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Vol.103 J1リーグ後半戦がスタート。

  • 2024.07.02

    Vol.103 J1リーグ後半戦がスタート。

発源力

©FCMZ

J1リーグの前半戦を終え、6月26日の第20節・ヴィッセル神戸戦から後半戦の戦いが始まりました。
前半戦最後の試合となった第19節・アビスパ福岡戦はスコアレスドローだったとはいえ、勝ち点1を積み上げることができた僕たちは、目先の目標にしていた前半戦の首位フィニッシュをクリアした上で、後半戦に臨んでいます。前回の発源力ではチームとしての前半戦を振り返ったので、今回は少し僕自身の前半戦を振り返りつつ、後半戦に向けた話をしてみようと思います。

個人的にはすごくいいコンディションでキャンプを過ごしたものの、開幕直前にアクシデントでケガを負ってしまい、やや出遅れてしまった序盤戦でした。ただ、チームがいいスタートを切ってくれていたことにも助けられ、3月半ばに戦列に復帰してからは、スムーズにピッチに戻ることができたと思っています。

正直、復帰したての頃は、多少なりともゲーム感、ゲーム体力への不安はありました。どれだけ練習から準備をしていても、コンディションを高める上で公式戦に勝る場はないからです。実際、たくさんの人が観てくれているスタジアムでプレーする高揚感や緊張感、公式戦特有のスタジアムに漂う空気、テレビ中継、何より相手チームとの駆け引きの中で生まれるバチバチ感は公式戦のピッチでしか感じられないものだと思っています。ですが、結果的には第9節・FC東京戦で初先発して以降、フル出場を続けることで、本来のパフォーマンスをしっかり取り戻すことができたし、その事実は僕にとって前半戦における最大の収穫になりました。

その中で、ある意味、『初心』に戻ってサッカーや守備に向き合えたことも自分にとっては意義深い時間になったと思っています。この初心とは黒田剛監督から個人的に求められていた部分の1つです。シーズンが始まる前から監督には「敢えてサボらない守備をしてほしい」と繰り返し言われていました。
「キャリアのある源は、相手のキックモーションを見て、ここは飛んでこないな、とか、相手の立ち振る舞いでスライドしなくてもいいな、ラインを下げなくても大丈夫だなってことが感覚的にわかるはずだし、『ベテランだからこその守備』ができる選手だと思う。でも、それをわかった上で今年は、感覚的なところはできるだけ最小限にとどめて、プレーで表現することを心がけて欲しい。周りの経験のない選手たちは常に源のプレーを見ているし、それが基準にもなる。源自身はサボっているつもりはないプレーでも、若手選手には『あれでいいんだ』ってことになりかねない。だからこそ、チームに守備の基準を植え付けるために源には、どのシーンでも経験値でプレーせず、敢えてスライドして欲しいし、敢えてラインを上げて欲しい(黒田監督)」
それもあって、ここまでの戦いにおいては、自分がまだ経験値の少なかった若い頃のように、こまめにラインアップやスライドを心掛けてきました。センターバックながら走行距離が10キロを超える試合があったのもその理由だと思います。意外だったのは、そうしたプレーを心掛けることによって、自分自身のコンディションが高まってきたような手応えを得られたことです。『敢えて』のプレーが31歳の自分をフレッシュにしてくれたような感覚もありました。
また、試合を重ねるごとに『視野』のところが研ぎ澄まされていく実感もありました。公式戦のスピード感に目が慣れることによって相手のフェイントや目線の動きがよく見えるようになってきたし、そのことは判断のスピードをより速めてくれているようにも感じます。そして何より、チームとしてリーグで3番目に少ない失点数で折り返せたとことも自信になりました。後半戦もそうして掴んだ個人としての収穫を、しっかりチームの結果と結びつけていけるようにしていきたいと思っています。

その後半戦最初の試合は、アウェイでのヴィッセル神戸戦でした。改めて説明するまでもなく相手は、昨年のJリーグチャンピオンです。個人のクオリティやプレーの幅、アイデアなどを含め、百戦錬磨の経験値を備えた選手も多く、また前半戦のホームでの戦いで敗れたことからも試合前から難しい試合になることは覚悟していましたし、実際にその通りになりました。はっきり言って、90分のほとんどで神戸に主導権を握られました。シュートをわずか3本しか打てなかった事実もそれを物語っています。そうした展開を踏まえても、勝ち点1を拾えて良かったと言うべきかもしれません。

ですが、僕自身はそうは思っていません。試合翌日に先発組を中心に行った選手だけのミーティングでも伝えましたが、こういう試合で勝ち点3を持ってこれるチームにならないと上位に留まり続けることはできないと思うからです。ましてや神戸戦のように、チーム全体が攻めることに臆病になり、自分たちのボールになっても思い切って仕掛けることもせず、個が犠牲を払って囮になるシーンも少なく、どことなく『逃げ』のプレーが多かったという事実はこの先、後半戦を戦っていく上で、絶対にチームとして克服していかなければいけない課題だとも感じています。特にこれから夏場に入っていくことを考えても、です。日本特有の暑い夏場の戦いでは、90分間ずっと守り続けるのは難しくなります。どこかで自分たちの時間を作って選手個々が息をつくとか、体を少し休ませながら頭でリスク管理をして仕切り直す、みたいな時間が必要になってきます。でなければ、試合のどこかでガス欠を起こしてしまい、体が勝手にフリーズしたり、集中が切れる時間が出てきてしまうからです。

もっともこれについては、攻撃と守備を分けて語ることはできません。過去にも書いたように攻撃と守備は表裏一体で、守備は攻撃があってこそ、攻撃は守備があってこそ、です。この日、神戸の猛攻にさらされながらも無失点で終えられたのは、前線のチェイスを含めたチーム全体の守備意識があってこそだし、逆に得点が奪えなかったのは僕らDFラインの組み立ても含めてチーム全体が矢印を前に向けられなかったということだと思います。そのことからも今一度、しっかりチームとして自分たちの強みは何か、どう攻めて、どう守るのかを明確にし、それをピッチ上で共有しながら後半戦を戦っていきたいと思います。

  • 昌子 源Gen Shoji
  • Gen Shoji

    1992年12月11日生まれ。
    兵庫県出身。
    11年に米子北高校から鹿島アントラーズに加入。14年には自身初のJ1リーグフル出場を実現するなど主軸選手に成長を遂げ、16年のJ1リーグや天皇杯優勝、18年のAFCチャンピオンズリーグ制覇などに貢献した。
    18年12月にトゥールーズFCに完全移籍。すぐさまレギュラーに定着するも2シーズン目はケガに苦しみ長期の戦線離脱に。その状況を踏まえてJリーグへの復帰を決断し、20年から3シーズンはガンバ大阪で、23年は鹿島アントラーズでプレー。24年はFC町田ゼルビアに完全移籍となった。
    14年に日本代表に初選出。2018FIFAワールドカップ ロシア出場。

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