2月7日に百年構想リーグが開幕する。Jリーグの秋春制移行の経過措置として開催される経緯もあり、Jリーグ史上一度しか行われない貴重な戦いでもある。ある意味、二度と獲得できないタイトル。意義づけが難しく、ケガを恐れる声も挙がっているのも確かだけど、ここは否定的に捉えずガッツリ戦ってほしい。タイトルを取るというのは、小さいものでも、大きいものでも、どんな種類のものでも、本人たちは自信を手にすることができると思う。うまく立ちゆかなくなったときに戻りやすい場所があるということは案外重要だ。どんなチームでも常にうまくいくとは限らない。そういうときに立ち返ることができるのがタイトルホルダーの強みではないだろうか。獲得タイトルの多さが鹿島アントラーズの強さを支える一因となっているのは間違いないと思う。J2、J3側は賞金も少なく、ACLにつながっているわけでもない。けれど、ここで勝った経験は夏以降の2026~27年シーズンに生きてくるだろうから、勝ちを目指してほしい。
2ステージ制の最後2年、2015、2016年を思い出すと、制度に対する批判の声が多かったと記憶している。人間って変化に抵抗を覚えるものだから仕方がない。ところが、ふたを開けてみたらJリーグは盛り上がったと思う。鹿島で優勝を果たした2016年は、最終決戦までいったらめちゃくちゃ面白かった。トーナメントのヒリヒリした感じがよかったなあ。鹿島は1stステージに優勝したものの、2ndステージはボロボロだった。オレもケガで出場を減らしていた。おかげで、年間の勝ち点は浦和レッズの方がずっと上だった。ホームアンドアウェイ方式で行われたチャンピオンシップのトーナメントで、準決勝は川崎フロンターレを退け、最後に年間王者の浦和に勝った。ホームを0-1で落とし、アウェイで勝たないと優勝できない状態だった。対する浦和は引き分けで良かった。勝ち点差が大きかったため、選手同士でも「変だよね」って話していたのを覚えている。後がないオレたちは、先制されても痛くもかゆくもなかったというか、勝てば優勝、2点取って勝たないといけないのは変わらなかったから迷いなく得点を奪いにいき、結果2-1で勝って優勝した。このレギュレーションじゃなかったら、1ステージ制だったら浦和が圧倒的に勝っていただけに、喜びつつも心の奥底では「いいのかな」という選手が多かったな。サポーターの熱量もすごかったな。野球のクライマックスシリーズを観ているような感じだと思う。
ACL出場権の懸かっているJ1とは違い、J2、J3側はモチベーションをどこに持っていくべきだろうか。それでもオレは、プロである以上勝つために頑張らないといけないと思っている。1人でも観に来てくれたサポーターへ勝利を届けることにフォーカスしたらいい。もちろん、いろいろな考え方、戦い方があるだろう。勝ち負けを度外視した観戦の楽しみもあるかもしれない。分析する面白さもあるはずだ。そういう意味でも半年間限定で行われる、夢のあるリーグなのかもしれない。勝つところ、頑張っているところを観たいからみんな時間とお金を使っていると思っているオレの意見としては、やはり勝ちにこだわる姿勢を期待する。「この期間は若手のために」というのは腑に落ちない。いろいろ試せる期間で、敗北に対する責任は多くないかもしれない。でも、こういう時に勝ちにこだわったチームが夏以降のシーズンで結果を得ることができると思う。キャンプやらプレシーズンでいろいろと試行錯誤しておくべきで、百年構想リーグは公式戦だ。練習やTMでしっかり結果を出して出番をつかみ取るのが正しい道のり。試すとなるといくらでも逃げ道がつくられてしまう。
鹿島のMF荒木遼太郎のように、高卒選手はオレ自身と境遇が似ているから応援しちゃう。今のベガルタ仙台でいうとミント(FW西丸道人)、安野匠、南創太あたりだよね。ただ、お試しで起用されるようでは駄目。与えられるのを待つようでは生き残れない。キャンプから必死にアピールしてチャンスをつかみ取ってほしい。ミントとは1年一緒にやった。負けん気が強くて、一方でとても素直に言われたことを理解して実行できる。シュートもうまい。それでもプロは各年代の王様が集まっている。そこでどれだけ自分を出して戦えるか。コーチや監督に求められることにプラスして、わがままを貫くところも見極めて頑張らないといけない。本人も自分に足りないところを分かってやっているとは思う。もっと得点に絡むところでしっかり使われる選手になってほしいよね。なかなかうまくいっていない時期、ある日練習場を移動するタイミングを見計らって「時代はちょっと違うけど、オレも1年目とか試合に全然出られなかったよ」と話しかけたことがある。二十歳未満でお酒が飲めるわけでもないし、子どもが大人の世界にぶん投げられたような感じで、さらにサッカーだけやればいいってものでもない難しさもある。近くにいいお手本を見つけて、そこに食らいついていけばいいと思っていた。ちょうどモト(セレッソ大阪FW中島元彦)がいたし。
ベガルタを含めて、今回のオフで完全に補強を終えたチームはいないだろう。夏開幕のリーグ戦に向けてどう動くのかも楽しみなところ。そして、本気で勝ちにいったチームしか、課題や最後のピースは見えてこないと思う。そもそも、選手は練習するのが嫌で試合がしたいのさ。せっかくだから空白期に用意されたリーグ戦を、存分に戦ってほしい。
おまけに。実は、自分が写った写真をあまり持っていないこともあって、毎回のように写真探しに悩んでいます。そのため、みなさんが撮った写真を募集して、使わせていただきたいと考えています。contact@reibola.comまでご提供いただけたらありがたいです。撮影者を入れてほしい方は、その旨を明記してください。このコラムをともに作っていってもらえるとうれしいです。ご協力よろしくお願いいたします。
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遠藤 康Yasushi Endo
1988年4月7日生まれ。
仙台市出身。
なかのFC(仙台市)から塩釜FC(宮城県塩釜市)を経て2007年鹿島アントラーズに加入。左足のキック精度が高く、卓越したボールキープ力も光る攻撃的MFで、10年以降は主力として3度のJリーグカップ制覇や、16年のJ1リーグと天皇杯優勝などに貢献した。J1通算304試合出場46得点。
2022年、15年プレーした鹿島を離れ、生まれ故郷のベガルタ仙台へ完全移籍した。
U-15、U-16、U-18の各年代で代表経験があり、15〜17年は日本代表候補に選出された。






