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Vol73「抽象的万歳」

  • 2026.02.26

    Vol73「抽象的万歳」

絶康調

今年のベガルタ仙台は前評判に反していいじゃん。百年構想リーグ開幕3連勝。ルーキーも点を入れたし、普通に仙台の結果をすごいなって思って見ている。新しい選手やフォーメーションで、主力が抜けた穴を感じさせない。まあ、チャレンジしながら勝てていれば最初はみんな褒める。勝っているときは悪いところをあえて見ようとはしないから。ただ、浮き沈みは必ずある。どこかのタイミングで勝てなくなった時に、クラブは慌てず、周りも我慢して後押しし続けられるのか。いつも言っているように、大切なのは苦しい状況に陥った時にどれだけチームを引っ張れるかだ。練習に臨む姿勢、言動、そして結果。さまざまな形で引っ張っていける選手が評価される。今は勝っている。勝っているときにそこまで考えてプレーする必要はないから、特に若手はのびのびやっていてほしい。

大夢(MF鎌田大夢)が飛び抜けた動きをしていて、逆に周りとかみ合わないように見える場面が多かった。ああいうのを見てしまうと、早くJ1や海外に挑戦してほしいと思ってしまう。オレは、良くも悪くもベガルタに残るのが最善手とは思っていない。ベガルタというクラブが悪いんじゃないよ。常に上を目指してやっていて、急成長する選手は、それに見合ったチームの規模感がないと簡単に超えていってしまう。大夢みたいな選手が増えてくれば、クラブごとJ1に上がれるだろうから心配いらなくなるんだけどね。もともと見ている世界があって、大夢は上昇志向が強い。海外や代表で活躍するお兄ちゃんの影響もあると思う。だから、現状に満足しちゃうのはもったいない。ビッグクラブや強豪に行きたいなら行けばいいし、他のチームも知って損することはないだろう。それは裏切りでもなんでもない。そういう経験をした上で再び仙台を選んでくれるのなら喜ぶべきことだと思うしね。岩渕くん(MF岩渕弘人)はJFLのいわきFCからJ1の岡山までカテゴリーを上げ続け、そして今季仙台を選んだ。ヴィッセル神戸に移籍した友太(MF郷家友太)はいま、順風満帆とはいかず戦っている。友太の移籍は長期的に見て正解だと思う。あのまま仙台で終わったら「郷家っていたね」で終わっちゃう。全国のサッカーファンに自分の良さを知ってもらい、爪痕を残すためにもJ1強豪の神戸でチャレンジするのはいいと思う。ずっとうまくいくサッカー人生なんてない。挑戦する気概はあったほうがいい。

栃木SC戦に話を戻すと、岩渕くんめちゃめちゃいいね。相手からしてみれば常に一発で裏を狙っている怖い選手だよ。マサ(DF菅田真啓)からの1本でゴールに迫るとか。もちろん、みんなも狙ってはいるけど、岩渕くんは常に本気で狙っている。サッカーは縦パス1本で得点できたら効率的だし楽でいいじゃん。だからFWとして狙い続けないといけない。マサがボールを持ったときに毎回毎回パスを信じて走れるかだ。岩渕くんが入ってそういう動きをし初めてから、周りの動きも変わったしボールも動き始めた。そこにもっとパスが出るようになると、攻撃の幅も広がる。本気で狙うから、彼が走ったあとのスペースが空く。空けるための動きじゃないから相手も釣られる。そこは能力だし、価値。消える時間が無い。そして、宮崎くん(FW宮崎鴻)もターゲットマンとして優秀で、2人の関係性も良かった。お互い役目を入れ替える機会を増やすと、さらに能力が上がって相手にとって脅威となるだろう。ハーフタイムで下げられた古屋くん(FW古屋歩夢)はそれをどう受け止めるか。ここはぎらぎらと対抗心を燃やしてほしい。他責にすると周りの信頼を失う。矢印をどれだけ自分に向けて奮い立たせられるかが重要だ。その姿勢はチームにも当てはまるね。

鹿島アントラーズは2-0で柏レイソルに勝った。鹿島のクオリティーが高かった。レイソルも悪い試合じゃなかったんだけど、何かかみ合わない感じだったね。ところが、数字を見ると、終盤になっても圧倒的にレイソルがいいのよ。でも試合を見ている人たちは攻守ともに鹿島が上回っていたのを感じたはずだ。鹿島はピンチらしいピンチもなかった。でも数字はレイソルが圧倒的に上だった。俺も数字ばかりで語るのは苦手なんだよね。そういうのだけで捉えてほしくないね。去年のベガルタに限らず、どこのクラブも勝てない時期によく数字を出していた。チャンスクリエイトとかポゼッションとか。実際さ、勝っているときは分析タイプの人じゃない限りは数字で物事を語らないよね。オレもよく「わくわくする」かとか、抽象的に表現することが多い。もちろん、データとしての数字は大切だよ。でも、数字にできない部分でわくわくするかどうかがサッカーの魅力だと常日ごろ思っている。

こいつがボールを持ったら何をするんだろうとか、そう思わせる選手はたくさんいる。宮城からもそういう選手がこれからどんどん生まれてきてほしいと思う。どう生みだすか分かれば苦労しないんだけど。オレが運営しているなかのFCは昔、地元の子たちだけのスポーツ少年団だった。ところが、その小さい地域からオレ含め3人のプロ選手が生まれている。小学校時代、サッカーを教わってないんだよ。指導者の千葉さんが「サッカーやったことない」ってね。「悔いの無いように」とか、「勝ち負けを気にするな」とかしか教わっていない。それでもプロ選手を輩出し、30年も続けたんだからすごい。教えすぎる必要もなくて、抽象的なこと言って本人に考えさせるほうが伸びるんじゃないかなって思うようになった。だから、コーチたちは細かく指導するけれど、特に攻撃に関してオレは、聞かれるまで押しつけないスタンスでいる。そういう気持ちが根底にあるから、解説するときも抽象的な表現が多い。サッカー経験者や玄人には物足りないと感じるかもしれないけど、見る人の大半はサッカー未経験者。そういう人が試合を面白いと感じるのはわくわくする時だと思う。オレ自信も何かが起きるんじゃないかっていうところに魅了されてきたから、そういう目線で話すようにしている。一緒にサッカーを楽しめる松木さん(松木安太郎)の解説とか好きなんだよね。普通にサッカーを楽しめる。28日のホーム開幕戦のテレビ中継で解説をする。感覚を上手に伝えられたらいいな。できれば勝ち試合で。

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  • 遠藤 康Yasushi Endo
  • Yasushi Endo

    1988年4月7日生まれ。
    仙台市出身。
    なかのFC(仙台市)から塩釜FC(宮城県塩釜市)を経て2007年鹿島アントラーズに加入。左足のキック精度が高く、卓越したボールキープ力も光る攻撃的MFで、10年以降は主力として3度のJリーグカップ制覇や、16年のJ1リーグと天皇杯優勝などに貢献した。J1通算304試合出場46得点。
    2022年、15年プレーした鹿島を離れ、生まれ故郷のベガルタ仙台へ完全移籍した。
    U-15、U-16、U-18の各年代で代表経験があり、15〜17年は日本代表候補に選出された。

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