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Vol.101 ゼルビア・バーベキュー。

  • 2024.06.04

    Vol.101 ゼルビア・バーベキュー。

発源力

©FCMZ

5月26日のJ1リーグ第16節・浦和レッズ戦の翌日、クラブスタッフ、チームスタッフ総出でバーベキューをしました。普段はなかなか話す機会がないフロントスタッフの皆さんや、食堂スタッフの皆さんを含めて、いろんな立場でFC町田ゼルビアに関わる人たちとの時間は、クラブとしての結束を強める上でとても有意義だったと感じています。すべての方たちとコミュニケーションをとることはできなかったですが、いろんな方からいろんな話を聞いて、改めて自分たちはたくさんの方の思いを背負ってピッチに立っていると再確認できました。

この日にバーベキューをすることは以前から決まっていたため、浦和戦は、絶対に勝ってその日を楽しく過ごそうというのが合言葉でした。また、試合当日は黒田剛監督の誕生日で、試合前のミーティングでは監督から「誕生日プレゼントとして勝ち点3が欲しい」とリクエストされていたので、それに応えたいという思いもチームに宿っていました。
とはいえ、毎回、スタンドのほとんどが真っ赤に染まり、野太い声が地鳴りのように響く浦和レッズのホーム、埼玉スタジアム2002での一戦です。日本でもっとも『アウェイ感』を感じるスタジアムでの試合は間違いなく難しくなると思っていたし、埼スタで初めて試合をする選手も多いゼルビアがその雰囲気にのまれてしまう時間帯もあるだろうと覚悟していました。ですが、結果的には一度は引き分けに追いつかれながらも、後半アディショナルタイムに突き放し、勝利を掴むことができました。

僕なりに勝利を掴めた要因は大きく分けて3つあったと思っています。1つは前半、一方的にボールを持たれる展開になりながらもスコアレスで折り返せたこと。後半はどうにか自分たちの網に引っ掛けてショートカウンターを狙っていかないと点は取れないと考えていた中で、その狙い通りに先制できたこと。そして3つ目は途中出場の選手がチームにエネルギーを吹き込んでくれたことです。

もう少し掘り下げると、後半立ち上がりに先制しながら2分後に追いつかれてしまったことを思えば、以降の時間帯にさらに失点を許すことなく、守備で耐えられたのもポジティブな要素だったと思っています。3つ目の要因につながる部分ですが、失点の瞬間、晃生(谷)やミンギュ(チャン)とは「この展開だと相手も勢いづいて、あと2、3回はビッグチャンスを与えてしまう可能性がある。けど、うちにも絶対に1本はチャンスがくる。それを仕留めるまで何が何でも体を張ろう」と声を掛け合っていました。追いつかれてしまったことでチーム全体が前がかりになりすぎる可能性も想像しながら、だけど1-1になったところで浦和がボールを持ち続けることも想定内だったので、後ろはとにかくしぶとく、粘り強く守備をしてショートカウンターの機会を伺っていこうと気持ちを揃えていました。
結果、PKを奪ったシーンは、デューク(ミッチェル)のプレスバックから始まって、そのボールを拾った禅斗(宇野)が無理に蹴らずに、少し持ち運んで悠(平河)に繋ぎ、悠のワントラップからのスルーパスに反応したサンホ(ナ)がペナルティエリア内で相手のファウルを誘って生まれました。つまり、悠を除いてすべて、途中出場の選手が繋いで作り出してくれたシーンでした。その事実は、この試合を最後の最後で引き寄せる大きな要因になりました。
過去に僕も経験しましたが、控えに回った選手たちが自分の置かれている状況に納得するはずはなく、当然、それぞれに悔しさを持って出番を待っていたと想像します。ですが彼らは、そうした我の部分を押し殺してチームを助けてくれました。特に現役オーストラリア代表のデュークは、今シーズンのリーグ戦で一度も先発出場がない中で、毎回のように途中からチームに息を吹き込み、存在感を示してくれています。そんな彼の姿に僕たち先発を預かる選手も間違いなく奮い立たされています。そのことも、今シーズンのゼルビアの強さの1つであるはずだし、今後もみんなで切磋琢磨しながら、もっともっと強くなっていきたいと思っています。

