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Vol.38 福山シティフットボールクラブ 広報/是枝佑紀

  • 2023.05.10

    Vol.38 福山シティフットボールクラブ 広報/是枝佑紀

PASSION 彼女たちのフィールド

2023年3月から福山シティFCの広報としてJリーグを目指すチームを全力でサポートする是枝佑紀さん。現役時代は中学教師と女子サッカー選手を両立し、次の夢はW杯の景色を自分の目で観ること。どちらも、夢を追い続ける自分の姿を見せることで子どもたちにも夢を持ってもらいたいという思いがあります。是枝さんの夢を追い続ける原動力についておうかがいしました。

―現在の活動内容について教えてください。

是枝 福山シティFCの広報業務と、ファンクラブ会員さんへのコンテンツづくり、会員さんへの発信をメインにしています。
平日は選手の練習風景など、ファンクラブ会員さん向けの動画や写真を撮りに行っています。選手にコメントをもらったりという素材が必要な時は朝の練習に行って、午後からは素材の整理だったり、ホームページ、SNSのプレスリリース、各種メディアへのチーム情報の告知などをおこないます。

―福山シティFCに携わるようになった経緯をおしえてください。

是枝 2年前まで女子チームディオッサ出雲FCで現役選手だったのですが、女子サッカーのメディア露出の少なさが気になって、引退した後にディオッサの広報をしていました。
やっていくうちにメディアやファンの規模をまのあたりにして、男子チームにいってみたいと思うようになりました。今の福山シティFCに声をかけてもらって、ステップアップしたいという気持ちでこのチームに移りました。
最終的には女子に戻って女子サッカーを活気づけたいと思っていたのですが、男子サッカーについて知る過程で、日本のサッカー界全体を盛り上げたいという気持ちになりました。

―福山シティFCはどんなチームですか? チームにたずさわってみていかがですか?

是枝 地方リーグでとても勢いのあるチームです。Jリーグで戦える規模のクラブで、選手層が厚いので、男子サッカー界でも注目されています。
昨年、昇格はあと一歩のところで叶わなかったんですけど、今年は監督も選手もがらっと代わって、また去年とは違う強さで戦えるチームになっています。今年こそは昇格したいですね。
今、チームにたずさわっていて、女子サッカーとはボールのさばき方が違うなとか、女子と男子のプレースタイルの違いが新鮮で楽しいです。これから試合に帯同することも増えるので、私の目線で感じたことを伝えていけたらいいなと思っています。

―選手から伝える側への転身は珍しいのでは?

是枝 ディオッサ出雲FCに入団して5年間、なでしこリーグ昇格を目指していました。もう1年だけ頑張ろうと思ったものの叶わず、引退を決めました。
選手としてはまだ出来るという気持ちはあったんですけど、プレーの上達というか、なんとなくここが限界かなと感じたときに、同時に自分には他にもやることがもっとあるなと感じ始めていました。それが発信していくことだったんです。
女子リーグって広報を専任で置いてるところはほとんどなくて、私が道をつくっていきたいと思いました。その時は、専任の広報として雇われていたわけではなく、仕事をしながらチームの広報を掛け持ちでやるという感じでした。

―現役選手の頃も中学校の先生をされていたとお聞きしました。その頃のお話をきかせてください。

是枝 中学校の教師で、保健体育や特別支援クラスを受け持っていました。
学校現場の方々がとても理解があって「現役でプレーをすることで子どもたちに夢を与えて欲しい」と言ってもらえたことがありがたかったですね。
島根県の子どもたちと接していて感じたのは、本物をみて刺激を受ける機会が少ないなということ。
私が神戸に住んでる時にはJリーグやサーカス、宝塚歌劇、よしもとの舞台など、いろんなものに直接触れられる機会が身近にありました。連れて行ってもらったことで感性を育ててもらったと思っています。島根や過疎地域に住んでみると、それが難しい部分もあります。そういった子どもたちの感性を育てる機会を作りたいという気持ちもありました。
私の小さいときの夢が、ちょっと抽象的ですけど「キラキラした大人になりたい」だったんです。子どもたちが一番身近に関わる大人が先生なんで、その先生が現役サッカー選手として頑張る姿が子どもたちの刺激になればと思いました。

―教師も辞めて新天地ということですが、大きな決断だったのでは?

