前回、フランスのコーチングライセンスの話をさせてもらったのですが、続きは次回に書かせていただくことにして、今回は、先週行われたフランスカップ決勝について書きたいと思います!
結果から言いますと、オナイウ選手のいるトゥールーズに1−5で大敗。。。前半30分までに4失点と、2014年ワールドカップ準決勝のブラジル対ドイツを思い出させるような試合でした。
フランスカップの決勝戦は、フランス代表の試合で使われるスタッド・ドゥ・フランスという日本でいう国立競技場のような場所で行われることと、フランスの大統領も出席するため、いつもとは全く異なる雰囲気の中で行われる試合です。例年と異なった点と言うと、フランスで定年が64歳に引き上げられたことで、国民が猛反発。その結果、大統領が出席するフランスカップはかなりの厳重警備が施されていたほど。例年はマクロン大統領がピッチまで降りてきて全選手に握手するというセレモニーがありますが、今年はなし。
去年同様かなりのナントサポーターがスタジアムに駆けつけ、8万人の観客のうち、6割以上はナントのサポーター。雰囲気も素晴らしく、ホームに近い状況での試合でしたが、セットプレーで2失点。その後も前がかりになったところのスペースを突かれて2失点。ナントは前半早々に失点して、後半追いつくという展開が続いていただけに、最初の2失点までは起こり得る範囲内と考えていましたが、正直30分で4失点というのは、オリンピックリヨンの女子チームの育成で監督をしていた時に、男子のチームと練習試合をした時に経験したくらい。試合中は、自分の仕事に集中、という感じでしたが、非常にほろ苦い決勝戦になってしまいました。
試合後は当然のごとく、サポーターから大ブーイング。「お前らは俺たちを侮辱した!」などなど多くの野次・罵声・侮辱を浴びましたが、これもヨーロッパのプロサッカーの一面。リヨン・パリの女子時代に女子チャンピオンズリーグやフランスカップの決勝で負けてしまった経験はありましたが、サポーターの数は比較にならないことや、決勝で大敗というのは、このような負けも僕自身も初めての経験。敗戦で熱くなっている選手がサポーターに向かって怒鳴り返していたのでそれを止めに行きながら、いつもながら決勝で負けて得るものはゼロ、と言う感覚になります。特に決勝まで来るプロセスで多くのポジティブなことがあったとしても、それが一気に消え去る感覚が決勝での敗戦。そういう面ではしっかり分析し直して、次に繋げると言う作業は優勝した時以上に大事かな、と思います。
トゥールーズにはオナイウ選手もいて、試合後に少しだけ話を出来ました。むしろ試合前は僕なんかに向こうから挨拶に来てくれる好青年!同じ日本人として、オナイウ選手がフランスカップに優勝したと言うのは嬉しいことでもあります!また、トゥールーズは以前所属していたクラブなのでスタッフや数人の選手もよく知っています。連覇を目前にしていただけに残念ではありますが、トゥールーズが優勝に相応しいサッカーをしていたと思います!
リーグ戦も順位的にはとても厳しい状況にはありますが、自力でなんとかなる状況です。来週は川島選手と鈴木選手のいるストラスブールとの対戦もあります。こういう状況での試合なので、楽しめるという感覚はありませんが、しっかり準備をして次の試合に臨みたいと思います。
太田 徹Toru Ota
1981年07月11日生まれ。
東京都出身。
武南高校から獨協大学へ進学。東京リゾート&スポーツ専門学校アスレティックトレーナー学科を経て、リヨン第一大学フィジカルトレーニング学部に進む。
2011-2016オリンピックリヨン女子トップチーム フィジカルコーチ、2016-2018パリ・サンジェルマン女子トップチームアシスタントコーチ、2019-2020トゥールーズFC 昌子源通訳兼トップチームフィジカルコーチ、2021から現在は、FCナントトップチームアシスタントコーチを務めている。
2022フランスカップ優勝や、 2011,2012,2016UEFA女子チャンピオンズリーグ優勝など実績と経験を兼ね揃え、現在も活躍中である。