そうして浦和戦で勝利できたことで、試合後のロッカールームはすごくいい雰囲気だったし、監督の「勝ち点3をありがとう。大アウェイの中、本当にみんなよく戦ってくれた」という言葉に、今シーズンで一番、沸きました! もちろん、冒頭に書いた翌日のバーベキューがいい雰囲気で行われたのも言うまでもありません。
この日はテクニカルスタッフの皆さんが「日頃の感謝を込めて、僕たちが振る舞います」と言って下さったので、僕たち選手は完全に食べる側にまわり、コーチングスタッフが焼いてくれる肉や野菜、監督が焼いてくれるホタテを、美味しくいただきました。ここぞとばかりに「肉、生焼けじゃない?!」「監督のホタテ、焼き方が甘くないか?!」などとツッコミを入れていたのもここで明かしておきます(笑)。また、そんなふうにワイワイ過ごしながらも、会の締めに監督がおっしゃった「皆さんのおかげで我々は今、首位にいます。ここにいる町田ファミリーの全ての思いを背負って、まずは前半戦を首位で折り返すことを目指します」という言葉に、改めて気持ちを1つにしました。そういう意味でもとてもいい時間になりました。

最後に、チームの話からは離れますが、元チームメイトの弦太(三浦/ガンバ大阪)の話を少しだけ書きます。ガンバ時代にはセンターバックとして同じピッチに立つことの多かった弦太が、4月末の鹿島アントラーズ戦で右膝前十字靭帯断裂、右膝内側半月板損傷という大ケガを負い、長期離脱になってしまいました。僕もその瞬間を映像で観ましたが、Jリーガーの中でも3本の指に入ると言っても過言ではない屈強な体と身体能力を誇る鉄人センターバックの弦太が、試合中に担架で運び出された時点で只事じゃない、これは大きなケガかもな、と頭を過りましたが、残念ながらその通りになってしまいました。受傷から3日後に連絡を取って話をした時は、スーパーポジティブな弦太らしく、すでに前を向いていましたが、そんな弦太でさえ長いリハビリ生活では「クラブハウスに行きたくないな」「昨日はいい感じだったのに、今日はあまり患部がいい状態じゃないな」と思う日が出てくるかもしれません。でも弦太にも伝えた通り、ゼルビアのエリキも去年、弦太と同じケガを負いながら、今年は本当に元気にピッチを駆け回っています。本人も「今はもう全く痛くないし、患部のことも気にならない」と言っています。そして、ゼルビアをあげてみんながエリキの復帰を喜んでいます。弦太にも必ず、その日が訪れます。たくさんのサッカー仲間、チームメイト、ファン・サポーターがその日を待ち望んでいるように、僕自身も仲間の一人として、その時を楽しみにしています。

  • 昌子 源Gen Shoji
  • Gen Shoji

    1992年12月11日生まれ。
    兵庫県出身。
    11年に米子北高校から鹿島アントラーズに加入。14年には自身初のJ1リーグフル出場を実現するなど主軸選手に成長を遂げ、16年のJ1リーグや天皇杯優勝、18年のAFCチャンピオンズリーグ制覇などに貢献した。
    18年12月にトゥールーズFCに完全移籍。すぐさまレギュラーに定着するも2シーズン目はケガに苦しみ長期の戦線離脱に。その状況を踏まえてJリーグへの復帰を決断し、20年から3シーズンはガンバ大阪で、23年は鹿島アントラーズでプレー。24年はFC町田ゼルビアに完全移籍となった。
    14年に日本代表に初選出。2018FIFAワールドカップ ロシア出場。

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