のところで決して受けに回らずに試合を進め、6分に雄太(中山)が決めたスーパーゴラッソでの先制点や、36分の相馬(勇紀)のスーパーゴールによる追加点に勇気をもらい、終始、自分たちが試合をコントロールできました。後半に入ってからは雨足が強くなったこともあり、かつ2点のリードを奪っていたのもあって、5-4-1でブロックを敷いて守勢に回る時間が増えましたが、それによって相手がロングボール一辺倒になったのも、僕らとしては狙い通りで、ハイボールにめっぽう強い、ハチ(岡村大八)と流帆(菊池)が徹底して跳ね返してくれました。
特に、流帆は、見ての通り、古巣戦に気合いが入りまくっていました(笑)。本人曰く、これまでのキャリアで古巣戦を戦うのは、神戸時代に天皇杯で戦ったレノファ山口戦以来だったそうです。それもあってか試合前の流帆は、いつもと違ってどこか落ち着きがなく…。本人が自覚していたのかはわかりませんが、自分のペースで準備をするというより、ソワソワといろんなところを歩き回っていたこともあり、少なくとも僕とハチはいつもの流帆と違うなと感じ取っていました。と同時に、彼の気合いをいい方に転ばせるためにも「今日はしっかりと流帆をカバーしよう」と話していました。
僕も経験がありますが『古巣戦』は否が応でも、特別な力が入ります。「いつも通り」を心掛けて試合に臨んでも、終わってみれば「いつも通りじゃなかったな」と思うことも少なくありません。それがいい方に転べば理想ですが、そうでないことも当然あります。…ということをわかっているからか、古巣側のチームは立ち上がりは徹底して、元チームメイトを狙ってくることも多いです。その経験からも今回、神戸は立ち上がり、確実に流帆のところから崩そうとすると予想していたので、それは流帆にも伝えていました。
「俺が神戸の選手だったら、最初の10〜15分は絶対にお前を狙う。それはヘディングで競るボールを当てにくるということではなくて、流帆がボールを持った時にわざと強めにアプローチにきたり、局面のところで強く対応してくる。お前の性格を熟知している神戸だけに、尚更やぞ」
それに対して流帆も「俺も、絶対に俺のところに圧力をかけてくると思っています。だから最初はめちゃめちゃシンプルにプレーします」と話していたし、僕も「俺もできるだけカバーするからな」と返していました。これは流帆の性格的に、仮に神戸のロングボールが僕や大八のところに来たとしても、「OK!」と言いながら競りに出てくることが想像できたのもあります。そしてそれは、流帆の良さでもあるからこそ、僕とハチはできるだけ気持ちよく、彼にプレーさせようと決めていました。守備は『個』ではなく、組織で守ってこそ防げる失点がたくさんあります。そう考えても、守備陣としてお互いのマインドまでも理解した上で、役割を徹底できたのも、無失点につながったんじゃないかと思っています。
あとは、雄太! ボランチでのプレーは2試合目でしたが、まぁ、心強かったです。相手GKのゴールキックをほぼ雄太が競ってくれていた分、僕ら3バックは殆ど陣形を崩すことなく試合を進められたし、仮に雄太を越えるボールが入ってきても『センターバックの誰かが出ていく→その穴を本職はセンターバックの雄太が埋める』というリスクヘッジもできていました。そこの守備の連動が神戸相手に見出せたのも今後に向けた収穫でした。ヒロ(前寛之)や北斗くん(下田)、シラ(白崎凌兵)、啓矢(仙頭)らに加え、違うタイプのボランチ像を示してくれたことは、新たに加わったネタ(ラヴィ)を含め、チームのバリエーションを広げることにもつながるんじゃないかと思っています。
そんなふうにたくさんの収穫を得た神戸戦での勝利によって順位が変動し、第25節を終えた時点での首位との勝ち点差は4に縮まりました。6連勝しても首位とは「まだ4差の開きがある」と考えるのか、「いよいよ4差に縮まった」と考えるのか、難しいところですが、言えるのは、何かを成し遂げた6連勝ではないということです。であればこそ、やはり、単に「首位に近づくことができた6連勝」だと受け止めるべきだと思います。ただ、確実に首位の背中が見えてきたのは事実です。そのことを自信に、だけど慢心なく、勝点を積み上げ続けることに気持ちを注いでいこうと思います。
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昌子 源Gen Shoji
1992年12月11日生まれ。
兵庫県出身。
11年に米子北高校から鹿島アントラーズに加入。14年には自身初のJ1リーグフル出場を実現するなど主軸選手に成長を遂げ、16年のJ1リーグや天皇杯優勝、18年のAFCチャンピオンズリーグ制覇などに貢献した。
18年12月にトゥールーズFCに完全移籍。すぐさまレギュラーに定着するも2シーズン目はケガに苦しみ長期の戦線離脱に。その状況を踏まえてJリーグへの復帰を決断し、20年から3シーズンはガンバ大阪で、23年は鹿島アントラーズでプレー。24年はFC町田ゼルビアに完全移籍となった。
14年に日本代表に初選出。2018FIFAワールドカップ ロシア出場。