是枝 そうですね。今の決断に全く後悔はなく「キラキラした大人になりたい」っていう気持ちと、子どもたちに夢を与えたいという思いがあるので、その軸はずっとブレずに「次は何をやっていこうか」という感じです。
今回のW杯でも「三苫の1mm」とか色々話題になったと思うんですけど、そういうシーンを今度は私が発信できたらいいなと思っています。
子どもたちにとってあきらめなかったら何でもできる、というメッセージをプレーヤーとしてではなく、今度は広報という仕事で伝えていきたいと思っています。

―ご自身の子どもの頃をきかせてください。サッカーをはじめたきっかけは?

是枝 父親が地域のサッカーチームのコーチをしていたので、2つ年下の弟は2歳からサッカーを始めたりとサッカーは身近にあったんですが、母親からは女子のやるスポーツじゃないと言われていました。
最初はピアノや水泳をやってたんですけど、ヴィッセル神戸FCが近くにあったり、弟が楽しそうにサッカーをやってる姿をみて、だんだんサッカーやりたいなと思いはじめました。祖父に内緒でサッカーボールを買ってもらって、毎日家の前でリフティングの練習していたんです。
1年後にリフティングが100回出来るようになった頃、父親がスパイク渡してくれて「頑張れよ」って。それが始まりです。小学校4年生でした。そこからはサッカーが大好きで続けてきた感じです。

―それからプロをめざし、教師をめざし、目標を持って夢を叶えていったんですね。

是枝 そんなにずっと順調というわけではなかったんですよ。失敗の方が多い人生だと思います。高校1、2年生の時に気持ちの部分でしんどくなって、一度サッカーを離れた時期もありましたし。
そのときは母が察してくれて、元のクラブチームへの復帰は難しくても、どこかでサッカーもう一度やってみたら?とすすめてくれて、その時通っていた高校の男子サッカー部でサッカーを再開したんです。
女子はひとりだったんですけど、やっているうちに週末だけ女子チームの試合に出ないかと声がかかるようになり、兵庫県の選抜チームにも選ばれました。その後、吉備国際大学の関係者の方とお会いして、ちょうど入学の年になでしこリーグに昇格したFC吉備国際大学Charmeに入団することになりました。
最初は練習のピッチにも入れないくらいだったんですけど、努力しているうちに入れるようになって、次は練習試合に出場できるようになり、その次はトップチームに帯同出来るようになったりと、暗い道に少しずつ光が差してきた感じで、たくさんの挫折と成長を味わいました。

―選手をやりながら、教員免許を取るのは時間的にも体力的にも大変だったのでは?

是枝 大変だったとは感じませんでした。どちらかと言えば大学に行かせてもらったことを両親に感謝していました。選手もやりながら、なりたかった教師も目指せて充実していました。

―今後の展望について聞かせてください。

是枝 広報をやっていていくうちに「サッカー界のトップの世界を観る」という目標ができ、そのとき思い描いた景色がW杯だったんです。試合に帯同して選手と同じ景色を観ようと思いました。
4年後、カナダ・アメリカ・メキシコでW杯があります。そこから逆算した時に、今何をしたらそれに近づくかを考えました。
「まずは男子サッカーの世界に行くことが条件だな」と思ったその次の日に、福山シティFCさんとご縁があり、これはチャンスだなと。福山シティFCもJリーグまであと1歩2歩というところなので、ここで経験を積んで一緒に成長できたらいいなと思いました。
昨年までのチームは選手から広報になったので、内側からの発信で共感を得られていたんですけど、今は客観的で整った発信が必要になってくるので、その視点を持って発信していかないといけないので、文章や写真など勉強中です。
かといって、AIが作ったような文章では感動も共感もないので、客観的な視点を持ちながら、感動や共感を与えられるような自分らしい発信を模索中していきたいです。

―W杯に帯同したいというのは急に降りてきた夢なんですか?

是枝 そうなんです。わたし感覚的なんです。笑
W杯を観ていて、直接この景色を見て発信したいと思ったんです。自分がその景色をみることで、子どもたちに夢を与えたいと思いました。伝えるには自分が体験することが一番大切だと思うので。
子どもたちには限界を決めずに、すぐに諦めず、夢を持ってもらいたいと思っています。

―この度は貴重なお話、ありがとうございました。

<プロフィール>
是枝 佑紀(これえだ ゆき)

1994年生まれ、兵庫県神戸市出身
福山シティフットボールクラブで広報をつとめる。
小学4年生からサッカーを始め、神戸FCレディースや兵庫県の選抜チームでもプレー経験を経て、FC吉備国際大学Charme(なでしこリーグ)に所属。その後、中学教師として働きながらディオッサ出雲FCで教師とサッカー選手を引退するまで両立。今の夢はW杯に帯同し、選手と同じ景色を見ること。

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